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のしかかられていました 

ハクロの苦労もあるんですよ

……重い。


 なんか重い。そして柔らかい。



「……ん?柔らかい?」


 ふと、その事に疑問に思って、理宇(りう)は目を覚ました。


 今は都市デルベスタにある宿に宿泊しており、同室にはハクロかコンゴウしかいない。


 コンゴウはヘヴィーミミックなのでベッドで寝ずに床で寝ているようであり、ハクロは寝る必要がないからとそのあたりをうろついていた利、気まぐれで寝ていたりする。


 なので、もしかしたらハクロなのかなと思っていたのだが……





「起キタン?」


……のしかかっていたのは、見知らぬ少女でした。


 というか、誰やねん。










「昨夜出たんですよね。まぁ、害はないようでしたので色々話し合った結果このような姿になったというか……」

「ハクロ、まっすぐ前を見て話せ」

「は、はい」


 思いっきり目を横にそらすハクロに命令しつつ、里宇はこの譲許の整理をしていた。


 布団の上に載っていた謎の少女は現在、コンゴウの上に寝そべっている。


 あの上部のふたの丸みの具合が良いのか、背中からだらりんとだらけている感じだ。


 

 ただ、その容姿は人ではない。


 額に黒い角が生えているし、耳がエルフかっていうくらいとがっていて、牙が鋭く生えており、手の方も黒いうろこでおおわれている。


 背中からは翼のようなものが生えているが……何かこう、色々な動物が混ざったような感じだ。


 ただ、その顔とか体つきはハクロに似ており、彼女の眼付をもう少し鋭くして、胸のサイズを大きくすれば姉妹と言ってもおかしくないほど似ているのではなかろうか。



「一体何者だ?」


 里宇が問いかけると、その少女はシャキッとコンゴウから飛び跳ねて掟、にっこり笑って言った。


「種族不明、人工的デスケド、多分『ドッペルゲンガー』ダヨン!!」

「『ドッペルゲンガー』……って、え?」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『ドッペルゲンガー』

スライムに次いで、決まった形がないと言われているモンスターの一種。

生態は不明であり、様々な種族へと変化することが可能であるため調査は難しいとされている。

過去にはドラゴンを従えたとほらを吹いてドッペルゲンガーをその姿に変化させていた魔物使いがいる。

―――――――――――――――――――――――――――



「……と、これがドッペルゲンガーについての知っている事ですかね」


 ハクロが教えてくれたけど、地球での話の方を思った俺の心配を返してくれ。

 

 そっちだと出会ったら死ぬとか言われているんだぞ。



「私、アノ種カラ、生マレタン」

「種って……あの騎士の投げ捨てたやつか!?」


 そこで思い出すのは、決闘場でハンマーズと対戦していた騎士が、わいばーんをだすとかいってなにもおこらなかったあの種である。



「どうしてワイバーンじゃなくてドッペルゲンガーが?」

「恐らくですが、ドッペルゲンガーなのでワイバーンに変身できると考えていた人がいたのでしょう」


 ハクロの推測だと、この少女が入っていたとされるあの種はおそらく人為的に生み出したドッペルゲンガーを閉じ込めて処理したものの可能性があるそうな。


 ただ、その処理がいまいちなのか種が割れたときには霧散していたようで、すぐに姿を表せるような状態ではなかったらしい。


「ワイバーンノ姿ワカルン。ケド、解放サレタ時ニ、バラバラニナッチャッタン」


 てへっと、舌を出して笑うドッペルゲンガーの少女。



 バラバラになった物は仕方がないと考えつつも、あの騎士の命令を聞くのは嫌だと思えたそうで、結局姿を現すことはしなかったそうだ。


 それに、身体を集めるのに忙しかったそうだが、なぜか里宇に惹かれてこのままついてきて、今こうして目の前にいるのだとか。



「というか、なんでその姿なんだ?」

「昨晩、すでにこの部屋にいたんですけど、そのままだと会話がしにくいと言うことで変化してもらったんですが……」

「変化対象、話シヤスサカラ、ソノリッチノ姿ニ、最初ナッタン。ケド、素ッ裸ダッタカラ……」


 どうやら真夜中にハクロの姿をまねしたようだが、素っ裸の状態になったそうである。


 ハクロはモンスターとはいえ、元は人間。


 羞恥心が残っているので慌てて変更するように一晩中調整を議論しあって、結局その姿に落ち着いたそうだ。


 ただ色々と混ざったようで、そのせいでハクロに近い容姿をしながらも、翼や角という特徴が残ったそうである。





 何をどうしたらそうなった。



 そうツッコミを入れようかと里宇は思ったが、諦めた。




「で、何でここにいるわけだ?」

「私、アナタニ惹カレタン。興味持ッタン。ナノデ、従魔ニナリタイン」

「……コンゴウと同じことか」

「そのようですよ里宇さん……あなたってどれだけ引き寄せるんですか」


 やれやれと肩をすくめるハクロに、何も言い返せない。


 コンゴウの時も自分から来たけど、モンスターって従魔になりたかったら時分から来るのが多いそうだが、それでも連続2体目なのは驚きである。



「うーん……ハクロ、このドッペルゲンガーって従魔にしても問題はないのか?」

「と言いますと?」

「いやあの騎士とかが目ざとく見つけてさ……」


 決闘場で、このドッペルゲンガーを出したであろう騎士はまだこの都市に滞在しているはずである。


 そんなやつの目の前で姿を表せば明らかに物凄い面倒ごとになりそうな予感がするのだ。


「安心してください里宇さん。そんなことになったら従魔である私たちがゴキッとやりますので」


 にこやかにハクロはそう答え、同意しているのかコンゴウがうなずくようなそぶりを見せた。


……安心したけどさ、その擬音が物騒なんだけど。




 とにもかくにも、ドッペルゲンガーの少女を従魔にするのに反対は無さそうだ。


 それに、ドッペルゲンガーは情報さえあれば様々案姿形になれるようだし、このメンバーでの戦力には十分だろう。


「それじゃぁ、名前を付けるか」


 ドッペルゲンガーの少女を見ながら、里宇は考える。


 ワクワクするかのような表情で、少女が見つめてくるが……センスに過度の期待されていないよな。


「様々なものになれるわけだし、ドッペルゲンガーだから……安直かもしれないけど『ルン』でいいかな?」


 ドッペルゲンガーの「ル」と「ン」からとって「ルン」。


 安直かもしれないけど、中々良さそうな感じである。


「『ルン』……ハイ、ソレジャ、コレカラヨロシクオネガイシマス、マイマスターン」


 毎度おなじみの、今回はルンの額に生えている角を触ってみると、そこに魔法陣が出て契約が結ばれたことを証明した。



 新たな従魔、ドッペルゲンガーのルンをゲットだぜ!!


「で、宿泊費増えますよね」

「あ」


 ハクロのその一言に、里宇は気が付く。


 1体の従魔分の宿泊費増加も得たのか……はぁ……

ドッペルゲンガーを新たに従魔に加えたので、ギルドで登録し直す必要性があるんだけど……

昨日の今日だし、何かありそうなんだよなぁ。

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