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見てくるだけの簡単なお仕事  作者: ヒコしろう


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第11話 オジサンは人なのか?

誰にもお見せ出来ないような長いムラムラ期をなんとか乗り気った俺は、周辺のオジサン達が産卵し卵を温め始める頃までこの秘密の地底湖周辺で暮らしつつ旅の食料等を整えた後に一気に目標としていた名も知らぬあの高い山の方へと進む予定である。


しかし、その前に軽く狩りをして干し肉にチャレンジしようと考えている。


『ここならばわざわざ製塩した塩を使わずとも採掘したまの塩の地層を毛皮のバケツに放り込み土が沈殿するのを待てば良いからね…塩水に肉を浸けたのを乾かせば今までよりも保存が利くだろう…』


という事で今回の一件でバケツ代わりに使いボロボロになってしまった俺の敷き布団的牙ネズミの毛皮と、可能であれば着やすいのであるが、地下生活で薄汚れた一張羅である毛皮の服も新潮したいと考えているので、


『まぁ、どちらにせよ狩りだな…』


という事で塩探しで大量に掘り返した土で地上までの階段を作る為に革袋に土を入れてエッチラオッチラ落ちて来た坂の上まで往復を繰り返す。


『こりゃ、革袋も新しくしないとな…』


と思いつつも土仕事は手慣れたもので、何やかんや考えながらでもその日のうちに地上までの階段建設の資材運搬が完了したのであった。


本当は、


『地底湖周りに落ちている木でハシゴを作れば楽かな?』


と思ったのだが、ハシゴを作る為のヒモが足らずに、【釣竿をバラしてハシゴにするか?】という選択を迫られた俺は、


『また魚が食べたくなるかも知れないから…』


と欲望を満たす為に辛い資材運搬という労働を選んだのである。


『あれ?俺って案外…労働って苦じゃないのか…』


と、生前の自分ならば物欲か労働の二択ならば多少の物欲であれば我慢してでも家でゴロゴロ出来る選択肢を選んだだろうに、楽よりも未来の自分の物欲を満たす為に肉体労働を選んだ自分に驚きながらも、


『まぁ、怠惰な生活か物欲の二択だからな…どちらも褒められたモンじゃないか…』


と呆れつつ、落ちている枝を採掘作業で完全に角が取れてハンマーのようになった石斧で地面に打ち込んで土止めにしてから運んだ土を積み上げて行けば翌日には地上までの階段の出来上がったのである。


『まぁ、背丈ぐらいを上れば良いだけだし、途中からは現地の壁を掘って階段にしても良いし崩落した床が既に二段分ほどの段差を作ってくれてたから楽なもんだ…』


と、ご機嫌で飛び出した地上で俺は、


「あぁ…」


と久しぶりとなる声を出しながら、あまりの眩しさに両目を押さえて、


『目、目がぁぁ!』


と、のたうち回るのであった。


光が差し込むとはいえ薄暗い地下で1ヶ月程あの様な生活をしていたのだ…御天道様を恥ずかしくて…いや、眩しくて見られないのは当然である。


目が馴れて辺りの景色が見えた俺の感想としては、


『美味しそう…』


であり、食べられる美味しい野草をモリモリ摘んで、日陰苦草ではない森の恵みを堪能し、改めて、


『日陰苦草なんて人の食い物じゃないな…』


と痛感したのであった。


さて、窪地の中は相変わらず天然の落とし穴だらけであり、危なくてウロウロ出来ない為に拠点の有る窪地から丘を上り反対側の森にて狩りなどを行ったのであるが…


『地味に獲物を運ぶのが大変だな…』


と坂道の登り降りという地味な試練が待ち受けていたのであるが、穴掘りや釣りなども人生経験になったのか自分を鑑定するとレベルが9に上がっていたので、


『強くなった俺ならば…』


と自分を励ましながら狩りを頑張ったのだが、強くなったとはいえ、まだそこら辺にウジャウジャ居るレベル10以上のオジサン達より弱いが、そろそろ卵を温め始めるパートナーの為に集落のオスのオジサン達がチームで狩りをするシーズンの為に、出会ったら即決闘などにはならないので安心してご近所のオジサン達に出会い、


