17 教室に響く物音
学校に到着し、廊下を車椅子で移動しているとすれ違う生徒たちが興味深げに私を見ている。
「何だかとても目立っているようで恥ずかしいわ……」
「車椅子なんて、見るの初めての人が多いと思うわ。私だって初めてだもの。でも確かすごく車椅子って高級なのよね? それをお父様はレティにプレゼントしたのだから本当にすごいと思うわ。お父様には感謝しないとね」
「え、ええ。そうね」
フィオナの言葉が少し気になったけれども、私は返事をした。
「それだけ、レティのお父さんは愛情を持ってくれてるってことじゃないかな? 僕はそう思うよ」
セブランが笑みを浮かべて私を見る。
「お父様が……私に愛情を……?」
本当にそうなのだろうか? 私は物心ついた頃から父に温かい言葉を掛けられたことも無いのに?
現に今だって食事の席では三人は仲睦まじく会話をしているのに、私はその輪に混ざることも出来ないでいるのに……
「どうしたの? レティ。貴女の教室の前に着いたわよ?」
不意にフィオナに声をかけられてハッとなった。気づけばいつの間にか自分の教室の前だった。
「それじゃ、レティ。放課後また迎えに来るよ」
セブランが笑顔で手を振る。
「レティ、またね」
フィオナも私に手を振ると、二人は楽しそうに話をしながら自分たちの教室へと入っていった。
「ふぅ……」
小さくため息を付いて教室へ入ると、再び私はクラスメイトたちに取り囲まれることになるのだった――
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――昼休み
今日も私は教室でヴィオラが買ってきてくれたランチを彼女と二人で食べていた。
教室には私とヴィオラしかいない為、私達の会話は教室に響き渡っている。
「それにしても、レティのお父さん……こんな言い方をしては失礼かもしれないけれど、見直しちゃったわ」
ヴィオラの言葉に首を傾げた。
「え? どうして?」
「だって、レティの足の怪我は1週間くらいで治ると言われているのでしょう? それなのにそんな立派な車椅子をプレゼントしてくれたのだから」
「ええ、それについては私も驚いているの。お礼を伝えたいのだけど、仕事の関係で今不在なのよ」
「そうだったの。相変わらず忙しそうね。貴女のお父さんは」
「ええ。そうね」
私はデザートのイチゴを口に入れた。
「ねぇ、それよりもレティ。昨日何かいいことでもあったの? 今日は目の下のクマもないし、何だか覇気があるように見えるわ」
ヴィオラが身を乗り出してきた。
「え? やっぱり……分かる?」
「もちろんよ。だって私達親友同士でしょう? それで? 何があったの?」
「ええ……昨日、セブランと、御両親が私の足の怪我のお見舞いに来てくれる話はしたわよね?」
「ええ、聞いてるわよ。それでセブランの御両親がお見舞いに来てくれてどうなったの?」
「そうしたら……まず、セブランのお父様が同席していたフィオナとイメルダ夫人が部屋を出ていってもらうように頼んだのよ」
「まぁ! それじゃ追い出したってことね?」
ヴィオラが目を輝かせながら私の話を聞いている、
「そうなるのかしら……? その後の話なのだけど……私、十八歳になったらセブランと婚約する口約束を交わすことが出来たのよ」
「え? そうだったの? セブランがそのことを承諾したの!?」
驚くヴィオラ。
「ええ、そうよ。私達が十八歳になったら、自分から婚約を申し入れるよってセブランに言ってもらえたのよ」
――その時
ドサッ!!
突然教室に何か重いものが落ちる音が聞こえた。
「「え?」」
二人で驚いて振り向くと、そこにイザークが立っていた。
その目は見開かれ……足元には彼のカバンが落ちていた――




