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見てくるだけの簡単なお仕事  作者: ヒコしろう


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第15話 お役に立ちたい

やはり、他所の子供もそれなりに可愛いが、ウチの子供に比べると…


『みんな普通のオジサン顔…ププッ』


と思えてしまうのは親の贔屓目というやつなのだろう。


特に我が子が優秀…という訳ではないのは頭では理解しているのだが、いざ、他所のお子さんと見比べると何故か我が子に軍配を上げてしまうのだ。


『今から思うと、金という形ではあったが、あれも親からの愛や期待というモノだったのかな…』


と、生前の俺は兄達と自分を比べて自分という人間を見捨ててしまい、


『努力などしても…』


と努力をする前から諦めて…


『幼い時に兄達から色々言われたのは、俺が幼く知識も経験も無かったからであり、兄達の年齢になる迄に、その時点の兄を越えれば良いだけだったのにな…普通は金すらあんな生活をしているヤツにやりたくないだろうが…両親は…俺に少しは期待してくれていたのかもな…』


などと頭の片隅で自分の行いを振り返り、親という者の有り難さを考えつつ、俺は日々卵から孵化して数を増やしていく生まれたてのオジサンの為にハミングの子守唄…というか知ってる曲を手当たり次第に歌いながら村のママさんオジサン達のお手伝いをしている。


何故か狩りチームから外れて俺担当になっている二人…オジサン種は個人名は無いために心の中だけで、気弱そうな【キヨ】さんと、ヒョロガリな【ガリ】さんと呼んでいる…まぁ、ルール通りならばヒョロさんでも良いのだが、脳内でキヨさんの名前と混ざりチョコ菓子が食べたくなりそうなのと、単純に、


『呼びにくそうだし…三文字…長いじゃん…』


という俺の面倒臭がり理論からであるが、


『ほら、実際に呼ぶわけじゃないし…もし口に出しても日本語だから意味は伝わらないから…ねっ、ガリって悪口には聞こえないから良いよね?』


という面倒臭がりが脳内会議でキチンと議論した末に通過した二人のあだ名なのだ。


そんな若いオジサンであるキヨさんとガリさんの二人も、


「どうせ俺たち弱いから、子育ての勉強をした方が役に立ちますから…」


と、俺の手伝いをしてくれているのである。


しかも、三人で子育ての助っ人をしているので、ママさんのオジサンチームからもかなり頼られ、ママさん達からパパさんにも評判が伝わり、配給制の毎日の食事が俺たちだけ少し豪華な気がする。


キヨさんとガリさんの二人は、


「兄貴に付いているとオイラ達まで村の皆に感謝されて…」


とニコニコであるが、足の治療のお返しとして子育てのお手伝いをしている俺としてはこの特別扱いに複雑な気分なのである。


俺は二人に、


「村デ、なんか困りゴトないか?」


と聞くとキヨさんは、


「何ですか兄貴?」


と不思議そうにしているが、ガリさんはその点かなり察しが良く、


「兄貴が足の治療を受けてるのはガボの討伐の手柄からですし、ご飯の量なんかは兄貴が子育ての手伝をしているから、初めての子育てのカップルも安心して子育て出来るから…っていう狩猟担当の村人からのお礼と、兄貴の歌…あれは凄いですよ…オイラも眠っちゃいそうになりますからね…その報酬ですよ」


と言ってくれたのであるが、その手柄とやらの為に負った大怪我の治療に三食付きの寝ぐらの対価が、鼻歌と子守りの手伝いでは少し心苦しいのである。


しかし、コレと言ったご恩返しも出来ないまま三食治療付きの集会所生活により俺の足は完治して、ようやくこの村の為のご恩返しが始められるというものであり、治療の際に一番世話をかけた村長さんの為に彼のお手伝いから始めたのである。


