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私、スライム娘になります!  作者: 日高 うみどり
第3章 緑の頸木座の神殿

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3Aー12話 燃焼する炎

 私達は、地下3階の鉱夫休憩所に入る。


「これで大体半分ってところやねー」

 マキノさんが地図で状況を確認する。


「じゃあ、少し早いけど、昼飯にすっか」

 イルハスさんの言葉で、私達は昼食を取った。


 

 食後の休憩中に、私はターシャさんから、魔法指南を受けていた。

 議題は、『初級火炎魔法』の威力を上げる事。

 まだ生活魔法レベルの火の玉のサイズを、魔素を練り、実戦で使えるレベルまで大きくすることだ。


「まあ、一般的な方法は、呪文を唱える事ね」


「呪文、ですか?」


 そういえば、ターシャさんは、魔法を使うたびに呪文のようなものを詠唱している。

 敵モンスターの『まほうつかい』だって同じだ。


「どういう呪文なんですか?」


「アタシの場合はまあ、教科書通りだね。魔法使いの師匠に習った呪文を唱えてるよ」


 そう言いながら、ターシャさんはバックから『魔導書』を出して見せてくれた。

 魔術師ギルドで販売されていたりする、魔法について書かれた本だ。ジョブマニュアルより詳しく記載されている。


「ほら、ここ」


 本を開き、『初級火炎魔法』のページを指さす。


「えっと、【火の精霊よ、我に力を】……ですか?」

 

「お、さすがメルちー。読めるねー。

 じゃあメルちーも唱えてみる?」


 ターシャさんの言う通り、私もやってみる。


 まずは、手のひらを胸の前で上に向けて、いつも通り火の球を出す。

 そして、呪文を詠唱する。


「火の精霊よ、我に力を……」


 でも、大きくならない。


「大きくならないですね……」


「ま、やっぱり最初はそんなもんだよ」


 その後、反復して唱えてみる。


「まあ、詠唱呪文って言っても、ホントは何でもいいんだけどね」


「え、そうなんですか?」


「まあ、自分が集中できる言葉を唱えておけばいいらしいよ。

 ほら、敵の『まほうつかい』もブツブツ唱えてるけど、人間の言葉とは違うでしょ?」


「そ、そういえばそうですね……」


「アタシの師匠なんか、すっごく可愛い呪文だったよ。

 確か【ひのせいれいさん、ちからをかして!】って唱えてた」


「な、なんか子供っぽいですね……」


「師匠は本当に子供の頃から魔法を使えてた人だからね。大人になってもそのままの詠唱で使ってたみたい。

 まあ、今はオバさんになってしまったせいで、唱えるのが恥ずかしいって言ってたけど」


「は、はあ……」


「まあともかく、ホントにどんな詠唱でもいいんだよ。

 メルちーも、さっきの詠唱がピンと来ないようだったら、何か別の言葉を唱えてみてもいいし。

 重要なのは言葉そのものじゃなくて、魔素を練る事だからね。

 ま、とにかく練習してみてよ」




 休憩が終わり、再び出発。


「火の精霊よ、我に力を……火の精霊よ、我に力を……」


 イルハスさんの指示で、移動中も動きながら、魔素を練る練習。

 火の玉を出しながら、呪文を唱え、集中する。

 

