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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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5 非難するイザーク

「イザーク……」


私を含め、その場にいる全員が彼を振り返った。


「レティシア、その足……どうしたんだ? まさかあのとき、怪我をしたのか?」


イザークは大股で近づいて来た。


「え、ええ。そうみたいなの……あ、そうだわ。イザーク、あなたが階段から落ちそうになった私を助けてくれたのでしょう? 保健室にも運んでくれたし、セブランにも知らせてくれたのよね? ありがとう」


笑みを浮かべてお礼を述べるも、何故かイザークの目つきは鋭い。


「そんなことはどうでもいい。ただ単に近くに俺はいただけだから。誰だって目の前の人物が突然倒れたら同じ行動を取っていただろう? それより……何故、松葉杖で歩いているんだ?」


すると、ヴィオラがすかさず返事をする。


「レティは右足首を捻ってしまったのよ。松葉杖をついてしか歩けなくなってしまったので、私が荷物を持ってあげてるのよ」


ヴィオラの話を無言で聞いていたイザークは次にセブランに視線を移した。


「セブラン。俺が何故お前にレティシアが保健室にいるか教えたのか分かっているのか?」


「も、勿論だよ」


頷くセブラン。


「だったら、何故手を貸してやらない? それどころか、荷物すら持ってやらないなんて」


明らかにイザークはセブランに怒っているようだった。……そんなに怒るほどのことなのだろうか?


「それは、ヴィオラさんがレティの荷物を持つと言ったからよ」


「俺は君になんか尋ねていない。セブランに聞いているんだ」


フィオナの言葉にイザークはますます不機嫌になる。フィオナは彼の迫力に押されたのか、セブランの陰にサッと隠れてしまった。


不穏な空気になったので、私は慌ててイザークに声を掛けた。


「ま、待って。セブランは私をおんぶしてくれようとしたのよ? だけど、私が断ったの。ほら、当分松葉杖で歩かないといけないから練習のためにって。そうよね? セブラン」


「え? あ……う、うん。そうなんだ」


「何言ってるのよ! 医務室の先生に言われたからでしょう!」


そこへ再びヴィオラがセブランを非難する。


「チッ!」


イザークは舌打ちすると、私を見た。


「レティシア、松葉杖の練習なら家でやれ。転んだらどうする?」


そうして私の前に回ってくると、突然背中を向けてしゃがんだ。


「え? な、何?」


あまりの行動に戸惑う私。


「何? じゃない。ほら、おぶされ」


「ええ! イザーク! 何を言うの!?」


「いいから、早く乗れ。いつまで俺にこんな格好をさせるつもりだ?」


イザークは私を振り返る。……何だかその表情は酷く不機嫌だ。こんな不機嫌そうな人に背負ってもらうなんて……


セブランとフィオナは呆然としている。


すると――


「何してるのよ、ほら。おんぶしてもらいなさい。杖は預かるから」


ヴィオラは左手の松葉杖をサッと奪うと、軽く私の背中を押した。


「キャッ」


そのままイザークの背中に倒れこむと、彼は私の両ひざを抱え上げると立ち上がってしまった。


「はい、もう片方も預かるわ」


ヴィオラは右手からも松葉杖を取ってしまった。


「ちょ、ちょっと! おろして! イザーク!」


「おい、暴れるな。落とされたいのか?」


その言葉に思わずビクリとし、私は慌てて首を左右に振る。


「はい、セブラン。レティの松葉杖を持つのはあなたの仕事よ」


ヴィオラは呆然としているセブランに松葉杖を手渡す。


「う、うん……」


セブランが杖を受け取るのを見届けるとイザークが声を掛けた。


「よし、馬車乗り場まで行くぞ」


そうして奇妙な雰囲気の中、私は彼に背負われたまま馬車乗り場へ向かった――

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