「おっ、パートナーも見つからなかった可哀想なやつだな…」


とか、


「ズクなら取っても構わないが、オイラ達の罠に悪さしたら許さねぇぞ!」


などと脅され、


「ビビってるのか何もいわねぇでやんの…」


と馬鹿にされながらウガウガと言われても俺としては尻が安全ならばノーダメージであり、それどころか、


『よし、そろそろ旅立つか…』


と近所のオジサン集落からの狩りチームの動きから繁殖期が次の段階に進んだ事を知った俺は獲物の運搬には苦労したが、非常食としての魚が勝手に繁殖している地底湖の住みかを離れる決意をしたのだった。


『本当に子作りにも子育てにも落とし穴の方にさえ行かなければ良い場所なんだけど…』


と勿体なく思った俺は、


『よし、もしもこの隠れ家を見つけた人が使える様に入口に看板でも…』


と思いつき、獲物の解体用の黒曜石のナイフを握りしめて木に【隠れ家あり、ご自由に…】と書こうとしたまま固まってしまったのである。


それは何故かというと、


『ウソ…オジサンって文字の文化って…無いの…』


と…ボクチン神様から貰ったどんな言語でも理解でき、読めて書けて喋れるという言語スキルがあり、未知のオジサン種の言語も旦那からの愛により食べて解析スキルがバッチリ学習したはずのオジサン言語であるはずなのに、一文字も文字が浮かんで来ないのである。


『神様からの依頼で文明がどんな感じかを調べる為に来たのだが、文字文化すら無いオジサンは文明人として判断して良いのだろうか…』


衣類は原始的、食事も味付けはほぼ自然のままの味、住みかは洞窟や大木のウロなどの穴ぐら…固有の名前を持たず、求愛行動も強さが基準であり、何より、


『ゴブリンとハーピーは魔物じゃないのか…』


という【そもそも論】が頭を過り、


『これって種族は何でも良いけど、ちゃんとした人に出会ったらモンスター扱いで討伐されたりしないよね…俺…』


と、なんとも言えない不安が押し寄せてくるのであった。


しかし、殺されるのも痛いのも嫌だが、文明人を見つけて観察するのが俺の役目であり、その結果を聞いたボクチン神様が、


『面白そうだね…エルフちゃんは居ないけど面倒をみようか…』


となれば、【改めて正式に管理】となるが、


「魅力ゼロだね…ボクチンのアンチも多いし…」


などと判断すると、【世界ごと抹消】という場合も有るらしいので、


『やだ!息子ちゃんが世界ごと消されるピンチだ!!』


と気がついた俺は、神様が納得する報告を上げる為に、


『頂上までは無理でも目指していた山に登れば人が住む町が見えるかも…』


と看板を立てるのを諦めて、急いで旅支度に取り掛かるのであった。


そして翌朝には洞窟サケもどきの固い骨で穴を空けて、罠にも使う蔦の繊維を寄り合わせた頑丈なヒモで縫い上げた牙ネズミの革の袋にミッチミチに干し肉などを詰め込み、新しい毛皮の服に袖を通し…ってノースリーブの丈の短いワンピース風の服だから袖は無いのだがソレを着て、


『まぁ、裁縫上手なママ友のオジサンの作品よりは見劣りするけど…』


とは思うが、既に成長の早い息子の為にも何度か作った革製品は納得の仕上がりであった。


『目標はかなり高い山だし、ぐるりと四方を見るのでさえ日にちがかかるだろう…だから山の近くに拠点を構えて、人類と遭遇しても瞬殺されない程度の力を身につけないとな…』


という事で、


【山まで行く】


というのが第一目標となり、次に


【長期拠点を安全な場所に作る】


というのが絶対条件であり、可能であれば、


【黒曜石を見つけて装備を作り安全な狩りをして強くなる】


というのを目指したいのだ…


『下手をするとまたムラムラ期に入ってしまうかも…』


とムラムラ期が終わったすぐであるのにも関わらず既に次のムラムラ期が憂鬱で堪らない俺は、


『タマをプチっともぎ取ったら発情しないかな?』


などと末期的な発想が過るが、どう考えても痛いし、黒曜石のナイフでスパっとする映像を想像してキャンタマが縮み上がる感覚をおぼえ、


『やっぱ、今のアイデアは無し、無し…』


と自分に言い聞かせるのであった。



読んでいただき有り難うございます。


頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


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