15話 対戦
遅れてしまい、誠にすいません!
昼食を食べ終え、一度騎士団の斥候部隊がゴブリンの集団を偵察に行った。
その間、俺たち冒険者組はガインツさんを中心とした指令部の人たちと作戦会議をしていた。
この作戦会議で決まったのは、冒険者組の動き。そしてそれを含めた全体での動きだ。
まず冒険者組の動きなのだが、基本は遊撃としてゴブリンの数を減らす。そして騎士団の本陣の進路を開くことだ。
これが済めば、本陣が集団の核、つまりゴブリンキングとその取り巻きに突撃する。
そのときはドゥーエンさんのパーティがサポートに入るらしい。
俺と愛莉は引き続き遊撃となっている。
と、動きはこのくらいだ。
作戦会議も終わり、準備を整えていると、斥候部隊が戻ってきた。
どうも、ゴブリンたちの動きが予想以上に早く、明日戦闘を予定していたのが今日になりそうだと。
ゴブリンは夜間活動ができないので、夜戦になることはないが、それでも少しキツい。
が、文句を言う暇もない。
俺たちは準備を整え、そして出陣した。
♡
待機場所を出てから体感覚で30分。
前方に見えてきたのは、王都に向かっているゴブリンの集団だ。
馬を操りながら、ガインツさんが響く声で言う。
「敵が見えてきました。手筈通り、冒険者組はお願いします!」
俺たちは頷くと、俺とマルエルさんは馬車から降りて走り始めた。
俺は新しく取得したスキル【加速】を使う。
数十メートルはあった距離は一瞬で縮まり、1メートルもない先にゴブリンがいる。
ゴブリンが俺の接近に気付いたときにはもう遅く、俺は【身体強化】を使った一薙ぎでゴブリンの首を落としていた。
……まず1体。
俺は近くにいたゴブリンも、同じ方法で屠っていく。
その間、マルエルさんはスキルを使用し、遠距離から複数のゴブリンを屠っていた。
倒した数が50を越えると、流石にゴブリンたちの動きが止まり、俺たちへ視線が向けられる。
そして敵と見なすや否や、各々が持っている武器を振り上げ迫ってきた。
俺とマルエルさんはそれを冷静に対処し、1体1体確実に仕留めていく。
そうしている間に追い付いてきた馬車からドゥーエンさんが飛び出してきた。
ドゥーエンさんはバスターソードを振り回し、一度に多くのゴブリンを屠っていく。
そこに騎士団も加わり、あっという間にゴブリンの数は減っていった。
これならすぐにいけるか?
『ゴギャアァァァァァアアアアアッ!』
そう思った瞬間。ゴブリンの集団の中心から聞いたことのない叫び声が響いてきた。
途端、身体の自由が奪われ、その場に立ち竦んでしまう。
それを好機と見たゴブリンたちが、一斉に襲ってきた。
「ぐっ……!」
俺は振り下ろされた棍棒を間一髪で避けると、【身体強化】を使い周りにいたゴブリン5体の首を跳ねた。
が囲まれていて完全に不利となった現状。どうすべきかと悩んでいると、後方から複数の火球が飛んできて、ゴブリンを焼き尽くした。
俺はその一瞬で馬車の近くまで撤退し、体勢を整えながら状況を判断する。
マルエルさんもドゥーエンさんも無事。参戦した騎士団の人たちも無事か。
俺は安堵の息を吐き、ゴブリンたちに視線を向けた。
先程の咆哮から、ゴブリンたちの動きが良くなっている気がする。
もしかしたら、あれは味方を鼓舞するモノなのか? だが俺の動きは止まった。……つまり、敵を怯ませ味方を鼓舞するスキルか。なんて厄介な。
そこまで推測し、俺は顔をしかめる。
確かに、こんなスキルがあるならゴブリンキングがAランク相当なのは頷ける。
ゴブリン単体では、戦闘経験のない大人でも勝てるくらいの強さだが、このスキルがあれば、一気に強さも危険度も増す。
俺は気を引き締めると、再び【加速】と【身体強化】を使い、ゴブリンたちに迫った。
♡
それから戦うこと1時間程。
俺はある疑問を抱いていた。
ゴブリンの数が減っていない。……いや、増えている。
あくまで感覚なのだが、一向にゴブリンの数は減らない。それどころか増えているようにも思える。
どういうことか、俺には全く理解ができない。
そもそも、魔物も生物の一種であり、生まれる過程など多少の誤差はあっても基本は同じなのだ。
なのに、今ゴブリンは増えている。どういうことだ?
いくら考えても結果は出てこない。
俺はその疑問を放棄して、再びゴブリンを狩り始めた。
そして、その疑問は確信へと変わった。
あれからゴブリンを何体倒したか、もう全く分からない。
が、そんなことはどうでもいい。そう思い、次の標的を探していると──
『ガギャアァァァァァアアアアアッ!』
再び響く、ゴブリンキングの咆哮。
俺は咄嗟に身構えたが、一度目のように身体が動かなくなるといったことは起きなかった。
そのことに疑問を抱いていると、突如目の前から複数のゴブリンが発生した。
「──っ!?」
俺は突然のことに驚きながらも、咄嗟に距離を取り、剣を構えた。
俺は【身体強化】を使い、発生したゴブリンたちへ走り──
『ゴギャアァァァァァアアアアアッ!』
三度響く咆哮。
それは一度目と同じモノ。つまりは敵を怯ませ、味方を鼓舞する咆哮。
俺の身体は硬直し、その場に止まった。
ゴブリンたちとの距離は、僅か1メートル足らず。
そこまで理解した瞬間、
ゴブリンたちが武器を振り上げ、襲い掛かってきた。
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