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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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14 フランク・カルディナの過去 4

 お見合い後……自分の結婚相手はルクレチアしかいないと思えるほどに、僕はすっかり彼女を気に入ってしまった。


そこで毎週末僕は『アネモネ』島へ渡り、ルクレチアと会って交流を深めていった。


『アネモネ』島は船で片道六時間かかる。僕はその度にホテルを手配し、一日宿泊してからカルディナ家へ戻るという生活を続けた。


本来であれば、ルクレチアをカルディナ家へ招待したかったけれども屋敷にはイメルダの父、ゴードンがフットマンとして働いている。

彼にルクレチアのことを知られてしまえば、すぐさまイメルダの耳に入ることは分かっていた。


イメルダのことだ、万一ルクレチアの存在が知られてしまえば彼女と僕の仲を妨害してこようとするに決まっている。

正式に二人の婚約が決まるまでは、絶対にルクレチアの存在が知られてはならない。


僕は、心にそう誓った。



イメルダとゴードンに知られないようにルクレチアと交際を重ね……半年が経過した後に、正式に二人は婚約することになったのだった。



そして、僕とルクレチアの婚約はあっという間に屋敷中に知れ渡ることになる――




****



 それは冬期休暇に入ったばかりの日の出来事だった。


いよいよ明日から暫くの間、『アネモネ』島に長期滞在することが出来ると言う事で、僕は浮かれた気持ちで荷造りの準備をしていた、その時……


――コンコンコン!


 部屋の扉が乱暴にノックされると共に、イメルダの声が聞こえてきた。


『フランク様! いるのでしょう! 入れて下さい!』


「イメルダ……」


ついに僕が婚約した話が彼女の耳に入ってしまったようだ。


ため息をついて部屋の扉を開けると、眼前に眉を吊り上げたイメルダが立っている。それどころか、彼女の父親のゴードン迄一緒だ。


「フランク様! どういうことなの!? 父から聞いたけど、伯爵令嬢と婚約したのですって!? 何故そんな大事な事今迄私に黙っていたのよ!」


耳障りなキンキン声に思わず眉をしかめる。だが、この際はっきり告げなくては。


「どうして君に僕が婚約したことを教えなければいけないんだ?」


「な、何ですって……!」


僕の言葉に顔面蒼白になるイメルダ。すると、ゴードンが前に出てきた。


「フランク様、あなたは御自分が娘にどんなことをしたのかお忘れなのですか? あなたの飼い犬のせいで、イメルダは身体に大きな傷跡が出来てしまったのですよ? 傷者の娘を貰ってくれるような物好きな男性が現れるとでも思っているのですか?」


確かに彼の言う事も一理ある……けれど、僕だって大切なノクスを失っている。


「そうよ! だからフランク様は責任を取る必要があるのよ? それなのに私以外の女性と婚約だなんて……!」


まさか、この親子は僕が本気でイメルダといずれ婚約するつもりでいたのだろうか?

そんなこと、決してあり得ないのに。


「だけど、イメルダに大きな傷を負わせてしまった責任はきちんととっているだろう? カルディナ家で君たち家族のために家を購入し、十分すぎる報酬だって与えているじゃないか」


「責任を取るって言うのはそういうことじゃないわ! 私と結婚することが真の責任を取るってことでしょう!?」


ついに、イメルダは呆れた発言をした。この僕がイメルダと結婚だって? 


「悪いがそれは出来ない。大体、君と僕とでは身分が違い過ぎる。余程の理由がない限り、結婚なんてあり得ない」


大体、僕はイメルダが嫌いだ。……けれどゴードンがいる手前、そこまでのことはさすがに口には出せなかった。

イメルダは怒りのあまりか、真っ赤になってブルブル身体を震わせていたが……やがてフッと笑った。


「そう……なら、余程の理由が出来れば結婚出来るってことね?」


けれど、僕はそのことについては答えなかった。


「それよりも、用事が済んだなら帰ってくれないか? 僕は忙しいんだ」


「フランク様……本気ですか? 本気でイメルダを見捨てるつもりですか? あんなに大きな傷を負わせておいて?」


ゴードンが恨みがましい目で僕を見る。


「やめましょう、お父様。フランク様はお忙しい方なのですから。何処かへお出かけするみたいだし」


驚いたことにイメルダが引いてきた。


「だ、だが! イメルダ……!」


「いいから、行きましょう」


ゴードンはまだ何か言いたそうにしているけれども、イメルダはその言葉を聞かず、彼の手を引くと、部屋から去って行った。


「まさか……僕の言葉が通じたのか?」


にわかには信じられなかったが、これで荷造りに集中できる。早速『アネモネ』島に行く準備の続きを再開した。


この時の僕はもうすぐルクレチアに会えるという喜びで、すっかり油断してしまっていたのだった――



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