7話 ゴブリンジェネラル討伐
どうやら、俺たちは相当疲れていたらしい。
夕飯も食べずに寝ていたようだ。
そのためか、まだ早朝の鐘が鳴る前にミュウちゃんが慌てて起こしに来てくれた。
俺と愛莉はミュウちゃんが持ってきてくれた水とタオルで体を洗い、1日振りにステータスを確認した。
名前:柳沢統弥 Lv5
種族:人族 性別:男 年齢:18歳
職業:無し
HP:80 MP:50 体力:200 筋力:55 俊敏:45
運:10
スキル:【成長補正】【駆術】【体術】【努力】【言語理解】
称号:【異世界人】【冒険者】
名前:柳沢愛莉 Lv3
種族:人族 性別:女 年齢:16歳
職業:無し
HP:65 MP:70 体力:130 筋力:30 俊敏:20
運:10
スキル:【成長補正】【適応】【並列思考】【魔力操作】【言語理解】
称号:【異世界人】【冒険者】
「……なんかもう4つもレベル上がってるだけど」
「私も3に上がってますし。多分【成長補正】の恩恵だと思います」
なるほど、えっと──
【成長補正】経験値を多く獲得できる。レベルアップ時に各種ステータスに補正が掛かる。……熟練度40。
なるほど、確かにこれのお陰みたいだ。
「……ん? そう言えば冒険者って称号なんだな。職業は未だに無しになってる」
「あれ、ホントですね。今日ドゥーエンさんたちに聞いてみましょうか」
その後、俺たちは1階の食堂で朝食を摂り、ギルドへと向かった。
♡
ギルドにて。
まだドゥーエンさんたちは来ておらず(よくよく考えたらまだ鐘が鳴ってなかった)、俺は昨日同様にニィゼルさんと会話をしていた。
「あの、ニィゼルさん、一つお訊ねしたいことがあるんですが」
「個人情報以外ならお答えできます」
誰も個人情報は聞かないよ……
「えっと、冒険者って職業じゃないんですか?」
そう訊ねると、ニィゼルさんは「ふふっ」と微笑む。
「そうですね、厳密に言えば違います。もともと冒険者とはある村の自衛団で、それが月日を重ねて今のようになったんです」
説明が雑すぎる……、まぁいっか。
それから暫く話していると、ドゥーエンさんたちがギルドにやって来た。
「よう、今日も早いなトーヤ、アイリ」
「いえ、今日も早く起きただけですから」
「まだクエストやるには早いな……。今日も特訓するか?」
「はい、お願いします」
と言うわけで、今日も俺たちは特訓することになった。
最初にやることは勿論素振り。正確に刃で切れるようになるために。
素振りを終えると、昨日と同じようにルイスを1週。
走り終わる前に鐘がなり、だんだん街の中が騒がしくなってくる。
走り終わると、再び素振り。ドゥーエンさん曰く、素振りは何回やっても無駄にならないと。
確かに、基礎は何回やっても無駄にならない。それは異世界でも地球でも変わらない。……当たり前か。
数十分程素振りをやり、少しの休憩を挟んでドゥーエンさんとマルエルさんとの打ち合いを始めた。愛莉は昨日と同じように、ルーヒーさんに魔法の手解きを受けている。
「違う、そうじゃない。そのときはこうだ」
そう言いながら、ドゥーエンさんはバスターソードを振るう。
正直、ドゥーエンさんは教えるのが下手だ。素振りはまだともかく、実戦形式になると説明が雑になる。多分ドゥーエンさんは天才肌なのだろう。
逆にマルエルさんは説明も上手く、打ち合っているときは俺に合わしてくれている。
ドゥーエンさんは「相手に合わしてたら成長できないだろ」と言ってくるが。
確かにそうなのだが、流石にドゥーエンさんは手加減してほしい。刀身が2メートル近くあるバスターソードを良い感じに振ってくるのだ。
強すぎる……、正直ドゥーエンさんと打ち合って身に付くのは洞察力と回避だけだ。
それから日が昇りきるまで打ち合いをし、街に戻った。
♡
いつもの料亭で昼食を摂り、俺たちはギルドへ向かった。
昨日、晴れて俺と愛莉はEランクとなったわけだが……まだそれほどすごいクエストを受けれるわけではない。
まぁ、生活に困らないくらい稼げたらいいからな。Aランクとか目指したいわけではない。
と、そうこうしてる間にドゥーエンさんがクエストを決めてカウンターに向かった。
さて、今日はどんなクエストなんだろうか──
「よし、今日は『ゴブリンジェネラル討伐』をやるぞ!」
「はぁぁぁあああっ!?」
つい俺は声を上げた。
「ん? トーヤ、どうかしたか?」
「いや……確かゴブリンジェネラルって相当高ランクのものでしたよね?」
「そうだな、今回のはBランクだ」
