第24話 ちゃんと正座で聞く
『ワイは猿やプロの猿や!』
みたいな生活の中で俺は少し壊れていた。
水の他は食料等はダメだがムラムラ止めは日数分村長から許可が出ているのだが、数の事や今後の事を考えて一人で居る時の分は我慢したいのであるが、ロマンティックがどうにも止まらないのである。
しかも、ムカつく事に土下座ロボの尻の穴辺りに変な窪みがあり、その窪みを見てもムラムラする俺は、もう末期症状なのだと思う。
後日あの二人もここに滞在するので俺の痕跡を少しでも減らす為に空けて、出して、溜めて、埋めた穴が二つ目に突入している。
『もう、こんなモノは千切り捨てたい…』
と思うが、ナニとは言わないが定期的に悟りを開き、
『これこれ…己を傷つけてはイケないよ…これも自然の摂理…』
などと解った風な事を脳内の賢者がいうので踏みとどまっているのだ。
しかし…しかしである。
ヤるこ事も特に無い地下の闇にてムラムラしているオジサンと、良い高さの窪みを見せびらかす人の形をしたナニかだけの空間…もうヤル事は1つ…いや、シーズン的にトチ狂っているからだが…
『ヘイ、良い尻してんじゃねぇかよ!』
とばかりに欲望のままに腰を打ち付けてみたのであるが、虚しさだけが俺に微笑んでくれるという結末に…己の行動を見つめ直して土下座ロボの背後にて同じ姿勢で、
『何をしてるんだ…』
と項垂れていると暗い地下空間に
「もっとだ…」
と声が聞こえたのである。
お薬が切れたムラムラ禁断症状から来る幻聴ではなく確かに聞こえたその声は続けて、
「ドワーフ族ではないな…ならばヒト族か…」
とドワーフ語で呟くと次に異世界のヒト族の言語で、
「あまり、上手くは話せなくて悪いが、先ほどの様に魔力を供給してはくれまか?」
と語りかけてきたのである。
『いえいえ、十分お上手ですよ…ヒト族語…』
などと、俺の言語スキルでも違和感のないヒト族語だと聞こえた事を誉めている場合ではなく、確かに土下座ロボから声が聞こえたのである。
『いや、先ほどって…』
と、何の事を言っているのか分からない俺だったが、先ほどまで腰をシェイクしていたのを思い出したが、
『いや、流石に…』
と考えて躊躇していると、
「頼む、お願いだ!」
と土下座で懇願されてしまい、仕方なく…ホントに、マジで仕方なく腰をスイングしてあげたのである。
暗闇に、肉と鉄の当たる乾いた音が響き、土下座ロボの、
「おぉ、来るっ…来た!…」
という意味深な声が…【ロボ姦】という見たことも無い文字列が頭を過るが、野獣となった俺は止まらない…しかしリズミカルに叩きつけるぐらいでは満足するような俺でないが、適度な疲労感の様なものに襲われた俺の野生は大人しくなり、
「感謝する…また体を動かせる日が来るとは思わなかった」
と、ロボは土下座の姿勢から正座へと体を起したのであった。
相手が正座ならこちらも正座をするのが良いかと座高が俺の身長ほどあるロボの前に座り、
「ドワーフ語もワカる」
と頑張って初めてとなるドワーフ語で話しかけると、ロボは、
「おぉ、念波ではないな…オリジナルの実験体の子孫か…珍しい…しかもドワーフ語を話せるとは!」
と驚いていたのである。
ロボ…いや、プロトタイプ魔道甲冑からの改造機体である彼は、元はドワーフ艦隊を率いたドワーフ王国の国王陛下だったそうで、エルフへの強い恨みを書き綴ったのもこのプロトタイプ魔道甲冑になってからなのだそうだ…
『魔道甲冑になった…』
というのは微妙に違うかもしれないが、この世界の技術により人工知能としてこの魔道甲冑に寿命が来る前に国王陛下の人格や記憶を移植したという物らしい。
『そんな科学文明が!!』
と驚く俺だったが、彼の話によると科学文明が栄えていたこの世界は、ドワーフ艦隊が飛ばされた後に色々な誤解から各地で全面戦争となり世界は滅亡したのだそうで、得体の知れない兵器より地殻変動が引き起こされ大陸が沈み、各地で洪水が発生し、気がつけばこの山に飛べない飛行戦艦が打ち上げられる結果になったのだそうだ。
実はその世界戦争の引き金になったのが、ドワーフ王国の2番飛行戦艦であり、世界樹真下にあるエルフ族の都市を滅ぼそうと、座標に目掛けて飛行能力を失い落下し始めた戦艦を体当たりさせる決断をしたらしいのだ。
