めんどくさいのはどこにでも
毎日投稿ではないけど、投稿は続けています。
……都市デルベスタにてランクアップしてCランクとなった理宇たちは、しばらくその都市で冒険者活動を行うことにした。
サバンの街に戻ってそこで行っていてもいいのだが、せっかくこの場まで来たのだからしばらく滞在してみようかと考えたからである。
ランクが上がったことにより、受注可能な依頼の幅も広がったので、しばらくは大体どのような依頼を受けたほうが良いだろうかと考える期間も必要だと思えたのも理由であった。
討伐依頼や採取依頼なども多くあるので、このメンバーで出来るだけ可能な分を調整し、確認して今後の冒険者活動に役に立てるのである。
「とは言っても、流石都市というか依頼的には人手不足なのが目に見えているのが多いなぁ」
「物資が不足しているというか、需要が多いのでしょうね」
『採取系統の依頼が多いよー(・ω・)』
討伐依頼なんかもある事にはあるが、都市ゆえの特徴か採取依頼の方が多い。
「『ネルゲス草30本採取:新鮮さ重視』、『ハゲィ草20本採取:呪い用』、『タイル草採取できた本数×大銅貨2枚だから大至急お願いします』‥‥…薬草関係が多いね」
「こういうのは知識がある程度なければいけませんので、間違って毒草を採取してくる人も良そうですけどね」
『数日前、猛毒のやつを出した冒険者がいる話があったよ( ;´Д`)』
こういう知識がいる依頼とかは、中々受注する冒険者も少ない様だ。
というか、おかしいのが混じっているけど依頼に出していいやつか?
ともかく、冒険者派基本的に戦闘で成り上がってやるとか言う人が多いわけだから、地味な奴はなかなか消化されないのであろう。
まぁ、こちらには……
「ハクロはわかるよね」
「当然ですよ里宇さん。こういうやつをきちんと記憶していなければ、実験なんかもできませんからね」
エッヘンと胸を張るハクロ。意外にある事はあるけど、着痩せするタイプなのでまだいいだろう。
薬品を使った実験などを多くやっていた過去があるのだが、その過程できちんとそう言う薬草などの材料についても学んでいたそうである。
「群生しやすい場所とかもわかりますし、基本的に周囲の環境、季節などの条件さえあればそういうのはわかりますよ」
その為、薬草採取の依頼をこの際理宇たちは多く受けた。
荷物としてもかさばりそうだが、そこはコンゴウに収納してもらう。
つまみ食い去れる可能性はあるんだけどね。
『大丈夫だよ。生の薬草は苦いから食べないの(`・ω・´)』
苦くなかったら食べる気かよ。というか、薬草って苦いのが多いのか。
「良薬口に苦しとか言うけど、その通りなのかな?」
「いえ、そうでもありませんよ。苦い、辛い、渋い、酸っぱいと様々ありますよ。……甘いのはほとんどないですけどね」
甘いのがほとんどないのか……そりゃ残念。
「ついでに言うなれば、世界10大激マズ薬草なんて言うのもありますからね。おいしいのが少ないのが当たり前です。そもそも食べる前提ではなく、傷口に塗ったり、貼ったりするのが薬草のそのままの扱い方ですよ」
「ああ、なるほど。言われてみれば確かにそうかも」
異世界だから、回復薬的なもので飲んだり食べたりするのを想像してはいたけど、確かに薬本来の扱い方を考えるとそれ以外の方法もあるからな。というか、激マズ薬草って言うけどそれを調べた人でもいるのだろうか。ちょっと気になる。
とにもかくにも、納得した里宇であったがこの後に薬草採取依頼の真の厳しさを知った。
そう、生えている薬草の適切な取り方というのがあり、それをハクロに指導されるという……
「もう少し力を込めて引き抜いてください!!ただし、つかむ感じは綿毛が飛ばないようにそっとする感じで!!」
「どういう風にやれと!?」
数日後、依頼をこなしていくと、そこそこの報酬が入手できるようになって安定してきた。少なくとも採取地獄訓練が実を結んだであろう。
教訓として、ハクロに指導を頼むとスパルタ気味になるということを学んだがな。
とにもかくにも、この都市は活気があり、むしろありあふれる元気さゆえに喧嘩したりして怪我をする人も日常茶飯事。
その為、治療用の薬草の供給が増えると消費者がより一層求めてきて、どんどん依頼も出てくる。
「でも毎日採取もできませんよね」
「そりゃ、とりつくしたらダメだからなぁ」
過度の採取は二度とその資源を取れなくなることを意味している。
その為、里宇たちはある程度の周期で薬草を採取する依頼を湯注することにして、たまに討伐依頼などを受けることにした。
『今日狩りたてのウルトララビットの肉はおいしいな(^O^)』
「コンゴウ、つまみ食いしていないか?」
「いや思いっきりしていますよねこれ!?」
討伐依頼で素材を得て、売却もしているのだが肉をコンゴウが喰っていたりするからなぁ……苦い苦い薬草を混ぜてやろうかこの野郎。
『それは本気で勘弁をorz』
「土下座の顔文字かよ。いや顔文字か?」
依頼達成の手続きを取り、里宇たちが報酬受け取りをしていたその時であった。
「ああぁん!?なにをいっていやがるんだこのやろう!?」
「何をお高くしているんだよ!!」
「いい加減にしろ!!我々の方がより速かったではないか!!」
「そもそもそっちが指示に従わなかったのが悪いだろ!!」
何やら大声での喧嘩がギルドの外から聞こえてきた。
何だろうかと野次馬気分で里宇たちは見に行くことにした。
当事者たちと関わるのではなく、本当に野次馬としてだけであるがな。けんかを止めはしないよ。
行ってみると、何やら大勢の野次馬たちがいて、その中心には冒険者パーティを組んでいる人達らしい人と、なにやら無駄に金をかけたかのような豪勢な鎧を身に着けた者たちが言い争っているようである。
「なんだこの喧嘩?」
「あ、あそこにいる冒険者側はCランクのパーティ名が『ハンマーズ』の奴らじゃないか?」
「柄が悪そうだけど、実は結構しっかりした意外性のある奴らだっけ」
「あの鎧を身に着けているのは何処かの騎士団かな?」
「あの模様、『ゼクストリア騎士団』のやつじゃないか」
何やらがやがやと野次馬たちが会話をしているが、情報も結構入り混じるようである。
というか、なんだその騎士団?
