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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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21 レオナルド・グレンジャーの事情 ㉑

 馬車でレティの家に戻ってくると、祖母が家の中から出てきた。


「おばあさま、戻りました」


馬車から降りて、祖母に駆け寄ると意外な話を聞かされた。


「レオナルド、今日はレティをグレンジャー家に連れて帰るから」


「え? でも、レティシアは眠っていたのではありませんか?」


「いいえ、起きていたわ。熱も下がったし」


「だったら何故、さっきは……」


そこで言葉を飲み込んだ。祖母がじっと見つめているからだ。


「あの女性に遠慮してもらったのは、レティシアが病み上がりだったからよ」


「そうですか……」


その言葉に納得した。


「では、連れてくるからここで待っていて頂戴」


「はい、お祖母様」


すると祖母は一度家に戻ると、次にレティを連れて出てきた。

まだレティの顔色は良くなかったが、姿を見ることが出来てホッとした。

カバンを預かり、馬車に乗りこむとすぐに馬は走り出す。


馬車の中で祖母はカサンドラのことを尋ねてきた。名前や何処に住んでいるかを。

さらに、俺とカサンドラはどんな関係なのかと尋ねてきたのだ。


レティの前で、カサンドラの話はしたくなかった。思わず言葉につまると、レティが助け舟を出してくれた。

カサンドラは俺とレティが本当の兄妹だと思って、心配でお見舞いに来てくれたのだろうと語ったのだ。


祖母は俺とレティが兄妹の関係に思われていることに、かなり驚いていたがそこもレティは丁寧に説明してくれたお陰で祖母からの追求を免れることが出来たのだ。


レティ……。

まだ体調だって良くないのに、俺に変わって祖母に説明してくれるなんて。


やはり、レティは聡明で人を気遣うことが出来る心優しい女性だ。

だから俺はレティに恋をしてしまった。


叶うことのない、苦しい恋を……。



****



 屋敷に戻ると祖父は笑顔でレティを迎え入れた。そしてまだあまり顔色が良くないので夕食まで部屋で休むことをすすめると、思いがけない言葉を彼女は口にした。

俺に部屋まで送って欲しいと頼んできたのだ。


「え? 俺に?」


まさか、レティの方からそんな頼み事をしてくるなんて思わなかった。

戸惑っていると、祖父母は嬉しそうに笑みを浮かべて頷いている。

それに何より、レティからの申し出だ。


早速、2人で部屋へ向かうとレティが馬車での一件を謝ってきたのだ。

具合だって、まだ良くないだろうに申し訳無さそうに謝ってくるレティはとても健気だった。


レティに今、この場で思いを告げられればどんなにかいいのに……!

抱きしめてレティに「好きだ」と告げたい。だが、そんなこと出来るはずもない。


レティが好きなのはシオンなのだ。

俺がレティに気持ちを告げれば、困らせてしまうのは目に見えている。


場合によっては『リーフ』を出たときのように、再び今度はこの島を出ていってしまうかも知れない。


それだけは絶対にさせるわけにはいかない。

レティは祖父母の血の繋がった本当の孫娘。むしろ、出ていくのは養子であるこの俺だ。


これから先もずっと俺は自分の気持ちを隠していかなければならない。


だから……。

レティを抱きしめる代わりに、彼女の頭をそっと撫でると俺はその場を後にした――






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