「………………はぁ」
もう驚愕を越えて呆れた。
「その、なんでそんな高ランクのクエストを……?」
「そうだな、トーヤはセンスが良いから、早い内にジェネラルみたいな強い敵と戦っておいた方がいいと思ったんだ」
「それでも、流石にBランクは高すぎじゃないですか?」
「まぁ……大丈夫だろ」
なんてことだ……
「よし、それじゃあ行くぞ」
ドゥーエンさんは元気良くそう言うと、スタスタとギルドを出ていく。
「ははっ、まぁ何かあったら僕たちが助けるから、トーヤくんは今できることを全力でやればいいよ」
マルエルさんは苦笑いを浮かべながらそう言う。
「……はい」
俺は頷くことしかできなかった。
♡
場所は昨日と同じ、マティスの森。
ただ、目的地は昨日より深いところ。
流石に奥に行かなければ、ゴブリンジェネラルはいないらしい。
森に入り体感覚で15分程。
ゴブリンジェネラル1体とゴブリン10体、ゴブリンナイト5体の集団を見付けた。
「ちっ、数が多すぎるな。……ルーヒー、魔法で何体か殺ってくれ」
「はいはい。……森だから火は厳禁よね。よしっ」
ルーヒーさんは杖の先をゴブリンの集団に向けて、魔法の詠唱を始めた。
「……荒れ狂う暴風、切り裂け刃──《ウィンドスパイラル》!」
詠唱が終わると、杖の先に緑色の魔法陣が展開され、そこから出てきた複数の白い刃がゴブリンたちに向かって飛翔する。
白い刃はそのまま5体のゴブリンの首を切り落とした。
「ふぅ、流石に中級魔法は結構MP使うわね」
息を吐きながらルーヒーさんがそうぼやく。
「よし、俺が雑魚を仕留めるから、マルエルはゴブリンナイトを、トーヤはジェネラルを殺れ。ルーヒーは周りの警戒と魔法で援護だ。それじゃあ行くぞ!」
ドゥーエンさんの掛け声と共に、俺たちは木の影から飛び出た。
混乱していたゴブリンたちは為す術なく、ドゥーエンさんのバスターソードの餌食となった。
ゴブリンナイトは位が高いためか、すぐに反応した。だが、マルエルさんはナイトたちの隙を縫って、1体1体確実に仕留めていく。
そして俺は──
「おわっ!?」
俺は振り下ろされた斧をギリギリで躱し、距離を取る。
俺はゴブリンジェネラル相手に、苦戦を強いられていた。
くそっ、普通に強すぎる……っ!
俺は足に力を入れ、すぐにジェネラルの懐に入り込む。
『ゴゥガァァァアアアッ!』
が、ジェネラルの声に怯み、身体が鋤くんでしまう。
その隙を突くように、ジェネラルが斧を薙いでくる。
俺は咄嗟に後ろに跳び、それを回避する。だが、少し反応が遅れたか、刃の先が服を切り裂いた。
あ、危なかった……
俺は距離を取り、息を吐いて体勢を整える。
切っ先をジェネラルに向け、ゆっくりと距離を詰める。
全く隙が無い。流石はBランクの魔物……って、やっぱりランク差ありすぎるだろ!
そう思っていると、今度はジェネラルの方から仕掛けてきた。
俺は後ろに走り、ジェネラルから距離を取る。
が、ジェネラルは俺をずっと追ってくる。
それにしつこいと来たっ!
俺は上手く木を使い、ジェネラルの視界から逃れた。
ジェネラルは辺りを見渡し、俺を探している。
「《ウィンドランス》!」
そこへ、ジェネラル目掛けルーヒーさんの魔法が飛んでくる。
『グガァアアアッ!』
飛翔する白い槍を、ジェネラルは斧で切り裂いた。
俺はジェネラルの意識がルーヒーさんの方に向いたのを確認し、背後から奇襲を掛ける。
一気に距離を縮め、俺は剣をまっすぐ振り下ろした。
生々しい感触が剣から伝わってくる。やっぱりこの感じはまだ慣れない。
俺の剣はジェネラルの息の根を絶つことはできず、ジェネラルは振り向き俺を睨む。
そして、斧を横一閃に薙ぐ。
俺はそれを後ろに跳ぶことで回避する。
「だぁぁぁぁあああっ!」
その隙を狙い、ドゥーエンさんがジェネラルの首目掛けバスターソードを振るった。
ズバッと音がなり、ジェネラルの首が吹っ飛んだ。
大量の血が飛び散ったが、誰にも掛かることはなかった。
……俺を除いて。
「あー、すまんなトーヤ」
ドゥーエンさんは笑いながら謝ってくる。
「……まぁ、いいですよ」
その後、ドゥーエンさんたちが次々とジェネラルを見付けては仕留め、目標の5体を討伐し終えた。
……なんで俺に戦わせたんですか。
そんな愚痴を口には出さず、俺たちはルイスに戻った。
……見張りの人が俺を見て叫んだのは、また別のお話だ。
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