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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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11 初めての場所

「ところで、先程連れていきたい場所があるとお話されましたけど、どちらへいかれるのですか?」


馬車が走り出すと、早速向かい側に座るレオナルドに尋ねてみた。


「実は港近くについ最近、水族館がオープンしたんだ」


「水族館……?」


何だろう? 初めて耳にする。


「水族館というのは、海の生き物を大きな水槽の中で見ることが出来る場所なんだ。今、すごく流行している施設だ。大学でも最近話題になっている。……聞いたことがないのか?」


「はい……初めて知りました。海の生物と言うと、魚を見ることが出来るのですね?」


「魚だけじゃないぞ。イルカも見ることが出来るんだ」


「え? イルカですか? 私、今まで一度も観たことがないです。レオナルド様は水族館のことを良く御存知なのですね。ひょっとして行ったことがあるのですか?」


「いや、一度も行ったことが無い。レティと行くのが初めてだから、俺も楽しみだよ」


その言葉に、罪悪感がこみ上げてきた。


「……すみません」


「え? どうして謝るんだ?」


私の言葉に余程驚いたのか、レオナルドが目を見開く。


「レオナルド様が初めて水族館に行く相手が私だなんて……本当はカサンドラさんと一緒に行くつもりだったのではないですか? それで今まで行かなかったのですよね?」


「レティ……」


「私を元気づける為に、誘ってくれたことはとても嬉しいです。でも……カサンドラさんに悪いことをしてしまったみたいですね……」


「いや! それは違うぞ!」


突然レオナルドが強い口調になった。


「レオナルド様?」


「俺は、一番最初に水族館に行く相手はレティがいいと思っていたんだ。だから、今日は大学をサボってでも連れてきたかったんだ。……それとも、俺が相手では……嫌だったか?」


レオナルドが今まで見せたこともないような悲しげな表情を浮かべたので、慌てて否定した。


「え? ま、まさか! そんなはずありません! レオナルド様の気持ち、とっても嬉しいです」


「そうか。なら今日は何もかも忘れて……その、楽しんでみないか?」


躊躇いがちに問いかけてくるレオナルドに、私は笑顔で返事をした。


「はい、そうですね」



****



 レオナルドの言ったとおり、水族館は港の近くにあった。


真っ白で、とても大きな建物は青い空に良く映えた。やはりレオナルドの話していたとおり、人気のある施設なのだろう。

人々が入口に続々と吸い込まれていく。


「こんなに大きな施設が出来ていたのですね……少しも知りませんでした」


建物を見上げながら、隣に立っているレオナルドに話しかけた。


「港と言っても、離れた場所に建っているからな。それで気付かなかったのかもしれない。それじゃ早速中へ入ってみないか?」


「はい」


私達も早速、水族館の中へと入った。



****


カウンターでレオナルドがチケットを買う姿を、少し離れた場所で待ちながら辺りを見渡してみる。


水族館に来ているお客は若いカップルばかりだった。誰もが、仲良さそうに手を繋いでいる。


……やっぱり、ここはデートで訪れるような場所だったのだ。

いくら私を元気づけるためとはいえ、本当に私と一緒に来て良かったのだろうか?

このことがかサンドラさんの耳に入れば、きっといやな気持ちになるに違いないだろう。


そんなことを考えていると、チケットを買い終えたレオナルドがやってきた。


「お待たせ、レティ。……どうかしたのか? 何だか浮かない顔をしているぞ?」


いけない、レオナルドは私のことを元気づけようとして水族館に連れてきてくれたのに……。


「い、いえ。そんなことありません。ただ、大学を無断で休んだことに少し罪悪感を抱いてしまっただけですから」


「レティは本当に真面目だな。1日くらい、構わないだろう? それじゃ、行こうか」


「はい」


私は笑顔で頷いた。


今日だけは……レオナルドの気持ちに甘えさせてもらおう――

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