並行世界であるこちらの世界では遥か昔に魔力の根元であった世界樹が不幸な戦争にて倒され、その時にエルフも全て消え魔力もスキルも消え果て、人々は日に二度程小さな種火か一口分の水が出せるだけの世界変わったらしい…しかし人々はそれでも神からの祝福である生活魔法を【神様からの愛】と信じて、代わりに科学文明を発達させて、ようやく切り株から新芽が芽吹いた世界樹のおかげで弱いスキルであるが生活魔法以外のスキルに目覚める者が数千人に程度現れていた矢先の出来事だったそうだ。
並行世界といえどある時点までは同じ星であり、憎きエルフの根城である世界樹の座標も一致しており、世界樹目掛けて2番戦艦は特攻し爆発炎上…こちらの世界の世界樹は灰とかわり完全に生活魔法すら使えなくなったのである。
すると現地の人類の皆さんがパニック状態となり、調査した結果、現場にドワーフ族の死体…こちらのドワーフ王国は疑われて戦争へ…という流れなのだそうだ。
魔道甲冑さんは正座のまま、
「ある意味勘違いからの事故とはいえ、確実に我が配下がしでかした事…洪水後に運良く合流出来た三番戦艦は洪水から奇跡的に助かった人々を連れており、【その者達だけでも救うのが我が使命】と奮闘したのだが…」
と悔しそうに語る。
生き残りを探して、飛行機能用に備蓄していた魔石を航行用にまわし世界を旅する3番戦艦と、地殻変動にて現れた新大陸にて人々が暮らせる基盤を作る事にした1番戦艦の乗員と生き残ったこの文明の人々は協力して、どうにかこうにか生きていたのであるが、各地の都市で二次災害となった原子力発電所の爆発がこの世界を蝕んでしまったのだそうだ。
減りゆく人類…それは異世界から来たドワーフ族も同じ運命であり、魔道甲冑さんは生き残った科学者の協力で改造されたこの体へ移植され、放射能もへっちゃらな体になったのではあるが、本来魔道甲冑はエルフ程の強い魔力の使用者の魔力を増幅させて動きをサポートするのであるが、このプロトタイプ魔道甲冑はドワーフ族でも使える様に魔石にて魔力を補助する機構を追加した物で、現在は魔力と電力のハイブリット機構に改造されているらしく、手持ちの魔石を使いきり、
『同じ世界だったのなら地中に太古の魔物の魔石が!』
と、こちらの科学力にて太陽光パネルなどの電気にエネルギー源を変えて掘りに掘り捲ったのがこの地下坑道であるのだそうだ。
だが、電力では稼働時間が短く、たまに見つかる魔石も大きさのわりに稼働できる日数はたいした事はなく望んだエネルギー源には成らなかったそうである。
そんな中でも頑張っていたが仲間達は減り続け、救助したこの世界の人々も次々と死に、放射能に強い植物や動物をこちらの世界の科学者が品種改良しても、自然はすぐには戻って来ず、人手不足を解消する為に、こちらの世界でも弱くなっていたが生きていたゴブリンと、戦艦の飛行ユニットに使われていたハーピーの翼から【実験体】と呼ばれたオジサン種を数体作り出し、徐々に数を増やすオジサン達に採掘や植林に動物の世話などをさせていたのだが、統率していたリーダが代替わりする度に野生に帰り散り散りに…そして見事にこの星の人類は自然を回復する前に死に絶えた…という…
『あっ、俺の仕事…魔道甲冑さん一人からの報告で終了したじゃん…』
と、呆れている俺に、魔道甲冑さんは、
「はぁ~喋れてスッキリした…今までは何かの拍子に一瞬起動するだけで、あんな姿で停止しているとは…流石に魔力を流して貰ったが蓄える為の魔石がダメみたいだな…」
と言ってから立ち上がり、威厳がありそうな腕組み姿勢で、
「また、気が向いたら魔力を分けてくれ…お主からは強い魔力を感じるからな…まさか実験体が魔力を扱い、ドワーフ語を話せるとは…神に感謝…せね…ばな…」
と言った後に沈黙したのであった。
『彼は自分達の犯した罪を自ら罰して機械の体になり何とかこの世界を生き返らせようとしたのか…』
と、思うと同時に、
『そんな誠実なドワーフ族の王さまだった人の尻になんて事を…魔力以外もヌカれなくて良かった…』
と、安堵する俺であった。
読んでいただき有り難うございます。
頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。




