村人さん、変な幼女との出会う
ヒロイン、でいいのかな?
……良いか。
これヒロインで、よろしくお願いします。
妹二人とゲーム内で遊んだ次の日。
何時もの様に仕事をしていたら、ゴーレムが現れた。
そして、その上には仁王立ちしている幼女がいた。
ちなみに、このゴーレムは職業サモナーの召喚モブである。
サモナーは最初に一体召喚モブを選び、レベルを上げて行くごとに別の召喚モブを呼べるようになる。
ただ、召喚モブは出し続けるとMPが常に消費されるのでほとんどの人がサモナーを選ばない。
簡単に言うと、地雷職である。
まあ、俺よりも何十倍もましだけど。
「お主!ちと聞きたいことがあるのじゃ!」
話しかけられてしまった。
幼女は金髪ツインテールと赤眼で、青い服と白いフワッとしたスカートと黒いマントを着ている、とても可愛らしい容姿の幼女だった。
しかも俺にとって運が悪いことに、丁度リセットの時間だったので今からどんな質問をされるのか内心ビビリつつも何時もの定型文を言う。
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。私に何かご用でしょうか?」
周囲のプレイヤーやNPCから尊敬の眼差しを向けられてしまった。
「ゴーレムじゃ!ゴーレムのいる場所を教えてほしいのじゃ!」
この幼女、何がしたいのだろうか?
ゴーレムの居場所って言われても……あ~マッドとストーンなら近くに生息してるか?
「そうですね、この近くでしたら【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムという泥のゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこでの中ボスにストーンゴーレムという通常のゴーレムよりも硬度が増したゴーレムがいると聞いたことがありますね。参考になりましたか?」
「おぉ!!良い情報を貰ったのじゃ!感謝するのじゃ!では行くのだゴーちゃん!!」
《ゴー!》
「貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
ゴーレムがノシノシと去っていくのを眺め、あることに気が付いた。
あの幼女、スカートだけど大丈夫か?
◇◇◇
幼女とゴーレムに近所のゴーレム種の生息場所を教えてから一時間後。
またゴーレムと仁王立ち幼女が現れた。
しかも、今回はストーンゴーレムを引き連れている。
どうやら、契約してきたらしい。
職業テイマーなら、敵モブを契約モブとし味方にすることができる。
ただここでこの幼女に謎が発生する。
この幼女はテイマーではなくサモナーの筈である。
ゴーレムは召喚モブとしてでしか出てこないはずなので、契約モブではない。
この幼女、職業を二つ持っていることになる。
あと、テイマーは契約したモブに経験値が分配されてしまうので、レベルアップがだいぶ遅くなってしまう。
まあ、何が言いたいかというと不遇職である。
「まだここにおったか!感謝するのじゃ!お主のおかげで新たなゴーレムを仲間に出来たのじゃ!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
「む……」
悪いがNPCプレイ中なんでな、会話はお断りだ。
しかし、幼女は気にくわなかったのか、ゴーレムから飛び降りて綺麗に俺の肩に乗っかる。
そのまま座って肩車である。
「お主……童が感謝しておるのだぞ!もっと別のことを言えんのか!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
「うぐぐぐ……………か~ま~え~」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
「お主がちゃんと会話するまで動かんぞ!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
誰か助けてくれ。
しかし、俺の心の声は届かず、周囲のプレイヤーとNPCはスッと視線を逸らした。
畜生!!俺が何したっていうんだ!
「ゴーレムとは至高だとは思わんか?石の身体で動くことができる不思議な生命、まさにファンタジーの結晶と言っても良いのじゃ!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
「人間には不可能な動きとて自然とすることができるあのボディ!その堅い拳から放たれる攻撃はあらゆるモノを粉砕する!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
「命を持っているのに死を恐れない意思!たとえ死にそうになっても引かない意地!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
「ゴーレムこそが至高にして絶対!究極にして完璧!最強無敵!!フハハハハハ!!」
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。【浅い湖】のどこかに【泥の沼地】という場所へ行ける道があるそうです。その場所ではマッドゴーレムが生息していますね。あと、【始まりの草原】の西側に【古い坑道】という場所があり、そこの中ボスはストーンゴーレムらしいですよ。参考になりましたか?貴女様にご武運がありますようお祈りいたします」
誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!?
もう嫌だぁぁぁぁぁ!!!
この幼女を俺から引き離してくれぇぇぇぇぇ!!!
◇◇◇
幼女のゴーレム語りと俺のリピートが三十分以上続いた。
俺の精神が崩壊しかけていた時、幼女が静かになった。
何故だろうと上を向くと、寝ていた。
「むにゃ……ごーれみゅはしゃいこう……」
「……」
俺は何も言わずに肩から幼女を下ろして抱っこする。
昔は妹達もこうして抱っこしていたな。
まあ、この幼女の実年齢がゲームの見た目通りなわけがないと思うが、寝ている幼女を無理矢理起こすのは気が引けるというものだ。
苦笑しながら優しく頭を撫でてやる。
幼女は自分の頭を俺の肩に押し付け、良い位置が見つかったのか動きが無くなり、安らかな寝息が聞こえてくる。
ちなみにこの時俺は気が付いていなかったが、男装している美女が寝てしまった可愛い幼女を微笑みながら優しく頭を撫でているように見えていたらしい。
それを知った時に発狂するのは、少し先の話……
◇◇◇
次の日、幼女に気に入られていたようで、町の中にいる時はいつも傍にいるようになった。
「かまえ~」
幼女の名前は【ゴーレムへの愛が止まらない】であり、とりあえずアイと呼ぶようにしている。
仕事中は無視することにしているがな!
そして、幼女と友人になってから三日後、俺にとって最悪のアップデートがされるのだった。
「暇じゃのぉ~」
ちょっと黙ろうか?
あ、人。
「こんにちは冒険者様。ここはエミルの町です。私に何かご用でしょうか?」
補足説明
①・召喚モブは召喚時、常時MP消費。
②・契約モブは契約時好感度100/100となる。
好感度が0/100になった時、契約が解除される。
攻撃を受けたり、食事などを与えないと好感度低下。
敵を倒したり、食事などをすると好感度上昇。
③・レベルは隠しステータス
★現在のヒロイン(笑)のステータス★
名前…ゴーレムへの愛が止まらない
性別…女
職業…サモナー/テイマー
称号…ゴーレム愛…召喚/契約モブがゴーレム種のみ。ゴーレム種に限り、召喚モブの常時消費MP0・契約モブの好感度低下無し。
HP:23
MP:91/91
SP:30/30
STR:4
DEX:6
VIT:8
INT:71
AGI:49
MND:11
LUK:20
◆所持アビリティー◆
ダブルジョブ…二つの職業を持つことができる。ただし、レベルアップが遅くなる。
MP自動回復(極小)…30秒毎にMP1回復する。(1分毎にMP1が普通)
鍛冶…金属製の武器や防具を作ることができる。
錬金…素材の上位変換、下位変換ができる。
合成…アイテムや素材などの合成ができる。




