野宿していました
本日2話目!!
前話の後書きの予定とズレたので、そこを先にお詫び申し上げておきます。
SIDE里宇
森を抜けたのはいいが、もうじき日が暮れるという事で里宇たちは野宿をすることにした。
この世界には、しょっぱなから襲ってきたようなおっさん…盗賊もいるし、モンスターもいる。
現代日本のような治安の良さはなく、あるとしても街中など限定だそうだ。
その為、各地を行き来する商人などは護衛を雇ったり、自衛のために鍛えている人が多いそうで、真夜中の野宿でも交代制で見張りをして奇襲をあらかじめ防衛しておくらしい。
「…という話は、当時の友人が言っていましたからね。森の外に久し振りに出ますので今はどうなのかはわかりませんが、とりあえず用心しておくには越したことがないかと」
「それで、ハクロだけは夜中ずっと起きることにするのか?」
「はい。どうせ睡眠をとるのもリラックスする程度でしたし、そもそもリッチになった私にはたしなむ程度のことですからね」
交代で起きて見張りをしようという話を出したところ、ハクロが自らずっと起きると言い出した。
「まぁ、そもそも私は寝相が悪いので…」
申し訳ないように眼をそらすハクロ。
「そんなに悪いのか?家に宿泊させてもらった時には何もなかったようだが」
「その時は、途中で起きているんですよね。今日この森を抜けるまでの準備として家の掃除を一晩中していたんです」
薬品棚の空瓶の整理程度らしいが、ほとんど寝ていなかったようなものらしい。
「そうなのか…それじゃあ、寝ている間の見張りを任せるけどなんか悪いな」
「大丈夫ですよ。主を得たことが私の喜びのようなものですし、里宇さんはゆっくりと寝てください」
そう言われたので、里宇は眠りにつくことにしたのであった。
なお、野宿故に適当な葉っぱを集めて体を冷やさないようにシーツ代わりにする程度である。
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SIDEハクロ
星空が広がり、あたりに静寂が訪れる中ハクロは起きて見張りをしていた。
リッチというモンスターになって以来、彼女は特に睡眠を必要としなかった。
もともと人間だった時も実験に明け暮れて寝なかったこともあったが、それでも肌荒れなどが起きなかったのは女友達にうらやましがられたものである。
…ハクロは生前の自分の行為や森に棲む以前にどこでどのように生まれたかなどの記憶はある。
けれども自分の名前は忘れていた。
モンスターとなった時に必要が無くなったのか、それとも自分をその名前で呼ぶ者たちがいなくなったからか。
それはわからない。だが、その生前の名前は彼女にとっては何処か必要がなかったようなものに思えた。
今はこうして、主を得た従魔となり「ハクロ」という名前をもらえている。
それだけでも、彼女は満足であった。
リッチになって300年…元から人と積極的に関わるようなことはしなかったが、それでも彼女は孤独を感じていた。
生きていた時には、研究なんてやめて嫁に来いとかいうような輩もいたが、興味がなかった。
自由気ままに生きていたい。けれども、誰か本当に心が安らぐような人と共に居たい。
なぜそう安らげるような相手を求めるのかは彼女はわからない。
ただ、本能的にというか、魂から誰かを求めていたのだろう。
そして、こうして今は従魔として…本当に一緒にいて心が安らげるような人物、里宇に彼女は出会った。
最初、あの森の中で姿を見たときは話し相手を欲しているように見えたのでその相手になってあげようと思っただけだったのだが…もしかしたら、その時すでに自分は惹かれていたのではないだろうか。
里宇が異界人として、この世界に来たその時から、彼女のその足りていなかった心の歯車に、何かがはまって動き出したのかもしれない。
運命とは数奇なモノであり、いついかなるようにして動くのかはわからない。
けれども、こうして惹かれるようなものに巡り合えたのは・・・・神に感謝するようなことでもあるのだろう。
そう思いながら、横で寝ている里宇の顔を見て、ハクロは愛しく思えて微笑んだのであった。
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SIDE里宇
翌日、起床してとりあえずこれから先何処に向かうかを里宇はハクロとともに話し合うことにした。
「ハクロに遭う前におっさん共に絡まれて返り討ちにして聞き出したけど、森を抜けた先には街があるらしい」
「何て名前の街ですか?」
「『サバンの街』だとか。そのおっさんたちが一度襲撃をかけようとしたらしいが、それで返り討ちに遭って逃げていた矢先に…」
「里宇さんに出くわして、それでまたやられる…あわれというか、滑稽ですね」
やれやれと言うように二人はそのおっさんを考えると肩をすくめた。
「にしても、サバンの街ですか。300年ほど前に森の近くにあったのはサバン村だったはずですが…発展したんですかね?」
「それだけ年月が経っていれば発展もするだろうな。村から街というレベルはどうなのかと思うが」
正直いって、そこまで発展していない可能性も里宇は考えた。
異界人とかいう里宇のように異世界に転移してきた人がいるのだが…物事急速に変わることはない。
というか、変えようにもうまいこと行かない可能性の方がある。
ない事にもこの世界でのやり方というのもあるし、内政チートとか試そうとしてやらかすような人もいるだろう。
そう言う事から慎重になって、発展が遅い場所もあるだろうと、里宇は思うのであった。
「そういえばふと思ったんだが、そこへ行く前に聞こうと思っていたんだった」
「ん?なにかあるんですか?」
「いや、ハクロって魔法を使うけどさ、俺にも魔法って使えないかなと」
できれば自衛の手段は増やしたい。
そう言う人口が多くなりそうな場所には、テンプレのような輩もいる可能性がある。
「魔法ですか…これって先天的なものと後天的なものがあるのですが…まぁ、道中で話しながら向かいましょうか」
そういうと、サバン街に向かいながらハクロは魔法についての説明をしていくのであった…
次回こそようやくこの世界での魔法についての、ハクロの講義である。
リッチとなった今、ハクロ自身もそのことで再確認しながらでもあるようだが・・・・・
次回に続く!!




