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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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26 レオナルドの意思

「カサンドラさんと……婚約、ですか?」


「ああ」


私の言葉に頷くレオナルド。

そんな話は初耳だった。大体祖父母は私とレオナルドを婚約させようとしたのに、いつの間に相手がカサンドラさんに変わっていたのだろう?


「そ、その話……いつ決まったのですか?」


恐る恐る尋ねてみる。すると意外な答えが返ってきた。


「まだ決まったわけじゃないんだ。それとなく……婚約の申し出を彼女にしてみようかと思っているだけだよ」


「え? そうなのですか?」


てっきり、決定事項だとばかり思っていた。


「では、カサンドラさんはまだ……その話、知らないのですね?」


「そうなるかな? だが、以前から彼女が俺に好意を寄せているのは分かっていた。入学した当時から、何かとオレに声をかけてきていたし……」


そこで一度レオナルドは言葉を切る。


「大学で大きなパーティーイベントがあったときには、必ず俺にパートナーを申しこんできた。特に決まった相手はいなかったから、引き受けていたんだ。長期休暇でカサンドラが帰省するとき、何度か一緒に家に来てもらえないかと頼まれたこともある。……流石にその時は断ったけどな。そんなことをすれば、彼女の親に誤解されてしまうだろう? 娘と結婚する気があるのだろうかと」


「そんなことが……あったのですか……?」


レオナルドの言葉を解釈すると、カサンドラさんとの仲を誤解されたくないと言っているように聞こえる。


「グレンジャー家が俺を養子として引き取ったのは、この家の跡継ぎが必要だったからだ。ゆくゆくは祖父母が決めた相手と結婚することになるのだろうと思って、カサンドラの誘いを今までは断っていたのだが……」


そしてレオナルドはじっと私を見つめてきた。


「レティ、祖父母から提案されたのだろう? 俺と婚約する話を」


その言葉に息を呑み。まさか、レオナルドは……?


「知って……いたのですか……?」


「ああ、勿論」


「い、いつから……ですか?」


うつむき、スカートをギュッと握りしめる。


「いつから……か。そうだな、多分レティがグレンジャー家の養子になった頃から……かな?」


「え……? そ、そんな前から……ですか?」


「あ、でもそのときは冗談めいた言い方だったから、俺も別に気にしてはいなかった。2人が一緒になってくれれば、グレンジャー家は安泰なのにと言われただけだから。別に本気には捉えていなかったよ」


レオナルドは慌てたように言葉を付け足してきた。


「だけど、つい最近になって……正式に祖父母から問われたんだ。レティと婚約して、2人でこの家を守って欲しいって。そのときになって、あの言葉は本気だったのだということに気づいたんだ」


「……」


私は言葉が出てこなかった。やっぱり、レオナルドも祖父母から言われていたのだ。だけど……。


「レティはシオンのことが好きなのだろう? それなのに俺との婚約の話なんて持ち出されても困る話だと思う。レティが乗り気じゃないから、俺から説得してみるように祖父母から頼まれていたんだよ」


淡々と語るレオナルド。けれど、その表情はどこか苦しげだった。


「俺は元々養子として引き取られた以上、祖父母の望む相手と結婚しようと考えていた。だが、それも相手の気持ちを尊重した上でだ。レティが望まないなら、祖父母の言うことを聞くわけにはいかない」


「レオナルド様……」


追い詰められていたのは私だけではなかった。それどころか、レオナルドのほうが私よりもずっと追い詰められていたのだ。


祖父母には少しも悪気がないのは分かっている。

私はグレンジャー家の血を引いている。そして、レオナルドはこの家の養子。私とレオナルドが結婚するのが一番良いと考えるのは当然だろう。

祖父母に限らず、誰だってそう思うに違いない。


でも私が好きな人はシオンさんだ。

まだ彼に気持ちすら告げていないし、シオンさんが私のことをどう思っているかなんて分からないのに。

それどころか好きな女性がいるかも知れないし、婚約者がいる可能性だって……。


絶望的な気持ちが込み上げてくる。


すると――


「大丈夫だ、レティ。そんな顔するな。俺がなんとかするから」


「何とかするって……?」


自分の声が震えてしまう。


「祖父母の話は忘れていい。俺はカサンドラに婚約の申し出を入れるから。彼女は大学在学中に自分の結婚相手を探していることは承知している。きっと、俺の申し出を受けてくれるはずだ。これなら全て丸く収まるだろう?」


レオナルドは笑顔を見せるけれども……その顔はどこか悲しげだった。


今のレオナルドは、セブランから婚約の申し出を受けたときの自分と何故か重なって見えた――




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