「ひのせいれいさん、ちからをかして……」


 一応、違う呪文も試してみる。


「う~ん……まだやっぱり大きくならないですね……」


 火の玉が明かりになるので、そんなに移動の邪魔ではない。

 でも、まだまだ全然大きくならない。


 様子を見ていたマキノさんが、ターシャさんに聞く。

「ターシャちゃん、呪文って絶対に詠唱しないといかんの?」


「んー、中には無詠唱で魔法を出す人もいるけどね。

 呪文なしで、魔素を練られる人。

 まあそういう人はホントの天才っぽい人だけだよ」


「ふーん、そうなんやー」



「おい、一旦中止。曲がり角の向こうに敵がいる。かなりの数だ」

 イルハスさんの言葉で、私達は戦闘態勢に入る。


 敵は複数のグループでそこにいた。

 アル・ミラージ1匹、闇コウモリ3匹、まほうつかい2匹。それに加え、初めて見るモンスターが1匹。


「ほ、骨……?」


 私は思わず声を出す。


「チッ、スケルトンか……」


 人間の骸骨が歩いている。右手にはボロボロのつるはし。イルハスさんの言う通り、スケルトンと言うモンスターだった。


「地下3階に、スケルトンがいるの……?」

「出るのは4階からだって聞いていたが、まあ、出るときは出るんだろうな……」


 マキノさんの質問に、イルハスさんが答える。本来なら、明日やる予定のクエストで戦うはずの相手だ。


「な、なんでツルハシを持ってるんですか? まさか……」

 私がそう聞くと……


「……まあ、そういう事だろうな」

 イルハスさんはそうとだけ答える。


 鉱山は、落盤事故や空気不足の事故が付きものだ。

 ここ『第23番旧坑道』だって、現役稼働時代、何度もそういう事故はあったらしい。

 だから、ここにいる人型のアンデットは……そういう事なのだろう。

 

「イル君、どないする? まだこっちには気づいてへんみたいやけど……」

 

「……このまま、同士討ちを待つぞ」

 

 イルハスさんの指示に従い、私達は静かに後退する。

 鉱山の曲がり角まで戻り、モンスター達の戦闘が終わるのを待つ。


 戦闘音に混じり、何か言葉のようなものが聞こえる。

 その直後、戦闘場所が少し明るくなる。

 まほうつかいの『初級火炎魔法』の明るさだった。


「まほうつかいが、呪文を唱えている……」

 私は、魔物達に気付かれない大きさでつぶやく。


「そ。あれが魔法使いの呪文。何て言ってるのか、アタシにはわかんないけど」

 ターシャさんがそう言う。


 その後も何度か、魔法使いの呪文が聞こえてくる。

 私は、その呪文に聞き耳を立てる。

 

「……あれ? なんて言ってるのか、分かる気がします……」


「え、ホント? なんで?」


「わ、分かりません……あ、そっか、私のジョブ特性だ……」

 

