12話 緊急クエスト
投稿遅れてすいません!
明日も更新しますので、宜しくお願いします。
いつもの料亭で昼食を摂った俺たちは、まっすぐギルドに向かった。
いつもなら程よく冒険者がいるギルド。だが、今日は違いとても騒々しかった。
いや、確かに最近は俺の噂が広まり、少しは活気があった。だか、今日の騒がしさはそれとは全然違う。
まるで、何かトラブルがあったような。
ドゥーエンさんとマルエルさんはクエストボードではなく、カウンターに向かった。
ふとカウンターの方に目を向けると、ニィゼルさんが俺を手招きしていた。
「ルーヒーさん、俺たち少し席を外しますね」
「ん、分かったわ」
ルーヒーさんの返事を聞き、俺は愛莉の手を引いてニィゼルさんの元へ向かった。
ニィゼルさんに案内されたのは、ギルドの奥にある応接室だった。
ニィゼルさんは、コンコンと扉をノックし「失礼します」と言いながら扉を開けた。
部屋には、一人の厳つい男性が、重々しい雰囲気を纏ってソファーに座っていた。
ギルドの偉い人だろうか。
俺が目の前の男性の正体を推測していると、男性が手を差し出し「腰掛けてくれ」と言った。
俺は頷き、促されるまま手前のソファーに座り、男性と対面する。
「急に呼び出してすまない」
「いえ、大丈夫です。それより、貴方は誰ですか?」
「おっとすまない、自己紹介を忘れていた。俺はここのギルドマスターをしているダーティだ。宜しく、期待の新星」
期待の新星? もしかして俺のことか? なんだそれ、めっちゃ恥ずかしい……
俺は思わずため息を吐いた。
「さて、本題に入るぞ。トーヤ、君は『緊急クエスト』を知っているか?」
「はい、ニィゼルさんに説明してもらったことがあります。……もしかして?」
「あぁ、そうだ。今日、正確には昨日の夜だが、王都のギルドから緊急クエストが届いた。内容だが、ゴブリンの集団の討伐だ」
ゴブリンの集団? それは普通の討伐系じゃないのか?
と疑問に思っていると、ダーティさんが追加で説明する。
「しかも面倒なことに、その集団にはゴブリンのボス──ゴブリンキングがいやがる。それに、ジェネラルも確認された数では15体。この集団が、今王都に向かって進軍しているらしい」
「王都に向かって、ですか」
そんなことがあるのか? 何か目的があって……いや、ゴブリンにそんな知能はない、筈だ。
「えっと、ゴブリンたちの目的は分かっているんですか?」
そう尋ねると、ダーティさんは首を横に振る。
「不明だ。何もかも、な」
「そうですか」
「それで、ここからが期待の新星に頼みたいことなんだが」
ダーティさんは机に体を乗り出し、
「ゴブリン討伐に、王都の騎士団と一緒に行ってくれないか?」
「はい?」
俺は予想以上の頼みに、素っ頓狂な声を上げる。
討伐に行け、は覚悟していたが……まさか王都の騎士団と一緒に、か。
確か、王都の騎士団は王国内の精鋭を集った、国一の部隊だ。戦術、魔法、どれも優れており、過去に騎士団一部隊だけで他国の兵1万を相手に勝ったという話もある。
まさか、その騎士団と一緒に行動することになるとは。
「理由を聞いていいですか?」
「ん、あぁ、これは騎士団からの要望だ。と言っても、トーヤが指名されたわけじゃない」
「えっと、どういうことですか?」
「騎士団から言われたのは、『Bランク以上の実力者を選りすぐり、我が騎士団に同行させよ』ってことだけだな。
どうも、今年12歳になる第7王女の護衛に騎士団の半数を向けていて、人数が足りていないようだ」
なるほど。だからBランク以上の実力者か。……ん? だけど、
「俺ってそれに含まれるんですか? 確かにBランクですけど、まだ実力はそこそこですよ?」
「実力がそこそこだったらまずBランクにはなれねぇよ。……大丈夫だ、お前には実力がある。それはドゥーエンが推すくらいだ」
な、なんと。ドゥーエンさんは俺のことをギルドに推してくれていたのか。
「どうだ? 危険ではあるが、その分報酬はデカい。それに、いざ危うくなっても、他に同行する冒険者や騎士団が助けてくれる」
……条件は普通のクエストより圧倒的に良い。どうするか。
「同行する冒険者に、ドゥーエンさんたちはいますか?」
もしドゥーエンさんたちが一緒に来てくれるなら、一気に安心度は上がる。それに、2ヶ月もいるから組んで戦うことにも慣れているし、戦闘は楽になると思う。
「それは勿論。あいつらがルイスの冒険者筆頭みたいなモンだからな」
それなら安心だ。と俺はホッと息を吐く。
「分かりました。そのクエスト、受けましょう。その代わり、報酬は弾んでくださいよ?」
ここで金を増やしておけば、愛莉との生活が楽になるからな。
「おう、それは任せておけ。それじゃあ話は終わりだ。出発はちと早いが、明日の早朝の鐘と同時にルイスを出ることになっている。任せたぞ」
「はい」
俺は力強く返事をして、愛莉と共に部屋を出た。
♡
統弥と愛莉が出ていった後の応接室にて。
「……ニィゼル、明日はお前も同行しろ。いいな?」
ダーティの言葉に、ニィゼルは静かに頷く。
「勿論ですよ。トーヤくんが心配ですから」
ニィゼルはあっけらかんとそう言った。
ダーティはニィゼルの様子に苦笑を浮かべた。
「それにしても、キング入りのゴブリンの集団か。確かに繁殖期はあったが、どこかおかしいな」
「そうですけど、今考えたところで何も出てきませんよ。それより早く仕事してください」
「へいへい、分かってるよ」
気怠げにそう言い、ダーティは部屋を出た。
「さて、どんな活躍を見せてくれるんでしょう。期待の新星──トーヤくん」
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