森の小屋につきました
ふとたまに思うようなこともちょっと混ぜました。
リッチという種族の女性に里宇が案内されたのは、森の奥深くにたたずむ一軒家であった。
ログハウスのようにも見えるけど、ところどころつぎはぎのような跡がある。
「実験をして火事になったりして、そのたびに修理していたんですよね・・」
「魔法とかがあるのなら、簡単に修理が出来そうなものだけど・・」
「魔法と言っても万能ではありませんよ。不可能だってありますからね」
まぁ、なんでも万能だったらそりゃ何も困るようなことはないからな。
「さてと、あそこにあるのが私のベッドで、リッチとなった今でも使用しているのですが、向こうの方に客人用の物がありますよ」
「・・・あれ?客人用の方がなんかしっかりとした作りになっていないか?」
リッチの彼女が指さしたベッドを見比べてみると、彼女が使っているという物よりも、客人用の方がどこかしっかりとした造りになっているように感じられた。
「一応、私はそこまで睡眠を必要としなかったんですよね。なので自分の寝床は適当にして、時折訪ねてくるような友人たち用にベッドをしっかりとしたものにしたんですよ。・・・まぁ、長い年月がったのでもうその友人もいませんけどね」
そうつぶやく彼女の顔は、何処か寂しそうなものだと里宇は感じた。
「まぁ、ここで一泊してください。久し振りに人に遭えたのはうれしいので」
寂しげな顔から切り替わり、どこか人に会えてうれしそうな顔を彼女はしたのであった。
せっかくなので、寝るまでちょっと細かい互いの身の上話をすることに里宇はした。
「なるほど・・・よくわからないままに里宇さんはこの世界に来たという事ですか」
「普通ならそういうやつのことを頭がおかしい奴とか言いそうだが・・・何も言わないのか?」
「言いませんよ。人間からリッチというモンスターになったせいか考え方も変わりますし、ごくたまにですが、そういう人はいるらしいですからね」
「え?」
意外な発言に、里宇は目を丸くした。
聞くと、里宇のように異世界から人が来る事というのは・・・・・極稀にだがあるらしい。
「この世界ではありえないようなことを言ったり、誰も知らないような技術を伝えたりするので、そう言った異世界から来たという人を・・・・『異界人』というそのまんまの言い方をしますね」
「極稀にいるのか」
となれば、里宇も同じようなモノなのかもしれない。
「はい、ちなみにですが自分が異界人だという虚偽はできないんですよ。なんというか、異界人の人には独特のオーラとでもいうんでしょうか・・・雰囲気がどうしてもこの世界の人とは違うというのを分かるんですよ」
そのせいで、実は最初から目の前にいるリッチの彼女も里宇が異界人だと気が付いたらしい。
だったら最初のあのおっさんたちは・・・・・あれか、そういう知識がなかったからか、違和感があってもバカだったから深く考えなかったのか。
一応国によっては召し抱えて保護したりして、そのいかに知識などをもらい、活かして国の発展に利用したりするらしい。
「でも、中には異界人を受け入れない国がありますね」
「どういうことだ?」
「急激な技術の進歩を嫌うというのもありますが・・・・かつて問題を起こしたこともあるんですよ」
昔現れた異界人の中にはいろいろやらかしまくった人がいたらしい。
好き勝手し放題で、国の利益になるよなことどころか、国にとってやばいことまでした人もいたそうである。
「獣人の姫にケモミミばんざーいとかいって飛び込んだ変態とか、奴隷に対して様々な行為を強要する奴隷王と言われた人や、中には婚約者がいる相手を寝取って王家の崩壊を招いた者・・・なんてありますね」
何をやっているのだろうか先人の異界人たちは。
「なんか左腕に封印されし邪龍がいるとか、目が悪くないはずなのに眼帯をして何もかも見えるのだとか、簡単な説明をわざわざ小難しく説明したりとか・・・・」
ああ、中二病ってやつか。
かつてその時代があった里宇としては、似たようなことをやった覚えがあるので、元人今モンスターに言われてもなんか恥ずかしさを感じた。
