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黒歴史を暴露された人ってこんな感じなのだろうか

大まかなイメージです

「グロウリア=デルベスタ」

300年以上前の、デルベスタ王家の王女だった人物。

「だった」と過去形で表現されているのは、ある理由によって王族から除籍されて臣下に下ったからである。

しかし、除籍後、かねてより興味のあった薬剤などの実験に手を出して、世の中に役に立つ物を数多く生みだし、また本人は無自覚でなおかつ自身を卑下しているようなところがあったが、その美貌と膨大な魔力の量から「稀代の美魔女」と呼ばれていたそうである。

ただし、実験に失敗して爆発を繰り返し、破壊した者の数が計り知れず、ある森の奥に居を移して以来消息は行方知れずとなっている。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「‥‥‥まじか」


 ヘンリエッタとタナカと言う二人組から受け取った歴史書を読み終え、里宇(りう)達は驚愕していた。


 そもそもの話、グロウリア‥‥‥今の名前はハクロであるのだが、リッチになった経緯を考えても矛盾した話でもないのだ。


 リッチと言うモンスターは、元々高名な魔法使いや神官が何かしらの理由があってなると言われている。



 ハクロは自身をそこまでたいしたことがない人だったといっており、薬品をかぶってリッチになっていたというが……本当に、それだけでリッチになれるものだろうか?


 歴史書に書いてあった通りの人物であるならば、その薬品がなるきっかけに過ぎないのではなかったのだろうか。



「という事は、元からハクロにはリッチになるだけの素質があったという事か」

「スゴイネン」

『でも、今までこういう話をしてこなかったけど‥‥‥あ、´・ω・)』


コンゴウのつぶやきに、ふとハクロの方を見てみると‥‥‥


「あぅぅうぅぅぅぅぅうぅうぅうぅ」


 ものすっごい悶えていた。


 どうやら自身の過去がさらけ出されることが恥ずかしいようで、多分原因として最もはっきりしているのは‥‥‥


「稀代の美魔じ、」

「それやめてくださいよぉぉぉぉ!!私だって今知ったばかりですけど、そう呼ばれていると知ったらなんかはずかしいんですってばぁぁぁ!!」


 己が望んでいなかった二つ名がついているのが、どうも恥ずかしいらしい。


 顔を真っ赤にさせて涙目になっているが‥‥‥黒歴史を暴露させられた人の様な感じだろう。



 同情はしたい。人は誰でも何かしらの黒歴史は持っているのだし、それがこの形で親しい人たちにさらけ出されたらそれこそ拷問であろう。



「って、ハクロが元王女のグロウリアと言うのはわかったけどさ、この事実を確認して何になるんだ?」


 ふと、先ほどから忘れていたタナカとヘンリエッタの二人に、里宇はそう問いかけた。


「ああ、本人だと確認でき次第、実はある事を聞くように我々は王命を受けているのだ」


 王命?どう考えてもなんか巻き込まれそうな、面倒ごとにしか思えないような‥‥‥






「グロウリア王女殿‥‥‥いや、今はハクロ嬢、貴女に尋ねたいことがある」

「ふわぁぁあ‥‥‥あ?もう少し待ってください」

 

 悶えていたハクロが尋ねられたことに気が付き、少し待って落ち着いてからたたずまいをきちんと戻した。



「300年以上前、貴女が王族から除籍された原因を覚えているだろうか?」

「えっと‥‥‥ずいぶん昔の事ですが、確か婚約破棄がきっかけでしたね」

「え!?ハクロって婚約していたの!?」

「破棄してますよ。むしろしたかったので都合がよかったというか、なんというか‥‥‥」



 ハクロは語りだす。


 300年以上前、ハクロがまだ王女としていたころに国王である父親が勝手に決めた婚約。


 隣国の王子が相手だったようで、いわゆる政略結婚のような形にされていたらしい。


 それを、ある日その相手の婚約者が破棄を突きつけて来たそうなのだ。


 理由としては、ある公爵家の令嬢を好きになってしまい、婚約を破棄しようと考え付いたのがきっかけらしい。


 で、ハクロはハクロで‥‥‥当時はグロウリアと言う名前だったのだが、元々臨んだ婚約でもなく互いに父親の方に話をして、無事に婚約を破棄したそうな。


 ついでに、ハクロはせっかくの機会なのでついでに王族籍を抜けることにそもして、手続きを経て抜けたそうなのだ。


「だって王族籍の時って、様々な習い事などをさせられるんですよ。舞踏会のマナーやダンスの踊り方、刺繍に淑女らしい歩き方、王族らしい話し方と言った具合に窮屈で‥‥‥幸い、自力で何とか生活をできるほどには力がついていたんですよね」


 とはいえ、仮にも一国の王女が自ら望んで王族から降りるというのは、当時の王族たちには妙なプライドがあったそうで、そう軽くされてはたまらないと考えたらしい。


 その為、「除籍を望んだ」ではなくて「除籍を言い渡された」として、王女が自らではなく何かをやらかして除籍されたようにして、王族は何かのミスがあったら見逃さないようなことを世間にアピールしたそうな。





「まぁ、当時から実験にこっそりはまってまして、ある時城の一角を爆破したことがあるのでそれが原因と言えるでしょうね」


‥‥‥正当な理由がちゃんとあったよ。思いっきりそれが原因だよ。


 もう確実に「自ら」ではなく「王族からの命令」で除籍する材料になるよね?


 というか、その時から本当に何をやっているのハクロや?





「でも、その事を聞いて何になるのでしょうか?私はもう人間やめてリッチであり、里宇さんの従魔になっているのですが‥‥‥」

「ああ、その事だが当時婚約破棄をした相手の王子‥‥‥歴史書ではゼボン=ソイリアとなっているのだが、当時を知る貴女なら、そのフルネームをご存じないだろうか?」

「え?フルネームって確かデボン=ナバーギア第1王子でしたよね?」



 歴史書では「ゼボン=ソイリア」、ハクロの話では「デボン=ナバーギア」‥‥‥名前が異なっている?




「なるほど、やはりそうか」

「となれば、あの王家は‥‥‥」

「え?何かあるんですか?」


 タナカとヘンリエッタが互いに確認するようにつぶやき、里宇たちは尋ねた。


「当時グロウリア王女、今ではハクロ嬢だが、その相手の王子がいた国そのものはずっと変わっていないとされる国なんだ」

「王族の名前には代々その国名が受け継がれるのだが、他国の方はわが国では特に干渉しないのでいつの間にか変わっていてもおかしくはない」

「ただ、その隣国だがどうもどこかで王族の強制的な交代が行われたようでな、その証明をしたくてこうして接触してきたのだ」


 つまり、過去の情報を持っているかもしれないハクロから、その情報を聞き出したかっただけなのだろう。


「この情報を得るためだけの事でしたので、お手数をおかけしました」

「それでは、我々はこれで失礼いたします」


 そう言って、タナカとヘンリエッタと名乗る二人組は、その場から離れたのであった。



「結局、その情報を聞きたかっただけか‥‥‥稀代のび」

「もう言わないでくださいよ里宇さん!!」


 からかって言う前に、ハクロは涙目でそう訴えるのであった。


‥‥‥しかし、これで本当に終わりなのか?


 ただ情報を得ただけにしては、あっさりしすぎているような‥‥‥



情報を得るだけで終わりか?

いや、そうではないだろう。

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