深夜の出会いでした
主人公不在回
SIDEハクロ
深夜、外はすでに月夜の明かりのみとなり、真っ暗となって静まり返っていた。
今は宿屋で宿泊をしているのだが、そんな中で里宇の従魔であり、リッチのハクロはふと気配を感じて目を開けた。
ハクロは特に眠る必要性がなく、真夜中だろうと目がすぐに覚めて状況を把握できる。
「……何者ですかね?」
見れば、今宿泊している室内に何やら黒い靄のようなものが入り込んでいた。
いつの間に……いや、もしかしたら最初からなのではないだろうかハクロは思った。
なぜなら、靄の姿が見える前から徐々にその存在らしきものを感じていたのだが、今こうしてはっきり見えるようになった途端に、その気配がしっかり固まってきたのである。
そして、敵対しているようなものかとも考えてはいたが……その気配や、動きからして敵対するようなそぶりはない。
だが、何者なのかはハクロはわからない。
黒い靄のような生物とかは聞いたことも見たこともないのだ。
(……謎の存在、考えられるとしたらあの時ですかね?)
その靄の気配を考えていると、ふとハクロはその時のことをもい出した。
昼間、なんとかとかいう騎士団の男が投げた、人工モンスターの種。
あの時はなにも出ていなかったのだが、もしかしたら……すでに出ていたのではなかろうか。
ただ、その気配が微弱すぎるがゆえに誰もが気が付かず、見過ごしていたのではなかろうか。
そして時間が経ち、今こうして実体化して、その気配を出せるようになったのではないだろうかとハクロは思った。
「何をしようかというのはわかりませんが、里宇さんに危害を加えようものなら相手しますよ」
リッチとしての本気で、にらみつけるハクロ。
その黒い靄はしばしその場に立ち往生したかと思うと、徐々に靄がはれて形作られていく。
どうやら、形が定まったようだが……その姿を見て、ハクロは少し顔をひきつらせた。
「……」
「ちょっと待ってください。予想外というか、それはだめです!!」
顔を真っ赤にさせて、靄だったその生物にハクロは姿を変えるように要求する。
そのまま一晩じゅう、ああでもないこうでもないとハクロとその靄だった生物はその姿について言い争い、何とか形をまとめるのであった……
何の姿になったのかって?
ハクロが真っ赤になっている時点でおそらく予想ができるでしょう。