勿論日中には子育てママチームの助っ人は続ける予定なので、早朝に村長さんの薬草園の水やりから始まり、肥料の散布…これは村のトイレ産の有機肥料を撒くのであるが、


『この薬草って、俺の足の治療にも…』


などと少し考えてしまう自分が居たのである。


それが済んだら、前日に村長さんから頼まれた薬草の葉っぱを指定された枚数程収穫し村長のお部屋に届けると、


「あの二人には見せられないが、村の恩人になら…」


と内緒で特製の秘薬の調合を見せてくれたのであるのだが…正直知らない方が幸せな事もある。


目の前で行われている村長さんの秘密ラボでは、


「まず、コイツを…」


と言ったかと思うと村長さんは先ほど摘んだ葉っぱを種類別に頬張るとモシャりだし、いつも俺の足の治療に持参していた素焼きの壺にペッと吐き出した後に、


「ワシも歳だから次の手順は堪えるゾイ…」


と言いながら麻痺成分や刺激臭のある材料をほんの少し口に含みクチャクチャすると村長の顔面から様々な汁が溢れだし、


「ふわぁ…」


と何とも切ない声を出している村長の一番搾り爺汁も目や鼻や口から直接壺へとINすると、汁を出しきった村長が軽く痺れが残る口のまま、


「あひょは、ネルでゃけジョイ」


と言って棒を壺に突っ込みグルグルしはじめる。


『村人ウンコでスクスク育った薬草を村長汁で練り上げたお薬をこの1ヶ月…俺の足に…』


小一時間ほど休み休み練り上げた壺を痺れが取れたらしい村長さんが、


「あとは、汁っ気がなくなればハーピーの薬のデキあがりゾイ」


と言っていたのである。


『えっ!』


と驚いた俺は思わず、


「ハーピーって…」


と、声に出してしまったのであるが、どうやら村長さんも、


「何でもご先祖さんらしいが…ワシも良く知らないがそう言う名前の薬と思ってくれたらいいゾイ」


と言っていたので、この世界には既にハーピー種としての上半身のみに魅力を感じる女性は居ない様子である。


『まぁ、人間からしたら【原人を見たか?】というのと同じだろうからな…』


と思いつつも、


『オジサン種は文明を持ってない…って思ってたけど案外と俺が下々の一般通過オジサンだから知らないだけで長い伝統や文化が有る地域や村長さんの様に技術を伝承している選ばれし一族的なオジサンも沢山居るのでは…』


と感じて、奥深いオジサンという種族についてもう一度興味が湧いた俺は、村長さんに夕食後に【オジサンの歴史】について教えてもらったのである。


えっ、年老いたとはいえ一人のオジサンの寝ぐらに毎夜の様に通うなんて破廉恥な…なんて、ご心配なく! なんと次の村長候補も村長さんも子作りから引退し村長と同居をしながら様々な村長教育を受けているので、オジサン三人の部屋である為に俺の穴るが危険ならば毎夜の様に俺が通うことなど有るわけがないし、万が一にも三人で…なんて事となれば俺のお尻がもたない為に通える筈もない…


『つまり安全!』


という訳なのだ。


まぁ、余談はここまでとして、村長さんから次期村長さんへの技術の伝承の中には昔話の様なオジサン種の歴史も入っており、その部分だけ俺にも教えてくれる事になったのだが、文字は持っていないがこうやってリーダ達には口伝で様々な知識や歴史が受け継がれている様で、この作業を円滑に進める為に村長さんは長年発声の訓練を続けてきたらしい、


『本当に尊敬に値する人物であるが、薬の作り方だけは秘密のままでも良かった…』


と、少しだけ思っている自分が居る。


そんな村長さんはオジサンの歴史について、


「むかし、むかしの遥か昔、神々がまだ地上にお住まいになっていた頃の話ゾイ…」


と語り始めた村長さんの三夜にわたる長い話をギュっとまとめると、


神様同士で戦争して壊滅的になった神様の一人がオジサン種を【神様のお手伝い】としてこの世界に作り出したのだが、神様はこの壊し過ぎたこの世界を離れる事にして、オジサン達の種族はこの世界の森の管理人として残された…という短い内容であったのであるが、語り継ぐうちに語り手の功績をチョイチョイ追加したらしく今ではメインの内容より、


『やれ槍の名人だった若いオジサンがガボの群れを倒してこの村の危険を一人で救った…』


だの、


『岩塩の採掘を巡り決闘となったが力持ちだった村長が近隣の集落を次々と打ち負かして以後千年近く塩の心配はなくなった…』


だのと歴代村長の偉業コーナーにウンザリしたのは事実であるが、少なくともその岩塩が底をついている現在、千年以上の歴史がこの村には有る事になるのだが、神様が居た時代から塩の争いまでのお話にもかなりの歴代村長らしき登場人物が居た為に下手をすると何千年…いや何万年かも知れないのであった。


『オジサンって…』


とは思うが、俺がこの話の中で確実に言えるのは、【神々が地上にいた時代…】という神々の中に100%この世界に俺を送り込んだ自称主神であるボクチン神様は居ないのだろう…という事と、もし居たのであれば、【種族名 オジサン(仮)】などと云うふざけた解析結果は出て来ずに世界の記憶に記されて正式に鑑定スキルで解ったはずであり、


『神々とは…』


と首を傾げる俺だったのである。



読んでいただき有り難うございます。


頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


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