23話 婚約が決まった日
レオナルドの唇が離れていったので、そっと目を開けると真っ赤な顔で私を見つめている彼の姿があった。
こんな表情を浮かべるレオナルドを見るのは初めてだ。
「レオナルド様……?」
すると、とたんに謝ってきた。
「す、すまない! いきなりこんなことをしてしまって……そ、その……レティと気持ちが通じたことが……嬉しくて……つい……」
恥ずかしそうに私から視線をそらすレオナルド。
私のことでレオナルドにそんな表情をさせてしまっている……。
彼にとって自分が特別な存在なのだと思うと、それだけでとても幸せな気持ちがこみ上げてくる。
思わず笑みを浮かべると、レオナルドが躊躇いがちに尋ねてきた。
「……イヤじゃ……なかったか……?」
「イヤなはずありません。だって、私はレオナルド様のことが好きですから」
「レティ……!」
レオナルドの目が大きく見開かれ、再び強く抱きしめられた。
「祖父母の部屋に戻らないか? その……性急過ぎるかもしれないが、婚約を決めた報告を2人にしたいんだ」
「はい、レオナルド様」
するとレオナルドが耳もとで囁いてきた。
「レティ……好きだ」
「私も……レオナルド様が好きです」
そして私達はどちらからともなく顔を近づけ……二度目のキスを交わした――
****
私とレオナルドは互いの手をしっかり繋ぎ、おじい様の部屋の前に戻ってきていた。
緊張しているのかレオナルドは一度深呼吸すると、扉をノックする。
――コンコン
『誰かしら?』
扉越しに祖母の声が聞こえた。
「お祖母様、レオナルドです。レティも一緒にいます。中に入ってもよろしいでしょうか?」
『ええ、どうぞ』
そこでレオナルドは私に一瞬視線を送ると扉を開けた。
「失礼します」
部屋に入ると、おじい様は先ほど同様にベッドの上で身体を起こしていた。
「どうしたのだ? 2人……とも……?」
「あら……?」
私とレオナルドがしっかり手を繋いでいる姿に気付いたのだろう。祖父母が不思議そうに首をかしげる。
私とレオナルドは互いの顔を見つめ、頷き合うとレオナルドが口を開いた。
「おじい様、おばあ様。俺はレティのことが好きです。どうか婚約を認めて下さい」
「私からもどうぞお願いします。レオナルド様を好きなのです」
「「え……??」」
祖父母は驚いたように顔を見合わせ……次の瞬間、2人は声を上げて笑った。
「ハハハハハハッ! お前たち、今更何を言っておるのだ?」
「ええ、そうよ。初めから私達は2人の婚約を勧めていたでしょう?」
レオナルドが申し訳無さそうに目を伏せる。
「はい。ですが……俺は最初カサンドラと婚約をしようとしていましたので……」
「私も、最初はレオナルド様との婚約の話に躊躇っていました」
すると、おじい様が尋ねてきた。
「でも、2人はお互いがどれほど大切な存在か気付いたのだろう?」
「はい、そうです。俺はレティを愛しています」
その言葉に顔が思わず赤くなるも……私もレオナルドの気持ちに応えたかった。
「わ、私もレオナルド様を愛しています……」
「レティ……」
レオナルドが私を見つめ、繋いだ手に力が込められる。
「よし、そうと決まれば休んではいられないな」
突然おじい様がベッドから降りてきた。
「まぁ! あなた! 起きて大丈夫なのですか?」
お祖母様が驚きの声を上げ、私とレオナルドは手を繋いだまま祖父に駆け寄った。
「おじい様!」
「おじい様! 起き上がって大丈夫なのですか!?」
「ああ、もう大丈夫だ。2人が婚約を決めたという話を聞いたら身体に力がみなぎってきたようだ。さっそく、今夜はお祝いをしよう!」
「ええ、そうね。あなた」
お祖父様は本当にすっかり元気を取り戻し、お祖母様と喜び合っている。
「おじい様が元気になられて良かったな、レティ」
2人の様子を見つめていたレオナルドが声をかけてきた。
「はい、レオナルド様」
そして、この夜。
グレンジャー家に仕える全ての使用人達に、私とレオナルドの婚約が決まったことが知らされたのだった――