「たしか、ひと昔前は竜騎士団という名前だったこの国の騎士たちだっけ」
「ああ、ワイバーンなどの亜龍のモンスターを飼いならし、最盛期には3000騎以上いたそうだぜ」
「しかしまぁ、弱体化していって今では買っているワイバーンなんかもいなくなり、ただの騎士団にまで落ちぶれたそうだな」
「残るは昔あった栄光にしがみつく奴らだけのめんどくさい奴らだしなぁ」
「聞いていると物凄いめんどくさそうな感じしかしないな」
「うーん、でも聞いたことがあるようなないような騎士団ですね。確か300年ほど前の時点で弱体kが始まっていたはずですよ」
『そんなのが何でこの都市で喧嘩しているのかな(?ー?)』
疑問に思ったのでしばし流れる話を聞くと、大体の状況はわかった。
どうやらあの弱体化した騎士団を立て直そうとする者たちが集まったらしく、その為にもまずはワイバーンの代わりに騎乗可能な強力なモンスターを求めて、あの冒険者たちと行動していたらしい。
なんでも討伐する予定の依頼に割り込んできて、そのモンスターを利用できないかどうか確かめていたそうだ。
モンスターを使役するには、魔物使いとなって従魔にするという方法があるのだが、その為には魔道具によって可能なようにする必要がある。
里宇の場合は、ハクロから譲り受けたやつで可能になってはいるのだが……
「ふざけんなよ!!半人前だからまだ授かってもいないだろうが!!」
「我々は誇り高い騎士だぞ!!従えることが可能だと思うだろうが!!」
ゼクストリア騎士団も、ワイバーンを従えていた時代は卵から育てていたとはいえ、一応魔物使いのように魔道具を使用して、使役をしていたようである。
というか、基本的に魔物使いじゃないとモンスターが従魔の様にならないそうだからね。きちんとした知能がある相手ならまだしも、ワイバーンは基本的に暴れん坊が多いらしく従わせるのもまたひと苦労なのだとか。
しかし弱体化していなくなった今、その処理がなされておらず、魔物使いにもなっていないそうである。
なので従魔なんてできるはずもなく、そもそも相手が討伐対象故に物凄い危ない目に遭ってこうしてもめ合いになっているのだとか。
「『騎士であるから』という思いだけで突撃するのもどうかと思うけどな」
「そんなんでモンスターが従魔になるんでしょうかね?少なくとも嫌われるのが目に見えていますよ」
『誇りと傲慢をはき違えているってことだよ(-""-)』
コンゴウの言葉は的を得ているようだ。
そのつぶやきが掛かれたメモを見て、読んだ周囲の人たちはうんうんと同意するかのようにうなずいていた。
とはいえ、ヒートアップしてきたようである。
「ああこんちくしょう!!おかげで討伐予定のモンスターを討伐するにもいくらか余計な出費が出たじゃねぇか!!」
「何を言うか!!我々も従わせるのに失敗はしたぶん、きちんと討伐したではないか!!」
「お前ら鎧が汚れるのが嫌だと言って後衛に回ってばっかだったろうが!!」
「魔法とかで援護してもしょぼいし!!」
「はぁぁ!?我々の魔法の援護の方が、貴様らよりも何倍も優れていただろう!!」
「そうだぞ!魔法に関してはこちらの方がそこいらの野郎に比べて負けてねぇからな!!」
どうやらあの騎士団、剣以外にも魔法などができるようである。
よくよく考えてみれば、元々が飛行可能なモンスターの上に載っての戦闘を前提にしているのであれば、魔法が扱えても不思議ではないだろう。
「ハンマーズの奴らは基本ハンマーでの攻撃だからな。魔法をあまり扱うやつがいないんだよな」
「ただまぁ、あの騎士たちがどれだけすごい魔法を扱えるのかも問題だよなぁ」
「ああやって言い争いをしてる時点で、無能そうだしな」
野次馬たちのつぶやきだが、割と正論である。
冒険者たちは素材採取や討伐で動き、結構貢献している人が多い。
なので、対立しあってギルドまで巻き込むレベルにまで発展したとすれば、もう冒険者たちは彼らの依頼を受け無くはなるだろう。
そこを考えていない騎士たちって、ある意味無能なのかもしれないな。
「ああもぅ!いい加減にしやがれこの野郎!!」
「だったら決闘だ決闘!!我々もお前らも決闘しあって遺恨無くすればいい!!」
「上等だ!!受けて立ってやろうぜ野郎ども!!」
っと、どうやらなんとか話がまとまったようである。
決闘になったようだけど、それで本当に済む話なのかな。
「どう考えてもろくでもないことになりそうな気がするのは気のせいかな」
「うーん、多分その予感は当たってますよ。私も嫌な予感しかしませんもん」
『ああ言う強気な奴らに限って、その背後にやばい奴がいたりしそうだしね(`・ω・´)』
その予感が、現実のものにならなければいいなと里宇たちは思っていたのだが……残念ながら、当たるような気がした。
なんかずれたテンプレができたなぁ。




