9話 特訓
すいません、寝てて投稿遅れました!
戻ると、愛莉は頬を膨らませていた。
またか……
俺は苦笑いを浮かべつつ、声を掛ける。
「愛莉、前にも言ったが、これは必要なことなんだぞ?」
「……まるで不倫を誤魔化す夫みたいです」
不倫て。俺と愛莉は結婚してな──あぁ、そう言えば異世界に来たのって結婚するためだったよな。
「まぁいいですけどっ」
愛莉は拗ねたように、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
はぁ、仕方ないなぁ。
俺は愛莉の頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でる。
「こ、このくらいじゃ許しませんからねっ……えへへ♪」
どうやら、お気に召したようだ。
そんなことをしていると、ドゥーエンさんたちがやって来た。
「よう、トーヤとアイリ。お前ら仲良いな」
ドゥーエンさんは笑みを浮かべながら、からかうようにそう言う。
「はい勿論っ!」
愛莉の即答に、ドゥーエンさんは大声を上げて笑い出す。
ドゥーエンさんたちが来ると、いつも賑やかになるなぁ。
と苦笑しつつ、俺はマルエルさんの元に向かう。
「マルエルさん、おはようございます」
「おはようございます、トーヤくん」
挨拶を交わすと、俺は早速本題に入る。
「マルエルさん、今日から打ち合いをより実戦的にしてください」
「どうして僕に──と、聞くことではないですね」
マルエルさんはドゥーエンさんをチラリと見やり、苦笑を浮かべる。
「はい、そういうことです。それに俺の獲物はロングソード、マルエルさんと同じですから、実戦的の方が早く戦い方を学べると思うんです」
「分かりました。今日からは本気でやらせてもらいますね」
ニコォと微笑むマルエルに、俺は少し恐怖を感じた。
この人が本気出したら、ドゥーエンさんと同じくらい強いんじゃ……まぁ、大丈夫だろう。マルエルさんなら多少手加減してくれる……筈。
俺は今日からの訓練に不安を感じながら、皆と共にギルドを出た。
♡
街の外にでると、俺たちは外壁の周りを走り始めた。
流石に3日目ともなれば、この距離を走ることにも慣れてくる。
走り終わると、休憩を挟まずに素振り。
まぁ、素振りは基本あまり動かないから、この時間が休憩だとも思えなくはない。
数十分程素振りをすると、一度休憩を挟み、打ち合いとなった。
愛莉とルーヒーさんは少し離れたところへ移動し、魔法の特訓をし始める。
「それじゃあ、お願いします」
俺はドゥーエンさんとマルエルさん頭を下げる。
「おう、じゃあまずは俺からだな」
そう言いながら、ドゥーエンさんはバスターソード(木製)を上段に構える。
俺もそれに合わせてロングソード(木製)を下段に構える。
「それじゃあ、始め!」
マルエルさんの合図と共に、俺は加速しドゥーエンさんの背後に移動する。
いつも正面から押されてるなら、移動し続けて相手の隙を作ればいい。
それが、俺がこの2日で学んだことだ。
「ほう、確かにそれだと俺みたいな獲物がデカイやつは大変だよな」
ドゥーエンさんはサッと振り向き、感心するようにそう言う。
やっぱり、ドゥーエンさんはこの程度じゃ隙はできないか。
俺は一度姿勢を低くし、接近しながら這い上がるように剣を振り上げる。
ドゥーエンさんはバスターソードで俺の一撃を防ぎ、力ずくで跳ね返してくる。
俺は大きく後ろに仰け反る。
そこへ、ドゥーエンさんの追撃が襲ってくる。
俺は剣を盾にするように構え、横に薙がれた一撃を耐えた。
だが、足が地面に突いていなかったので、そのまま俺は吹き飛ばされる。
二、三度地面を転がり、回転を利用して立ち上がる。
そしてすぐに切っ先をドゥーエンさんに向け、攻めの姿勢に入った。
結局、今日も一撃入れることができずにドゥーエンさんとの打ち合いが終わった。
「はぁ……っ、やっぱりドゥーエンさんは強い」
俺は息を整えながら呟く。
乱暴だが正確に振るわれる剣に、俺の動きを先読みする思考速度。どれもがベテランと呼ばれるに相応しいモノだ。
数分程休憩をすると、次はマルエルさんとの打ち合いが始まる。
互いに切っ先を向け合い、緊張した雰囲気が場を包む。
本来なら、ドゥーエンさんの合図と同時に仕掛けたかったのだが、マルエルさんはあまりにも隙が無さすぎる。
結局、俺は動くことができずに、ただマルエルさんの動きを警戒するだけになっている。
先に仕掛けたのは、マルエルさんだった。
青白い光がマルエルさんを包むと、瞬間、目の前までマルエルさんが迫ってきていた。
「っ──!?」
俺は驚きながらも動き出す。
振り下ろされる剣をいなし、返しで横一閃に剣を振るう。
が、既にマルエルさんは距離を取っており、俺の剣は虚空を切った。
「いやぁ、よく反応できたね。成長が早くて僕は嬉しいよ」
称賛しながらも、マルエルさんは再び剣を構える。
俺も息を整えると、剣を構える。
今度は俺から仕掛ける。
姿勢を低くし、急加速をしてマルエルさんに接近する。
俺はあえて横を走り抜け、振り返り様に剣を横一閃に振るう。
マルエルさんは半歩前に出て、ギリギリで俺の剣を回避した。
そしてマルエルさんは振り返り、遠心力を上手く使って剣を振るう。
狙いは俺の剣。不意を突かれた俺は、為す術なく剣を後方へ飛ばされる。
マルエルさんは切っ先を俺に向ける。
「さて、これで終わりかな?」
「……いいえ、まだです、よッ!」
俺は不敵な笑みを浮かべる。
マルエルさんは何か察したのか、剣を上段から振り下ろしてくる。
俺はそれを僅かな移動で躱し、マルエルさんの腹目掛け拳を突く。
マルエルさんは反射的に俺の拳を躱すと、後ろに跳び距離を取る。
「まさか、体術でくるなんて予想外だったよ」
本当に驚いた表情でマルエルさんはそう言う。
少し離れたところにいるドゥーエンさんも、目を見開いていた。
「それに、闇雲に振るわれたモノじゃない。あれはよく鍛えられた一撃だった」
すごい、あの一瞬でそこまで見切るとは。洞察眼や観察力はドゥーエンさんよりも上か。
「はぁ、俺の負けです」
「……いいのかい? まだ戦えると思うけど」
「いや、ダメですよ。本来ならこの奇襲で一撃を入れたかったんですけど、もうマルエルさんには見切られてるし、かと言って剣を拾う隙なんて与えてくれないでしょう?」
「トーヤくんも、よく判断ができるようだね」
マルエルさんは構えを解き、こちらへやってくる。
「いや、今日はいい打ち合いだったよ。お疲れ様」
そう言いながら、マルエルさんは右手を差し出してくる。
「お疲れ様です」
俺はそれに応えるように、握手を交わした。
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