14話 合流とテンプレ
翌朝。
俺と愛莉はまだ暗いなか、用意された朝食を食べギルドへ向かった。
最初は表情の暗かった愛莉も、頭を撫でてやると一気に笑顔になった。
ギルドに着くと、俺はいつものように真っ先にニィゼルさんの元へ向かった。
が、何故かニィゼルさんは今日、カウンターではなく席の方にいた。
そしていつもの職員の制服ではなく、冒険者のように防具を身に付けている。
「おはようございます、ニィゼルさん」
「はい、おはようございます、トーヤくん」
「ニィゼルさん、一つ質問してもいいですか?」
「はい、いいですよ」
「その、どうしてそんな格好をしてるんですか?」
そう尋ねると、ニィゼルはふわりと微笑み、
「私も一緒に行くんですよ」
「……大丈夫なんですか?」
以前愛莉の動きに反応していたから、ある程度の実力はあるんだろうけど……
少し不安になっていると、丁度そこへドゥーエンさんたちがやって来た。
「よぉトーヤ、アイリ、いつも早いな。──っと、今日はニィゼルも参加するのか。心強いな」
「あの、ドゥーエンさん、ニィゼルさんって強いんですか?」
俺は不安をやって来たドゥーエンさんにぶつける。
ドゥーエンさんは少し驚くと、大声で笑い出した。
「あぁ、強いも何も、ニィゼルはタイマンなら俺たち全員に勝ってみせるぞ」
ドゥーエンさんの言葉に、俺は目を見開き硬直する。
タイマン、つまり一対一ならドゥーエンさん、ルーヒーさん、マルエルさんに勝てる……? ルーヒーさんはBランクだけど、ドゥーエンさんとマルエルさんはAランク冒険者だぞ? それをタイマンで勝てるって……
俺はふとニィゼルさんに目を向ける。
俺の視線に気付くと、ニィゼルさんはニコォと笑った。
普通に綺麗と思えるのに、何故か少し怖かった。
♡
それから暫く経ち、ダーティさんと白銀の鎧を纏った男性がやって来た。
「やぁトーヤ、ドゥーエン。ちゃんと鐘の鳴る前に来たな」
「おはようございます、ダーティさん。隣にいる人は?」
俺は鎧の男性に目を向ける。
「あぁ、こちらは今回のクエストの指揮官を勤める、王国騎士団のガインツだ」
「どうも。僕は王国騎士団、部隊長のガインツです。本日は宜しくお願いします」
そう言うと、鎧の男性──ガインツさんはニコリと微笑んだ。
金髪碧眼の爽やかイケメンが微笑むと、絵になるなぁ──って、騎士団の部隊長……っ。
俺は慌てて姿勢を但し、自己紹介をする。
「俺……自分は冒険者をやっている統弥と言います。先程は不躾な態度を……」
「いえいえ、気にしていませんよ。それに、そこまで畏まらなくても大丈夫です。普段通りにしてください」
そして再び微笑むガインツさん。
なるほど、この人は驕らないタイプの人か。友好関係を持ってた方がいいな。
「では、いつも通りに。……今日は宜しくお願いします」
「ははっ、まだ堅苦しいけど?」
俺の言葉使いに、ガインツさんは苦笑を浮かべる。
「……一応、これが素です。初対面の方には礼儀正しくと親から言われましてね」
そう言うと、ガインツさんは目を細める。
がそれも一瞬。すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
それから少しして、早朝の鐘が鳴り、ダーティさんに見送られ、俺、愛莉、ニィゼルさん、ドゥーエンさん、ルーヒーさん、マルエルさん、そしてガインツさんのパーティはルイスの街を後にした。
♡
日が昇り、世界が明るくなった。
俺たちはガインツさんが乗ってきた馬車で、騎士団の待機場所に向かっている。
道中、何度かゴブリンの群れと遭遇したが、マルエルさんと俺が馬車から降りて屠っていった。
馬車がルイスを経ってから感覚で四時間以上。
前方にテントが幾つか見えてきた。
その表面には王国の紋章が描かれている。
多分、あれが騎士団の待機場所なのだろう。
「皆さん、戻りました。この人たちが手伝ってくれる冒険者です」
待機場所に着き、他の騎士団の人たちが出てくると、ガインツさんは俺たちを騎士団の人たちに紹介する。
騎士団の内の少数は顔をしかめ、明らかに嫌そうな顔をする。
なるほど、やっぱり冒険者ってあまりいい顔されないのか。
それから騎士団の人たちと会話を交わし、一旦の昼休憩となった。
俺はポーチに入れていた干し肉を取り出し、ひと噛り。
うーん、塩っ気が強いなぁ。
干し肉の味に顔をしかめながら、俺は黙々と食べていく。
ついでに、愛莉はルーヒーさんと共に、騎士団の女性魔法使いの元へ行っている。どうも、魔法について教授してもらうのだと。
いやぁ、勉強熱心だなぁ。
黙々と干し肉を食べていると、ふと足音が聞こえてきた。
おっ、愛莉が戻ってきたかな?
そう思い、俺は振り向いた。
そこにいたのは愛莉ではなく、騎士団の男だった。
見た目まだ若い。20代手前かな? それに確かこの人、冒険者を嫌ってるタイプの人だよな。あのとき顔をしかめてたし。
「よう、冒険者。こんなところで寂しく飯か?」
と考えていると、騎士団の男が話し掛けてきた。
「まぁ、そんなところです。あと、俺は冒険者って名前じゃありませんよ。俺は統弥って言います。貴方は?」
「チッ……。俺はルグイス・ティーム。よく覚えておけよ、底辺冒険者が」
底辺冒険者、か。典型的な差別タイプでもあるのか。
これは面倒だ。と俺は苦笑する。
「おいテメェ、なに笑ってんだ?」
しかも目敏いとは。ホント面倒だ。
「いえ、なんでもありませんよ」
俺はそう返し、干し肉の最後の一切れを口に放り込み咀嚼した。
「……チッ」
ルグイスは舌打ちをすると、来た道を戻っていった。
「何しに来たんだ、あいつ」
俺はそう呟き、ポーチから水筒を取り出した。
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