一夜明けて
本日2話目!!
SIDE里宇
「で、案の定真夜中にこいつらが襲撃してきたが……どうしようか?」
一夜明け、昼食を作って食べた後、里宇たちは昨夜捕えた騎士たちをどうしようかと考えることにした。
案の定というか、やはりルンを狙っての短絡的な馬鹿らしい襲撃を仕掛けてきて、ものの見事に返り討ちにしたのである。
なお、俺は全く働いておらず、ハクロたちだけでぶっ飛ばしていたが。
何しろ集団で襲撃して来たそうだが、その時点てやらかしていた。
ハクロがその集団の中心めがけて魔法を放ち、まずは一気に隊列を乱させ、遠距離から一方的にバンバン当てまくる。
そして、逃げようとしたり、諦めずに攻撃を仕掛けようとしたやつらには、ヘヴィーミミックのコンゴウが自身の重量を活かして、やや加減して押しつぶして気絶させた。
また、ドッペルゲンガーのルンは、どうやらあのハンマーズの持っていた武器にも化けることができたようで、自らを巨大なハンマーに変えて叩き潰していたりと、やりたい放題であった。
空から巨大ハンマー、棍棒、メイス、モーニングスター‥‥‥バリューションが豊富だった。
受ける側にとっては地獄であろう。同情はしないが‥‥‥いや、恐怖はちょっとだけ同情するかな?
ほぼ蹂躙に近い形で沈黙させたのち、縛り上げて一晩経過したが‥‥‥どうしようかね?
「こういう夜盗の襲撃ってどうするのが良いんだっけ?」
「そうですね‥‥‥通常襲撃を受けて生け捕りに出来たらギルドに引き渡したりもできますけど、この場でボキッとあの世送りにしても問題ないでしょう」
里宇の質問に、ハクロは少し考えてからそう口に出す。
ボキッって、首をへし折るのか?
「待て待て待て待て!我々はゼクストリア騎士団だぞ!!つまり国に仕える騎士たちを亡き者たちにしてタダで済むと思っているのか!!」
「情報提供ありがとうございます。つまりハンマーズとの決闘でズタボロになっていた奴らが、性懲りもなく襲撃を仕掛けてきたという事ですよね」
「ザソコーク隊長!?何をばらしちゃっているっすか!?」
「黙っていればまだよかったですよね!?」
其の会話内容を聞き、慌ててリーダー格らしい騎士が声を荒げる。
なるほど、あのリーダー格の奴の名前はザソコークってやつか。
あっという間に簡単に正体をバラしたので、他の騎士たちが驚いちゃっているよ。
ザソコークってやつも、自分が何を失言したのか今分かって顔を物凄く蒼くしているけど後の祭り。
騎士団が冒険者に襲撃をかけ、国に使えているやつだといっていたが‥‥‥そのことが何を意味するのか分かっているのか?
冒険者と敵対するようなやつら‥‥‥つまり、冒険者の背後にあるギルドと敵対することも意味するんだぞ?
