29 父の説得
――コンコン
おじい様とおばあ様のいる部屋の扉を私はノックした。
「おじい様、おばあ様。私です」
すると、すぐに扉が開かれて祖父が顔をのぞかせた。その背後には祖母の姿もある。
「レティシア。話し合いは終わったのか?」
「はい、終わりました。父が応接間で待っています」
「そうか。ならすぐに追い出そう。もう二度と、我らに近付くなとな」
「え? あ、あの」
その言葉に戸惑っていると祖母がため息をついた。
「あなた……落ち着いて下さい。先程、わたしたちで話し合った事を忘れたのですか?」
「う……そ、それは……」
言葉をつまらせる祖父。一体どうしたのだろう?
「あの、何かあったのですか?」
「いいえ、何でも無いのよ。さ、それでは応接間に行きましょう。まだフランク氏がいるのでしょう?」
「はい、おばあ様。……父からおふたりに大事なお話があるので、もう一度会って頂けますか?」
私は祖父を見上げた。
「……他ならぬお前の頼みだからな。仕方あるまい」
そして祖父は私の頭をそっと撫でた――
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祖父と祖母を連れて応接間に戻ると、ソファに座っていた父が素早く立ち上がった。
「もう一度、会って頂きありがとうございます」
「ふん。レティシアの頼みだからな。そうでなければ、誰が貴様の話など……」
「あなた。レティシアの前ですよ」
祖父の言葉を祖母がたしなめる。
「……それで? 我らにどんな話があるというのだ? まだ何かいいわけでもするつもりか?」
ソファに座ると、早速祖父が父に尋ねてきた。
「いいえ、言い訳なんてとんでもありません。全ては私の不徳の致すところです。本当にお詫びのしようもありません」
父が申し訳なさげに目を伏せた。
「なら、今度はどんな話があるというのだ? まさかレティシアを連れ帰るとでも言うつもりか? そんなことは絶対に認めないからな! お前のような毒親に可愛い孫娘を渡すものか!」
「あなた、レティシアの前で言い過ぎですよ!」
再び祖母がたしなめる。すると祖父がちらりと私を見ると、再び父に視線を移す。
「……まぁいい。とりあえず話を聞こう」
腕組みする祖父。
「ありがとうございます、グレンジャー伯爵。私はこれからするべきことがあるので、『リーフ』へ帰ります。……そして一週間後、レティシアをカルディナ家に戻して下さい」
「何だと! 貴様……たった今私の言った言葉を聞いていなかったのか! レティシアは渡さないと言っただろう!」
「あなた! 落ち着いて下さい! レティシアの意見も聞きましょう!」
祖母の言葉に祖父が私を見た。
「レティシア……本当に一週間後、『リーフ』へ戻るつもりなのか?」
「はい、おじい様」
「何故戻るのだ?」
そこで私は父と話し合った話をすることにした。
「まず、一度カルディナ家へ戻るのは婚約者との婚約を破棄するためです。私はもう二度と彼とやり直すつもりはないからです。そのことを彼に自分の口で告げるためです。彼の御両親にも直接会って話をしなければ失礼に当たりますし」
「……確かにその通りだが……そんな不義理な男には手紙で告げれば良いのでは無いか?」
すると今度は父が口を開いた。
「他にもまだ理由はあります。今、カルディナ家に居座る女とその娘を追い出す手はずが一週間後に全て整います。ルクレチアと娘を苦しめてきたあの二人が出ていく様をレティシアにも立ち会って見届けてもらい……安心させてやりたいのです」
そして父は私に視線を移した――




