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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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14 意外な提案

「レティ……最近姿を見せないからとても心配していたのよ?」


おばさまが私の髪を撫でながら尋ねてくる。


「……申し訳ございません」


今の私にはそれしか言いようが無かった。するとおじ様がこちらに近づいてきた。


「学校で意識を失って足を怪我したとセブランから聞いたときはとても驚いたよ。それにしても……一体どうしたのだい? 顔色もよくないし、痩せてしまったみたいだが」


おじ様が心配そうに尋ねてくる。


するとイメルダ夫人が口を挟んできた。


「最近、レティシアはあまり食事を頂かないのですよ。どうも好き嫌いが激しいようで」


「え!? そ、そんなこと……!」


あまりの言葉に全身から血の気が引く。すると夫人が反論した。


「いいえ、レティはそのような娘ではありませんよ? 何でも好き嫌いなく食事をいただく礼儀正しい娘です。小さな頃から見てきた私達にはよく分かります。そうよね? セブラン」


おばさまはセブランに問いかける。


「は、はい。そうです。レティは食事の好き嫌いはありません」


「セブラン……」


するとセブランは私を見てにっこり笑う。するとすかさずフィオナが口を挟んできた。


「レティは最近、あまり食欲が無いだけなんです。だから私、ずっと……レティのことが心配だったのです。何か悩みがあれば何でも打ち明けてね? レティ」


「え、ええ……あ、ありがとう……」


フィオナが私に掛けてきた言葉に驚く。けれど私には白々しい言葉にしか聞こえない。おじ様とおば様の前でいい人を演じているだけなのだろう。

イメルダ夫人を見れば、頷きながらフィオナの言葉に同意している。


「「……」」


けれどおじ様もおば様も不審そうな目を向けているのが分かった。


そして次の瞬間――


「イメルダ夫人、そして……フィオナだったかな? 私達はレティのお見舞いに来たのです。申し訳ないが、お二人は席を外して頂けませんか?」


おじ様が二人に声を掛けた。


「え……? い、今何とおっしゃったのですか?」

「……」


夫人は目を見開き、フィオナは言葉を失っている。


「私の話がうまく伝わりませんでしたか? お二人にはご遠慮くださいと申し上げているのです」


おじ様は何処までも静かに言葉を紡ぐ。


「……わ、分かりました……確かに皆さんはレティシアのお見舞いにいらしたのですよね? 出過ぎた真似をして申し訳ございませんでした。行くわよ、フィオナ」


夫人はフィオナに声を掛けた。


「え? で、でも……セブラン様……」


フィオナはすがるような視線をセブランに向ける。


「……ごめんね。フィオナ」


「!」


セブランの言葉にフィオナは一瞬目を見開き……項垂れると、夫人と共に応接室を出て行った。



――パタン



扉が閉じられると、ようやく私は肩の力が抜けた。


「大丈夫だった? レティ」


おば様が心配そうに声を掛けてきた。


「はい、大丈夫です。でも……申し訳ございません。折角お見舞いに来てくださったのに、父が不在で」


「いいんだよ。予定も聞かずに、勝手に来てしまったのだから。それにレティに会うのが目的だったからね」


おじ様が笑みを浮かべる。


「セブラン。あのフィオナとか言う子の面倒を見ていると言っていたけれど……もっとレティのことを気にかけて上げなさい。こんなにやつれてしまったのに気づかなかったの?」


「はい……ごめんなさい。気づきませんでした……」


すっかり気落ちした様子でセブランが返事をする。


おば様がセブランを責めるけれども、彼が私の異変に気づかなかったのは無理もない。

だって、今のセブランはフィオナに夢中なのだから。


「レティ、もしかして新しい家族とあまり上手くいっていないのではないの?」


「……」


セブランの手前、私は返事が出来なかった。彼に本音を知られてしまえばフィオナに伝わってしまいそうだったから。


「黙っているということは、やはりそうなのだね? これは提案なのだが……どうだろう? レティ。暫くの間、我が家で暮らさないか?」


「え?」


それはおじ様からの意外な提案だった。


だけど……


私の脳裏に夫人とフィオナ……それにお父様の顔が浮かんでくる。

婚約も決まっていないのに、もし私がセブランのお屋敷でお世話になろうものなら何を言われるか分かったものではない。

それどころか、戻ってくれば私の居場所は無くなってしまうかもしれない。


「申し訳ございません。とても嬉しいお話ではありますが……お父様のお仕事の手伝いもあるので、お断りさせて下さい」


私は丁重にお断りするしか無かった――


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