表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、スライム娘になります!  作者: 日高 うみどり
第3章 緑の頸木座の神殿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/296

3Aー14話 スライム娘クッキング

 雨が小降りになったので、私達は、ベースキャンプの廃村に戻った。



「ドロドロ女、お前泥だらけじゃねーか。こっち来んなよ」


 雨が降るとだいたいこう。いつも体に泥が混じって汚れてしまう。とはいえ、ちょっとの距離なので、いつも程泥だらけじゃないけど。


「わ、私は泥なんてつけませんよっ!」


 さっきの雨で打ち解けたような雰囲気になったかなと思ったけど、どうやら気のせいだったみたい。

 言い合いをしながらベースキャンプへと向かう。

 でも、イルハスさんと私のいつもの言い争いなのに、なんだかちょっと違う雰囲気がするのはなんでだろう。

 ……まあ、別にいっか。

 



「あー……やっぱ広場も濡れてはるねー」

 

 マキノさんが、キャンプの焚き火痕を眺めながらそう言った。

 昨日まで火を焚いていた場所は、さっきの大雨で濡れてしまっていた。

 ロランさん達はまだ戻ってきていない。

 私達と違い、今日は探索範囲が広いと聞いていたので、流石に時間がかかるのだろう。



「ま、メシ作るだけなら問題ないだろ。今日はあっちで食おうぜ」



 夕飯の準備は、早く帰ってきたほうがするルールになっている。

 昨日はロランさん達だったので、今日は私達がすることになる。


 集会所には、集会のときに炊事するためのものと思われる台所があった。

 ここは室内なので、当然濡れていない。炊事は問題なく出来る。


「じゃあ、メルティちゃん、火付けお願いねー」


「は、はい……」


 日常生活でも魔法の練習。ちょっと緊張する。

 呪文を唱えながら胸の前に火の玉を作り、それに向けて粘着ボールを発射。

 火のついた粘着ボールはかまどの薪の上に落ち、燃え始める。

 無事に火付けが出来たようだ。


「よーし、オッケー!」

 ターシャさんから合格を貰う。


「んー、でもまあ今はええけど、粘着ボール無しで火を撃てへんの?

 そっちの方が便利やと思うけど」


「まあ確かにねー。

 人間の姿で粘着ボールは撃てないもんね」


 うん、確かに二人の言う通り。

 人間の姿で、粘着ボール無しで打てるようになれれば、街中での日常生活でも使えるはずだ。

 

「ま、後で練習してみよーよ!」


「そ、そうですね……」


 魔法は、日々訓練あるのみだ。




「え、イルハスさん、料理できるんですか!?」


 私は驚いた。イルハスさんがナイフを握っている。


「おう。まあな」


 料理はマキノさんも作れる。でも、昨日マキノさんは炊事を担当したばかりなので、連続で頼むのは申し訳ないという事で、イルハスさんが作る事になったそうだ。


「でもイルハスさん、貴族って言ってたのに、意外です……」


「ま、料理しない貴族連中はいっぱいいるぜ。

 でもまあ、ウチは貴族っつっても、騎士の方の家系だからな。

 戦争や魔物討伐で遠征する時はキャンプで炊事したりするからな。

 俺も料理は一通り仕込まれてるんだ」


「へぇぇ……」


「つーかよ、ドロドロ女も魔法女もどっちも料理できねーってどういう事だよ」


「あ、アタシは刃物は専門外で……」


「私もあんまり、料理はしたこと無くって……」


「……ロランたちと組んでるときは、どうしてたんだ?」


「料理はロラン君が上手だったから……

 ミリィも作れるんだけど、ミリィの国のやり方は香辛料をたっぷり使うから、アタシ達の口には合わなくて……」


「マジか……アイツも大変だな……

 じゃあ、やってみるか? 野菜切るくらいなら出来るだろ」


「……へっ?」



 というわけで、急遽私が、包丁を握る事となった。

 ちなみにターシャさんは毎回指を切るとの事だったので不参加だ。


 私は、まな板の前に立ち、目の前のにんじんを眺めている。


「おい、どした」


「あの……そもそもなんですけど、私が料理作っても大丈夫ですか?」


「ああん? どういう事だよ」


 雨の泥汚れはいつも程じゃなかったので、既に食べ物を持ってもためらわれない程度には戻っていた。

 とはいえ、スライム娘の私には、根本的な問題点がある。

 

「いやその、私、こういう手ですし……」

 私は、粘液性の手のひらを見せる。


「私が料理をすると、どうしてもこれが野菜に付いちゃうんですが……大丈夫ですか?」


「いや、お前が触ってる物、ほとんど残ってないだろ、そのドロドロの液体……」


「でも……嫌な人は嫌かなーって……」


 実際、修行中の頃、流石に申し訳ないので、出来ないなりにオパールさんに手伝おうと思った事はあった。

 でも、こういう手で触った食材は嫌がられるかもしれないと思い、声をかけるのを躊躇してしまった。

 確かに触っても綺麗に粘着剤は剝がれるのではあるが、潔癖症な人だと嫌かもしれないと思う。


「……なあ、ドロドロ女。そもそもスライムって、食えるのか?」


「……えっ」


 イルハスさんが突然そんなことを言い出した。

 私が……というよりも、私の中の3匹が一斉にドン引きしてしまった。


「あ、いや、そうじゃない。別にお前を食おうって話じゃない。

 いやホラ、食材になるんなら、料理に使っても大丈夫だろ。

 だったらお前が調理しても大丈夫じゃねーかなと、そう思ったんだが……」


「あ、そ、そうなんですね……」


 とりあえずホッとした。

 でも、スライムが食べられるかどうかなんて分からない。

 まあ結局、スライム娘に聞かれても……と言う話ではあるが。


「マキノ、何かそういう話、聞いたこと無いか?」


「んー……まあ、遠い場所の田舎の方で、珍味として食べられてたって話は聞いた事あるよー。

 でも、あんまり美味しくないらしいよー。

 油と砂の味がするって」

 