ギルドは基本的に国から独立した機関であり、ある意味一つの大きな組織ともいえる。
そして、ギルドに所属する冒険者たちは依頼を受けるのだが‥‥‥敵対するのであれば、その依頼を受けるどころか出すこともなくなるだろう。
ギルドで依頼を出して、それで受け取れる素材なんかもあって、それで依頼が受理去らなかったらそれらが受け取れないことになる。
また、護衛依頼なんかもあるけどそれらもすべて断られ、孤立する可能性もあるのだ。
冒険者に喧嘩を売るという事は、大きな組織を相手に喧嘩を売るのと同意義。
‥‥‥まぁ、虎の威を借る狐のような、ギルドの権力を当てにするような奴らは排除されるけどね。流石にそう言うのは処分するらしいし。
「つまり、お前らはギルドに所属している冒険者を襲撃した時点で、連座的に国の方も相応の報復がギルドからある可能性もあるんだぞ?いや、知らないからってむしろ切り捨てられる可能性もあるけどな」
「そもそも盗賊なんかのように、夜襲をかけている時点で騎士としてどうかと思いますけどね」
『盛大な自殺行為(´・ω・)』
「馬鹿、阿保、ドジ、マヌケ」
今さらながら、自分たちがやらかした事の重大さを実感したのか、騎士たちは顔を青くするどころか、廃人のように白くした。
「頭がそこまで回っていなかったのか」
「そのようですよね。むしろそんな頭でよく今まで騎士として生きてましたよね」
「な!?そこまで言うのか!!そもそも我々は下賤なお前ら以上に高度な教育を受けているのであってだな!!」
『で、高度過ぎて一周回って馬鹿になったと(´・ω・)』
「ぐっつ‥‥‥」
ザソコークってやつが反論しようとしたが、コンゴウの指摘に何も言い返せずに言葉を詰まらせた。
‥‥‥うん、馬鹿と天才は紙一重とも言うけど、いくら学習しても活かせなかったら意味ないじゃん。
というか、そもそも真面目に教育を受けていたのかもちょっと怪しい。この馬鹿をやらかす前に気が付いていればよかったのにな。
結局、とりあえず放っておくのも逃げ出されるのも面倒なので、身動きできぬように丁寧に骨を折ったうえで、ギルドへ連行した。
ここまで非情にやらなくてもいいかもしれないけど、この世界は弱肉強食であり、現代日本のようなぬくぬくとした安全性はない。
というか、そもそも襲撃してきた相手に情けをかける意味もなさそうだし、ザソコークとかいうやつを見ると傲慢すぎてまったく欠ける必要性がなかった。
いろいろ面倒な事を言われても困るので、とりあえず適当な布で口をふさいだが‥‥‥
「は?こいつら既に騎士除籍されているんですか?」
「はい、ギルドに緊急の連絡がなされまして、ゼクストリア騎士団の皆様方は全員除籍し、騎士団自体なかったことにするようにと言う事でした」
‥‥‥あまりにも早すぎるというか、先を読まれて騎士たちは既に騎士ではなくなっていた。
どうやら以前からの傲慢性や縋りつき方が問題視されていたようで、ハンマーズとの決闘でとどめを刺したようで、完全にゼクストリア騎士団とかいうものは解体されたようなのだ。
で、それはつまり‥‥‥
「ただの盗賊扱いで犯罪者奴隷行きってことか‥‥‥」
「後ろ盾も何もない集団でしたからね。盗賊という扱いで良いってことでしょう」
その言葉に、騎士団‥‥‥いや、もう何もないただの奴らはこの場をもって犯罪者認定決定。
あとは連行されていったけど‥‥‥もう気力もないのか魂が抜けたような状態になっていたのだった。
「それにしても、やけに早く手が回されていたな」
「そうですよね?ああいうのはもう数日ほどかかると思っていたんですが‥‥‥」
『もしかして、馬鹿をやらかしてしまう事が予想されて、この機会に徹底的な排除を国が考えたのではないだろうか(・ω・)?』
「トウノ前ニ、切リ捨テ決定済ミダッタノカナ?」
その連絡の早さに、里宇たちは疑問を覚えつつもとりあえず先にこなした依頼の物を出すのであった‥‥‥。
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SIDEとある王城内