当時の自分を殴って止めたいと密かにも里宇は思っているのである。魔法とかがある世界ならば、そう言う事が出来る方法はないだろうか・・・・・
「そして、中には本当にあり得ないような力を持っていた人がいたようで、兵器のように扱うための奪い合いの、争事にまで発展したことがあるんですよね」
「チート能力のようなものによるせいか・・・・」
本当に先人の異界人たちは何をやらかしているのだろうか。
里宇はそう心の中で呆れたように思ったのであった。
「その為、受け入れる国、受け入れない国ができたので・・・異界人が来た時は、その国によっては悲惨な末路に・・・」
「今いる場所は大丈夫なのか?」
何やら不吉そうな声で言われたので、里宇は尋ねた。
「ああ、私この森に籠ってから・・・そしてリッチになってからも計算して300年以上経っていますからね。どうなっているかの細かい情勢は流石にわかりません。ですが、最期に確認した時は大丈夫でしたね」
300年以上という年月が変化を及ぼす可能性もあるが、今のところは・・・・おそらくそうだろうと里宇は思った。というか、そう思いたい。
「にしても、それだけ長い間森の中に籠りっぱなしだったのか?」
「ええ、森の外に出ませんでしたね」
つまりは互によく知らないようなものである。
「森の外に出ていこうかと考えてもいましたが・・・・さすがに今は私はモンスターです。半透明で生前とほとんど変わらない姿とは言え・・・誰にも仕えていないような野生のモンスターですからね。モンスターを従えさせる魔物使いなんて人達がいますけれども、そんな人が都合よく来るわけもありませんし・・・・野生のままだと、いつの日か欲深い者達に討伐されてしまう可能性があるんですよね」
この世界にはモンスターという存在がいる。
いわく、大抵が人に危害を加えるようなものであり、彼女のようなリッチというモンスターの中にも危害を与えることがあるので・・・討伐されることがあるのだとか。
討伐するのは冒険者と呼ばれる職業の人だったり、モンスターから取れる素材を目当てにした商人だったり、国だったりもするそうだ。
そんな人達がいる中で、モンスターだけが平穏無事に暮らせるだろうか?
否、平穏な暮らしを望んでいても、主がいないようなモンスターには襲ってくるような輩がいるそうだ。
「なので、私としてもいつの日か主が来てこの森という牢獄の中から解き放ってくれる人を待っているんですよね・・・」
主がいなければ、モンスターは人と共に暮らせないらしい。
けれども、彼女には主がいないから・・・・人に会いたくてもそう簡単にはできない。
「集団で群れを作って何とかなっているのもいるそうですが、私は一人。元は人間なのですが・・・・今は、リッチというモンスターなんですよ・・・」
そう寂しげな顔で、彼女はそうつぶやく。
・・・・そんな涙を流しそうな相手を放っておけるか?
いや、手助けしてあげたいと里宇は思った。
「・・・・あのさ、俺が主となることができないのか?」
そして、里宇の口からついその言葉が出た。
「・・え?」
「主無しがダメなら、俺が主となってお前を森の外に出す。その代わりに、これからの生活の手助けをしてくれるならいいかなって・・」
異世界であるこの世界の事をまだよく里宇は知らない。
ならば、ずっとこの森に引きこもっていたとはいえ、ある程度なら知っていそうな彼女がともにいればいいんじゃ・・・・
里宇の本心から出た言葉でもあり、偽善からではなく本当に彼女の事を持っての言葉。
そのことが理解できたのか・・・・リッチの彼女は少し考えて・・・・微笑んだ。
「・・・良いですよ。そうしたいなら私はあなたに仕えましょう。異界人というならまだよく知らないこともあるでしょうし、ここであったのも何かの縁ですからね」
それは仕えてくれるという返事であった・・・・・・
今までのシリーズで呼んできた人ならわかるだろうけど名前はやっぱりというか、作者のシリーズでお決まりのである。種族変えているけどね・・・・・




