村人さん、大地に立てない
な、なんだかんだあったけど、やっとVRだぁぁぁぁぁ!!!
ひゃっほーう!!
このリアルな感じ、たまらんとです!
そして、一歩を踏み出しダメージくらった。
そこで一時停止。
「……ん?」
待て、何かおかしい。
何故歩いただけでダメージ?
嫌な予感がする……
「ステータス」
ゲームだからこそのメニュー機能のステータス画面を表示する。
そこには、本来ならよくある攻撃力や魔力といった定番の能力が表示される……はずだった。
◇◇◇
★ステータス★
名前…クレサ
性別…女かもしれないたぶん男
職業…村人さん
称号…病弱な人
HP:並
MP:無い/ビー玉クラス
SP:無い/野球ボール級
STR:農具なら持てる程度の筋力
DEX:Ⅴ
VIT:貧弱貧弱ぅ!!
INT:Gランク
AGI:ダッシュ可
MND:zero
LUK:生きてく分には問題ないレベル
★アビリティー表示★
★スキル表示★
★称号表示★
◇◇◇
HP・体力、無くなると死亡状態になる。
MP・魔力、消費することで魔法を使用可能。
SP・気力、消費することでアーツ使用可能。
STR・攻撃力、物理攻撃の威力及び攻撃速度などに関係。
DEX・防御力、ダメージ軽減及び器用さなどに関係。
VIT・生命力、HP、SP回復速度などに関係。
INT・知力、魔法の威力及び命中率などに関係。
AGI・速力、回避率及び逃走確率などに関係。
MND・魔法防御力、魔法ダメージ軽減及びMP回復速度などに関係。
LUK・運、レアドロップ及び生産成功率などに関係。
……何が言いたいか、わかってくれるよな?
「なんだこのステータスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
よし、まずはステータスの説明でもして落ち付、けるわけがねぇ!?
待て俺、一旦気を静めるんだ。
大丈夫、大丈夫。
ボク、ツヨイコダカラ、ガンバル。
「……落ち着こう。とりあえず町へ行こう」
一歩を踏み出し、死んだ。
「……」
二歩前に戻される。
称号の説明を見る。
病弱な人…MP、SPが常時0で歩くごとにHPに5のダメージを受けるが、NPCの友好度が上昇する。
もう何も言わんさ。
俺は、諦めた。
町へ向かって歩く。
元の位置に戻される。
繰り返すこと38回。
あえて言わせてもらおう。
「なんだこのクソゲーはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なんで最初からこんな意味の分からない称号ついてんだよ!?
性別も女かもしれない男って、男確定じゃないじゃん!?
ステータスも数字表記にしろよ!?
何がどのくらいあるか全然わかんねぇよ!?
大体最初のスタート地点とリスポーン地点って街中の教会じゃねぇのかよ!?
情報交換サイトに教会スタートだってのってたんですけど!?
なんで俺だけ森スタート!?
てか村人なんだからせめて村からスタートにしろよ!!
大体二歩で死亡とか舐めてんのか!?
どうやって進めってんだよ!?
「うぅ……もう、ダメだ……詰んだ……」
orz状態で嘆いていたら、ふと思いついてしまった移動法。
ゲームがシステムを凌駕してくるなら、こちらもシステムを凌駕すればいいんだ。
そう、この称号でHPは減るのは、歩いた時のみだ。
かの偉人も言ったことだ。
歩いてダメなら、歩かなきゃいいじゃない。
そんなわけで、ホフク前進で進んでみる。
すると、問題なく進めた。
しかし、俺の理想はどんどん壊れていく。
「ファンタジー世界で、なんで俺は、初っ端から、こんなこと、してるんだ……」
歩いて十歩分のところまで進んだとき、電子音が聞こえた。
ステータスを開くと、称号が増えてた。
……いや、称号ってそんな簡単に増えないって聞いたんだけど。
とりあえず、新しく手に入れた称号を見てみる。
怪しい奴…NPCからの友好度激減。
……変えるさ。
これに変えれば歩けるんだ。
なら、変えるしかないじゃないか。
もういいよ。
そっちがその気なら、こっちもその気でやってやる。
全力で村人プレイしてやろうじゃねぇか。
「俺は……俺はプレイヤーをやめるぞ、運営ィィィィィ!!!」
言ってることが完全にネタだが、今の俺を止められる奴も止める奴もいないんだよ!
だって一人だし!!
……森って、敵出るよね?
背後に気配を感じ振り返るとモニターがでる。
ゴブリンが現れた。
あ、詰んだ。
しかし俺は諦めないぞ!
即座にアイテム欄を開き装備を確認!
木の棒…そこらへんに落ちてた木の棒……え?攻撃力?ただの木の棒だよ?ゲームじゃないんだから(笑)
ゲームだよ!?
誰だこの説明考えた奴!?
……てか、これ以外持ち物が無いってことは、そういうこと?
畜生!!ヤッてやんよ!!
目の前のゴブリンは俺が木の棒を持ったのを確認すると、棍棒を両手持ちして剣道の構え。
……あれ?このゴブリン、すごく強そうなんですけど?
普通振り回すだけじゃないの?なんで構えてるの?馬鹿じゃないの?
「ゴブ……ゴブッ!!」
見惚れるような綺麗な動作で、ゴブリンの棍棒が俺の額へと直撃。
俺は死に戻りした。
「……なんだこれ?」
もう、俺にゲームさせる気ないよね?ね?
怒るよ?激オコだよ?
こうなれば……まずは町へ行く!!
ゴブリンが現れた。
ちくせう!!
死の戻り。
ゴブリン・突然変異種が現れた。
変わった!?
さっきと同じゴブリンなのに!?
死に戻り。
剣聖ゴブリンが現れた。
めっちゃ強くなってない!?
ムリムリムリムリムリ!?
死に戻り。
油断を知らぬ剣聖が現れた。
ゴブリンですらなくなった!?
武器も棍棒から木剣になってる!?
死に戻り。
剣閃の剣聖小鬼が現れた。
ゴブリンっぽさをちょっと戻しやがった!?
どうでもいいわ!!
しかし、ゴブリンもどきは攻撃してこない。
なんだ?……そういえば、さっき称号が追加されてたような……
理不尽な死の体験者…一定時間内に連続五回死亡した場合にのみ三時間強制装備。自身よりも強い相手が攻撃してこなくなる。ただし、攻撃すると反撃してくる。
……い、今更機嫌を取ったって許さないんだからね!
よ、よし……行くか。
明らかに強いゴブリンを置いて、俺は町へと向かう。
俺は、ゲームを、始めるんだ……絶対に……諦めないんだからね!!




