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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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13 フランク・カルディナの過去 3

 あの事件から早いもので六年の歳月が流れていた。


僕とイメルダは十八歳になり、今は同じ高校に通っていた。


それは……イメルダからの強い要求であり、彼女に負い目のある自分には断ることなど出来なかったからだった。



昼休み――


「待ってよ、フランク!」


三人の友人たちと食事に行くために、学生食堂へ向かって歩いているとイメルダが息を切らせながら駆け寄ってきた。


「イメルダ……」


心の中でため息を付きながら、足を止める。


「ねぇ。お昼に行くんでしょう? 私も一緒に行くわ」


そして腕を絡めてくる。


「だけど……」


言い淀むと、友人たちは口々に言った。


「分かったよ。フランクは君に譲るよ」

「俺たちだけで行ってくるよ」

「また後でな」


「え?」


彼らは気を利かせたつもりだろうが、僕にとってはイメルダの存在は迷惑でしか無かった。常につきまとってくるせいで、僕たちは周囲から恋人同士だと思われていたからだ。

そんな関係じゃない、正直、彼女から離れたくてたまらないのに。


「行ったわね、私たちに気を利かせてくれたのね。それじゃ行きましょう」


「イメルダ、君には友人はいないのか? いつもいつも僕についてきて……」


そして腕を振り払うと、そのまま食堂へ向けて歩き始めた。


すると――


「う、い、痛い……」


突然イメルダが左足を押さえた。


「……!」


まただ、いつものイメルダの嫌がらせが始まった。


「時々、傷跡が痛むのよ……ねぇ、手を貸してくれるわよね?」


そして意地の悪い笑みを浮かべる。


「……分かった……」


仕方無しに、僕は彼女の腕を取り……暗い気持ちで食堂へ向かった。


一体、いつになったら……僕は解放されるのだろう?

そんな思いを抱きながら――




****


 ある日のこと――


 父の書斎に呼び出された僕は意外な話を聞かされた。


「え? ……お見合……ですか?」


「ああ、そうだ。お前も来月には卒業し、大学へ進学するだろう? そろそろ婚約者がいてもおかしくない頃だ」


「で、ですが……」


イメルダが何というか……彼女は絶対に僕と結婚できると考えている。……もっとも僕にはそんな気はさらさら無かったけれども。


すると父の眉が険しくなった。


「何だ? まさか……イメルダと結婚する気なのか? それだけは絶対に許さんぞ! あの娘は落ちぶれた準男爵の娘であり、父親はこの屋敷の使用人だ。身分が違いすぎる!」


「そ、そんなこと考えてもいません!」


むしろ、イメルダから離れたくてたまらないのに?


「そうか、ならいい。相手の女性はお前と同じ十八歳、ルクレチア・グレンジャー嬢。『アネモネ』島に住む伯爵令嬢だ」


そして父は相手の釣書と、写真を机の上に乗せてきた。


「ルクレチア・グレンジャー……」


モノトーンの写真の彼女は、笑みを浮かべた姿で椅子に座って写っている。


その姿は……とても愛らしかった。





****



 お見合は、彼女の住む屋敷のガゼボで行われた。


「こんにちは、ルクレチア・グレンジャーと申します」


真っ青な空の下、薄紫色のワンピース姿でお見合の席に現れたルクレチアは恥ずかしそうにうつむきながら挨拶をしてきた


淡い栗毛色の長い髪に、美しい紫色の瞳の彼女は写真以上に愛らしく……自分の胸が高鳴るのを感じた。


「はじめまして、フランク・カルディナです」


「本日は……会って頂き、ありがとうございます……」


顔を赤らめながらルクレチアが言う。


「何故お礼を?」


「そ、それは……私が両親にお願いしたからです。カルディナ様とお見合させて欲しいって……」


「え……?」


一体、何故彼女は僕と見合いを……? すると、思いがけない言葉を口にした。


「実は、今から三年前に……『リーフ』で行われたデビュタントで、私達……お会いしているんです。その時から……もう一度、会いたいと思っていました。そんな矢先に、カルディナ様がお見合相手を探していると話を聞いて……手を上げました」


恥ずかしくて、たまらないと言わんばかりにルクレチアはますます頬を赤く染める。


そうか……

『リーフ』ではすっかり僕とイメルダの仲は噂されていた。そこで焦った父が僕の噂を知らない遠方の貴族令嬢たちに見合いの話を持ち出して……ルクレチアが立候補したのだ。


僕はじっとルクレチアを見つめた。

美しい紫の瞳はまるで宝石のようだった。


それにイメルダとは違う、愛らしさ……


多分、写真で見たときから僕は彼女に惹かれていたのだと思う。


「僕こそ、会えて光栄です」



そして、ルクレチアに笑いかけた――





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