3 新しい友だち
講堂にはクラス名簿が張り出され、私はAクラスとなっていた。
「Aクラス……クラスは2つにしか分かれていないのね」
講堂にはAクラスとBクラスに分かれて座るように札が立てられていた。既に席は半数近くが埋まっている。そこで私もAクラスの椅子に移動した。
「あの、こちらの席、よろしいですか?」
隣に座る栗毛色の女性に声をかけた。
「ええ、どうぞ。……あら? あなたは……」
「え? 私が何か?」
席に座ると、じっと女性を見つめてみた。……けれど、やはり知らない顔だった。
「さっき、講堂の前で男性と立っていたでしょう? とっても素敵な人だったわ。もしかして恋人なの?」
急に砕けた様子で話しかけてくる女性。
「あ、あの……?」
「あ、ごめんなさい。そう言えば自己紹介もまだだったわね。私はノエル・シューマン。あなたの名前を教えてくれる?」
明るい笑顔のノエルは何処か、ヴィオラを思い出させる。もしかすると、彼女なら良い友人関係を築けるかもしれない。
「私はレティシア・グレンジャーよ。よろしくね」
「そう、レティシアというのね。こちらこそ今日からよろしくね。それで早速だけど、さっきの男性は誰なの?」
「あの人は……私の兄なの」
大学内では私とレオナルドは兄妹。自分の中で言い聞かせる。
「まぁ! お兄様だったのね? 名前は何というの? この大学の人なのかしら?」
「名前はレオナルドよ。今大学3年生になるの」
「そう! 同じ大学だったのね? あんな素敵な人がお兄様なんて羨ましいわ〜」
ノエルはため息をついている。……確かに、レオナルドは美しい顔立ちをしている。女性たちの目に止まるのも無理はないだろう。
「ねぇ、レティシア。今度機会があったらお兄様を紹介してくれるかしら?」
一瞬、カサンドラさんの姿が頭に浮かぶも……紹介するぐらいなら……。
「ええ、そうね。いいわよ」
「本当? ありがとう! でも良かったわ、同じ学部に女子学生がいて。ほら、この大学ってかなり小規模じゃない? それで……」
どうやらノエルはかなりおしゃべりが好きな女性のようで、式が始まるまで彼女の話はやむことは無かった。
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「ねぇねぇ、レティシアは寮生活をするの? この島の大学に通っている学生はほとんど島外から集まってくるから大抵の学生たちは寮に入っているのだけど」
入学式が終わり、講堂から出るとすぐにノエルが話しかけてきた。
「いいえ、私は寮には入っていないわ。一軒家を借りて住んでいるの」
「え? それじゃお兄様とは一緒に暮らしていないの?」
「え、ええ……そうなの。大学に入ったら一人暮らしをするのが夢だったから」
当たり障りのない言葉を返したとき。
「レティ!」
不意に名前を呼ばれて振り向くとレオナルドが手を振り、笑顔を向けて近づいてきた。
「レティ、入学式が終わったようだな」
「あ、レ……お兄様」
「はじめまして! レティシアのお兄様ですか? 私はクラスメイトのノエルと申します」
ノエルが元気よくレオナルドに声をかけた。
「あ、はじめまして……レティの兄のレオナルドです。……もう友達が出来たのか?」
レオナルドが私の方を向く。
「はい、そうです」
「それは良かったじゃないか。実は、もうそろそろ式が終わる頃じゃないかと思って、様子を見に来たんだ。俺でよければ1年生の校舎まで案内を……」
すると――
「レオナルド、ここにいたのね」
声の方を振り向くと、カサンドラさんが駆け寄って来る姿が見えた。
「あ、ああ。そろそろ入学式が終わる頃だと思って……」
「そうだったのね。本当にレオナルドは妹思いね。こんにちは、レティシアさん」
笑顔を向けるカサンドラさん。
「はい、こんにちは」
「いよいよあなたも今日からこの大学の学生ね。これからよろしくお願いするわ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
挨拶を返すと、次にカサンドラさんは隣に立つノエルに視線を移す。
「それで、こちらの方は……?」
「は、はい。同じ新入生のノエル・シューマンと申します。レティシアさんとクラスメイトになりました」
「そうなのね? 2人とも、もう友達が出来たのね。良かったじゃない」
「「はい」」
2人声を揃えて返事をする。
「それじゃ、行きましょう。レオナルド」
カサンドラさんがレオナルドの手をとった。
「え? だが、俺はレティに……」
「もうすぐ3年生のオリエンテーションが始まるわ。早く行かないと」
「レティ……」
私を見るレオナルド。
「お兄様、私なら大丈夫ですから」
「ほら、レティシアさんもああ言ってるでしょう?」
「分かった……すまなかったな。案内が出来なくて」
カサンドラさんに急かされたレオナルドは私に謝り、2人は去っていった。
「それじゃ、私たちも行きましょう」
「レティ……」
ノエルが声を震わせながら私を見る。その瞳はうるんでいた。
「ど、どうしたの!? ノエル」
「私……早速振られてしまったみたいだわ……」
「え……?」
「だけど、諦めるわ。だって、あの2人本当にお似合いだもの。さて、それじゃ教室に行きましょう?」
「え、ええ。そうね」
切り替えの早いノエルと共に、私は1年生の校舎へ向かった――