‥‥‥アルベスタ王国の王城にて、宮廷魔導士たちが集まる研究棟の一室で、宮廷魔導士筆頭であり、貴重な転移系統の魔法の使い手であるタナカと呼ばれる人物は、現在久し振りにもらえた休暇のための準備をしていた。
宮廷魔導士は、魔法使いの中でも国に特別に召し抱えられた者たちであり、それなりの好待遇と引き換えに、めんどくさいような事を命じられる立場でもある。
先日までタナカも、ある騎士団への最終的なクビの判断を任されて、一時的に潜入捜査をしている身であった。
そして、その騎士団の所業を国王に報告し、すぐに今その騎士たちがいる場所へクビを通達された。
「ふぅ、休暇のために用意した薬品とか、薬草とか、道具とかはこれぐらいかなっと♪」
「おや?久しぶりに顔を出したと思ったらどこかへ行くのですか筆頭のタナカさん」
ルンルンと、休暇の準備をしていたタナカの下に、部下のヘンリエッタは声をかけた。
ヘンリエッタはつい最近この職場に入った魔法使いだが、研究熱心であり古い書物を読み漁っているのをタナカは知っていた。
‥‥‥ついでに、禁書庫までに入り込むのはちょっといただけないが、まぁ、研究熱心過ぎるだけだから良しとしよう(良くないけど)。
「ああ、やっとあのばかばかしい騎士団から抜け出せて、ようやく褒美も休暇も国王陛下からもぎ取ったんだ!!せっかくだし海にでも行こうかと思って用意しているんだ!!」
にこやかに返答するタナカ。
この地位にまで上り詰めるのには苦労したが、それでもやりがいがある仕事でもあるので文句はない。
「そういえばさ、ふと思い出したんだけどヘンリエッタ、お前って人の顔ってどれだけ昔まで覚えているんだ?」
ふと、タナカは今回の任務で偶然見かけたとある女性について思い出し、ヘンリエッタに尋ねた。
「ん?何か気になるような偉人の記録でも見つけたのでしょうか?まぁ、せいぜい1000年前の有名な魔法使いの顔で200人ちょっとなら覚えていますが‥‥‥」
「どれだけだよ‥‥‥」
「え?歴史書とか記録を見ればすぐに覚えられるものでしょう?」
けろりと答えるヘンリエッタに、タナカは溜息を吐いた。
この同僚の頭の良さがうらやましく思えたからだ。
まぁ、ヘンリエッタが筆頭になっていないのは、今一つ実力不足だけど‥‥‥実力があればタナカの今いる座が奪えるであろう。
そこまで野心もなく、本当に本の虫であるのだけどね。
「だったらさ、この顔って見覚えあるか?」
懐からタナカが取り出したのは、こっそり買った隠し撮り写真。
過去の異界人の功績か、カメラはこの世界にどうやらあるようで、やや高めだが写真の存在はあるのだ。
その隠し撮り写真は、実はギルドにいる冒険者たちでこっそり作られていたファンクラブから購入したものだが‥‥‥決していやらしい目的で購入したわけではない。
その写真に写っていたのは、里宇の従魔であるハクロ。
リッチで、身体がやや透けて見えるのだが写真には問題なく映っていた。
「この人物、いや人ではないですね。この感じだとリッチでなかなか美しい女性のようにも‥‥‥ん?」
っと、写真をまじまじと見ていたヘンリエッタは、急に写真を近づけて何かを確かめるかのように重視する。
「何か知っているのか?」
「この女性‥‥‥確か300年ほど前の記録でいましたね。ちょっと待っていてください」
田中にそう言い、ヘンリエッタは一旦退出し、城の書庫から何冊もの本を持ち出して戻って来た。
「確かこれとこれ‥‥‥後この本のここに‥‥‥ほら、ありました」
ページまで覚えていることにタナカが驚愕しつつも、ヘンリエッタはそのページを開き、指し示した。
「これか?ああ、確かに‥‥‥って、はぁ!?」
その部分を見て、タナカは驚愕の声を上げる。
そこに書かれていたのは、とんでもないことであったのだ。
慌ててタナカは義務感故に国王の下へ報告し、その事実を国王にしっかりと確認してもらった後‥‥‥
新たな任務が出され、タナカの休日は先送りされたのであった。
ついでにヘンリエッタも一緒にされた。完璧な巻き添えである。
‥‥‥いったい何に驚いたのだろうか?
国仕えの人が、わざわざ行かされるという事は‥‥‥