「そ、そうか……」


 

「あ、そっか。魔水晶を食べるのみたいなものですしね……」

 

「……ん? メルちー、なんでいきなり魔水晶の話?」


「あ、えっとその、オパールさんが言ってた事なんですけど……

 スライムって特殊な方法で焼くと、白い粉が残るんです。

 その粉って、魔水晶と同じ成分らしいんです。

 だから師匠は『スライムは、魔水晶の粉末が、何らかの方法で生命体になったものだ』って分析していたんです。

 だから多分……食べたらその魔水晶の味がするんだろうなーって」


「へー」

 ターシャさんは、分かったような分からないような顔をしながら聞いている。


「……まあ、話をまとめると、ドロドロ女が料理すっと、魔水晶の砂みたいな味がするかもって事だな」


「え、えっと……そうなる……んですかね……」

 

「ま、それなら洗えば大丈夫だろ。後は体液が料理に混じらないようにすりゃあいい。

 万が一の時はマキノの胃薬もある。

 っつーわけで、とっととやれ」


「あ、はい……」



 まあ、珍味として食べられるくらいだから、人間の胃袋に入っても死んだりはしないだろう。

 不味いと言われる可能性は高いが、とりあえず野菜切りだけなら大丈夫そうだ。


「じゃあ、いきます……」


 私は、小さめの包丁とにんじんを握り、まずは皮むきに挑戦する。


「……あ!」


 包丁が指に触れてしまった。

 ぼとっ、と、私の指がまな板の上に落ちる。


「…………」

 イルハスさん、その光景を見て固まっている。


「す、すみません、やり直します……」

 私は落ちた指を持ち上げ、体にくっつけて再挑戦。


「……あ、ああ……」

 イルハスさんは固まったまま、それだけ言った。




「うぅ……終わりました……けど……」

 皮むきを終えたにんじんは、だいぶ大きさが小さくなってしまった。


「メルちー、スライム娘で良かったね……人間だったら、指1本も残ってなかったよ……」



 結局料理の手伝いは、時間がかかりすぎる……というか、イルハスさん達の心臓が持たないという事で、そのほとんどをイルハスさんが作る事になった。

 ……料理も、日々訓練あるのみだ。




 太陽が沈む頃、料理が完成した。

 

「お、美味そうな匂い」

 そう言いながら、ロランさん達が帰ってきた。

 

 イルハスさんが進捗を聞く。

 どうやらロランさん達も、無事に地下3階までのスラグ除去を終える事が出来たようだ。

 

 イルハスさんの料理は、昨日と同じ野菜スープ。

 設備が整っていないここの炊事場では、そんなに難しい料理は作れないみたい。

 でも、昨日のマキノさんと味付けは変えてある。ベーコンも入っていて、昨日よりちょっと豪華だ。


「おー、イルハス、美味いじゃないか」

 ロランさんがイルハスさんを褒める。


「まーな」

 イルハスさんが自信たっぷりに威張る。



「ま、ドロドロ女も手伝ってくれたおかげだけどな」

 

「えっ……?」

 思わず私は聞き返してしまう。


「なんたって、そこのドロドロ女が、野菜クズを沢山作ってくれたからな。

 おかげでいいブイヨンが出来たぜ」


「くっ……」

 私は目を逸らす。やっぱりそういう意味か。

 悔しい。皮肉に言い返せない。でも確かに美味しい。

 


「……うん、あんまりジャリジャリもしないね」

 ターシャさんが食べながらそう言う。

 確かに、一応洗ったとはいえ、私の体液がベッタベタにくっついた割には、砂っぽくは無い。


「まあな。一応注意はしてたんだが……

 まあそれよりも、なんだかいつもより、とろみがついたっぽいんだよな。

 なんつーか、ジャガイモ煮過ぎた時みたいな……」


「へぇ……そんならつまり、メルティちゃんって、ジャガイモ味なんだ……」

 マキノさんがこっちを見てそう言う。

 

「……え、えっと、マキノさん……?

 ひょっとしてマキノさん、私の事、食材として……見て、いません、よね……?」


「……………………もちろんやないの! も~何言っとるんよ~メルティちゃん!」


「い、今の長い間は、なんだったんですか……」


 ほ、ほんとに大丈夫かな……。


「え、なになに、何の話?」

 ロランさんが訪ねる。


「えっとなー、さっきメルティちゃんが手伝ってなー」


「わ、わ~~~っ! マキノさん、言わないで~~~!!」


 この先を言われたら大変なことになる。

 全力で話を遮らなきゃ。そう思った……。







 【作者補足】


 当作品のスライムは『ケイ素生命体』という事になっています。

 ケイ素は食品中にも、特に野菜やイモ類、豆類、穀物の食物繊維に豊富に含まれているそうです。

 そのため、当作品内では『スライム娘=片栗粉(ジャガイモから作られる食材)に近い』という設定にしました。

 当作内だけのだいぶ飛躍した強引な設定だと思いますので、そのへんご留意くださいますようお願いします。


 (メルティが料理する話を書きたかったはずなのに、どうしてこうなったんだろうな……)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