 確か私の『スライム娘』には、【魔物言語取得】というジョブ特性がある。ジョブマニュアルを読む以外、今まで使う機会が無かったけど。

 それで、まほうつかいが何を言っているのか分かるのか……。


「そっか、なるほど……なんて言ってるの?」


「え、ええとええと……」


 私はさらに聞き耳を立て、詳しく聞いてみる。


「さんそ、ねつをうみだせ……でしょうか」


「……え、どゆこと?」


「わ、わかりません……。

 でも、私達の言葉に直すと、そうなるみたいです……」


「へ、へ~ぇ……」


 訳してみたけど、あんまり意味は分からなかった。

 でも、さんそ……どこかで聞いたような言葉だ。どこだったっけ……。



「……そろそろ終わるみたいだ」

 イルハスさんがそう話す。


 私達は、魔物の群れの様子を見る。

 すると、1匹だけ生き残っている魔物がいる。

 よく見ると、それは意外にも『闇コウモリ』だった。


 戦闘に勝った闇コウモリは、こちらの気配に気づく。

 しかし勝ち目が無いと察したコウモリは、よろよろ飛びながら去っていった。

 私達は無理に追撃する事はせず、そのまま闇コウモリを見送った。



「スケルトン、負けちゃったんだー」

 ターシャさんは、あの中ではスケルトンが勝ち残ると思っていたらしい。

 私もそうだった。あの中ではスケルトンが一番強そうに見えた。


「スケルトンみたいなアンデットは、火に弱いからな」


「あーなるほろ。じゃあまほうつかいが天敵だったんだー」


「実際、スケルトンはあっさり魔法で倒されてたな。

 だけど、まほうつかいはスケルトン退治で魔素(MP)を使い切ったみたいだ」


「そっか。まあ、魔法の使えない魔法使いなんて役立たずだしね。アタシが言うのも何だけど」


「加えて、まほうつかいはアル・ミラージの睡眠攻撃で眠らされた。後はウサギが殺るだけだ。

 だけど、ウサギもコウモリにやられていた。数じゃあ敵わなかったんだろうな」



「イルハスさん、分かるんですか?」

 私はイルハスさんに聞く。暗くて私には見えなかった。


「ん? あ、ああ。まあ俺はこういう目だからな」

 イルハスさんは、自分の金色の目を指さした。


「生まれつき、『暗視』の能力がある。そういう家系なんだ。」


「そうなんですね……」


 珍しい瞳の色だと思ってたけど、そうなんだ……。




「さて、俺らが倒していない魔物だから経験値は貰えないが……

 問題は、このスケルトンだな」


 イルハスさんは、バラバラになって動かなくなったスケルトンを見ている。


「この人、死ぬ前は、人間だったんですよね……」


「……そうだな」


 鉱山で死んで、成仏できずに、スケルトンという魔物になってしまった鉱山夫……。


「イサクがいたら、魔法で浄化させてやれるんだけどな……」

 

 イルハスさんはそう言いながら、マキノさんを見る。

 マキノさんは自分のマジックパックから、瓶に入った液体を出す。

 『聖水』だった。教会で神聖魔法で清めてもらった水だ。

 その聖水を、スケルトンに振りかける。


 スケルトンが纏っていた嫌な気配は、その聖水のおかげで消えたような気がした。


「これで、成仏してやー」

 

 マキノさんがお祈りする。

 私達も、マキノさんと同様にお祈りした……。



 

 その後、私達は探索を続ける。

 私は引き続き、魔法の練習だ。



「さんそ、う~ん、『さんそ』かぁ……」


 私は、さっきのまほうつかいの呪文の事を思い出していた。


「メルちー、どったの?」


「あ、いやその、『さんそ』って、前にどこかで聞いたような気がするんですよね。

 どこだったかなーって思って……」


「そうなの? どこで?」


「う~ん……いや、聞いたんじゃないのかな……何かで読んだような……あ」


 そうだ、思い出した。

 オパールさんから貰った本だ。


 オパールさんからは、何冊か本を貰った。

 その中に、とても難しそうな本があった。

 その中に書いてあった気がする。『酸素』という言葉が。


「なんか思い出したの?」


「あ、はい。オパールさんから貰った本に……」


「オパールさんって、確かメルちーにいろいろ教えてくれた人だよね」


 そうだった。

 オパールさんから貰った、難しそうな本。科学の本だっけ。

 その中に確か書いてあった。難しくてほとんど分からなかったけど。


 確かその中に……

 物を燃やすとき『酸素』が使われて『二酸化炭素』になる……とか、ざっくり言うとそんな感じの事が書いてあった気がする。


「酸素を燃やして、熱を生み出す……」


 う~ん……なんとなく、しっくりくるような来ないような……


「よくわかんないけど、『まほうつかい』もそうやってたんでしょ?

 じゃあ、メルちーもマネしてみたら?」


「あ、そうですね……同じモンスターだし、私にはそっちの方がしっくり来るかも……」



 手のひらの火の玉に意識を集中する。

 そして呪文を唱える。


「酸素、熱を生み出せ……」


 すると、少し火が揺らぐ。


「お!いい感じじゃん!!」


 ターシャさんがそう言ってくれた。どうやら、私にはこっちの方があっているらしい。


 その後もその呪文で、魔素を練る練習を続ける。

 僅かずつではあるが、火の玉が大きくなっていった。


「いいじゃんいいじゃん! もうすぐ実践レベルだよ! やったねメルちー!」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 ターシャさんの言葉に、私は照れてしまう。


 

 

 う~ん、でも、酸素とかって、オパールさんの世界の概念だよね。

 まあ、この世界にも酸素というものがあるのはなんとなく理解できるけど。

 でも、魔物の『まほうつかい』も、それを知ってたって事なのかな。

 魔物がどうして『科学の知識』とかを知ってたんだろう。なんか不思議。


 う~ん、オパールさんから貰った難しい本、私の魔法に役立つんなら、もっとしっかり読まないとダメかなあ……。

 すっごく難しくて分かんなかったんだけど……。






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