14 レオナルド・グレンジャーの事情 ⑭
話の途中で、セブランの母親の体調が悪くなる事案が発生した。
だが、それも無理のない話だろう。何しろ、自分の息子が婚約者のレティシアを蔑ろにし、カルディナ家とは血縁関係も無いフィオナに夢中になっていたのだ。
挙げ句に息子がフィオナから罵倒されれば誰だって気分が悪くなるに決まっている。
するとシオンがカルディナ伯爵に次の話はイメルダ夫人とフィオナに関する話だけなので、セブランの母は帰った方が良いと提案してきたのだ。
セブランは自分が恋い慕うフィオナに酷い言葉を投げつけられ、すっかり生気を失っている。
これで少しはレティシアの気持ちが理解できただろう。
もうセブランに用は無い。婚約破棄も決定したし、きっと父親からも罰せられるだろうから。
そこで俺もシオンの話に同意した。
そして、セブラン一家は帰宅することになり……ちょっとした事件が起こる。
セブランたちが部屋を出て行くとすぐに、レティシアが最後位自分の言葉で挨拶がしたいと言って後を追って行ったのだ。
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セブラン一家とレティシアが部屋を出て行くと途端に室内は異様な雰囲気に包まれる。
フィオナとイメルダ夫人は一言も話さずに互いに目も合わせない。
そんな二人をカルディナ伯爵と、アンリ氏はじっと見つめているのだ。
だが、彼らのことはどうでも良かった。今、俺の頭の中を占めているのはレティシアのことだけだった。
最後、部屋を出て行った時のセブランの様子が気になった。どこか虚ろな瞳は尋常では無い。
思い余っておかしな真似をしないだろうか? そんな状況の中、レティシア一人きりで見送りに行かせてしまった。
「レティシア……大丈夫だろうか」
思わずポツリと口にすると、隣に座っていたシオンが声をかけてきた。
「レオナルドも気にしていたのか? なら一緒に様子を見に行かないか?」
「そうだな。行こう」
そこで俺たちは伯爵にレティシアの様子を見に行ってくると伝え、急いで彼女の後を追った。
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外に出ると、真っ先に驚きの光景が目に入った。
あの気弱そうなセブランがレティシアの腕を握りしめているのだ。それを見た途端、カッと頭に血が上るのを感じた。
「おい! レティシアから離れろ!!」
声を上げて駆け寄っていく。その後ろをシオンも追って来る。
勝手にレティシアに触れるな……! 彼女はお前のような男が触れていいような存在ではない!
「レオナルド様! シオンさん!」
レティシアが助けを求めるかのように叫んだ。その瞬間、シオンがセブランからレティシアを奪い返してくれた。
「僕のレティシアを返せ!」
何が僕のレティシアだ! 彼女はものじゃないんだぞ!
気付けばセブランの胸倉をつかみ、怒鳴りつけていた。
「何が僕のレティシアだ! いいか! レティシアは物じゃない! お前は一度、彼女を捨てた! 今度はお前がレティシアに捨てられる番だ! お前はあの女に捨てられたから、レティシアにすがろうとしているだけだろう!」
「ち、違う! レティは僕を捨てるはず無い! そうだよね!? レティ!」
そしてすがるような目つきでレティシアに訴える。
「もう……終わりよ! 二度と私に関わらないで!」
はっきり拒絶の意を表したレティシアに、セブランはあろうことか逆切れしてきた。レティシアが自分を捨てたのは俺のせいだと言ってきたのだ。
その上、殴りつけてこようとしたが……これでも俺は体を鍛えている。
軽々と避け、代わりに殴りつけて返り討ちにして二度とレティシに近付くなと怒鳴りつけると逃げるように走り去って行った。
かわいそうに…‥レティシアはすっかり怯えていたが、礼を述べてきた。
良かった。レティシアを守ることが出来て。
これから先も、彼女をずっと守っていこう。
俺は心に誓った――




