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後始末が一番大変だった

事後処理とも言う

……オークの群れ討伐から一夜が明け、サバンの街のギルドに隣接する酒場は死屍累々の光景が広がっていた。




 オークは何十頭もいたので負傷者もそれなりに出たが、幸いにも死者はおらず、被害者となっていそうな女性たちがいなかったのだ。


 理由としては、いくつかのオークの群れが偶然集まってできたためにあのような大きな群れになったのだと考えられ、今回街に迫ってきたのはその個体数の維持と繁殖のための女性狙いであったという結論が出た。


 そして、討伐漏らしが内容にオークたちを殲滅した後、それぞれ皆解体して、そのまま勝利の宴へと酒場で一夜を過ごし、こうして死屍累々の状態になったのである。


 何せ、オークそのものは人々にとって生きている間は害になるとはいえ、死んだ後のその素材……主に肉はものすごくおいしいのである。



 その為、酒のつまみに合うなど言って売却せずに、各々倒したオークの肉を解体・調理して食して、酒をがばがば飲んでいったのだ。




 特に、今回の一番の大物……オークエンペラーはその魔石は売却されたが、その肉のうまさを考えて倒すのは大変だったとはいえ、ある程度ふるまわれたのである。


 ふるまったのはギルドマスターと里宇たちであったが、どちらもこの肉の調理を人に任せたほうが良いと判断したので、このようにしたのである。



……決して里宇たちが調理をサボりたかったわけではない。ただし、ギルドマスターのヒャィフルに関しては元から料理だけは壊滅的だと言われているので誰もがその判断を賢明だと思えたのであった。




 そして、その本人たちはというと……



「なるほど、ミミックが進化したのかぁ!?すごいすごい奴だぜぇ!!」


 現在、ギルドの執務室に里宇たちは呼ばれて、そこで今回の事後報告のための書類を作成しているヒャィフルと話をしていた。


 一応、今回の討伐に関しては連携して討伐したので、そこそこの信頼関係が生まれているからである。



 また、見た目はチンピラだけど能力とかは高く、経験も本物なヒャィフルに里宇たちは相談したいのであった。


「やはりこれって進化というやつですか」

「そうだぜぇい!!モンスターは通常種だろうと希少種だろうと、ある程度経験を積んだところで、己の強さを格上げするために姿や能力を根底から改善して変わることがある!!そのミミックも、希少種方面で進化したのさぁ!!」


 そうヒャィフルさんは笑いながら、ギルドかーをを見るように促してきた。


 ギルドカードには魔物使いの場合、従えている従魔の名前と種族が記録されるようになっており、その詳しい説明も記述されるのである。



 一夜が明け、見てみると木製の箱から、継ぎ目のあった木が消えて金属製のような光沢を放ち、、装飾が追加されたコンゴウの姿を見ながら、里宇はカードに目を通した。


――――――――――――――――――――――――――――――

従魔名:種族

「ハクロ」:リッチ

「コンゴウ」:ヘヴィーミミック


『ヘヴィーミミック』

ミミックの希少種であり、重量が増した宝箱型モンスター。全体的な能力がミミックに比べて向上し、ランクA~B相当の冒険者にとっても強敵ともいえる存在となった。

耐久性能が向上し、魔法に対しても耐性が付いた。重さが増えたのだが、なぜか素早い動きも可能になっているという不思議な特異性を持つ。


――――――――――――――――――――――――――――



 コンゴウ、パワーアップした模様。


 なお、重量級になったようで前衛として戦うことが増えそうだが、巨悪性は増しているだろう。



「ついでなら、ここでリウ!!てめぇにはランクアップ試験を受けてもらいてぇが、このギルドは今チョットあの群れの事後処理でごたごたしていやがる!!そのミミックと言い、リッチと言い能力とかもそのランクでは似合わねぇレベルになっていやがるから、さっさと他の町とかにあるギルドの方でも向かってランクアップ試験を受けなぁ!!ギルドマスター権限で上げることもできるが、そうしたほうが納得いくだろうしよぅ!!」


 そう言いながら、ヒャィフルさんは地図を取り出して、向かったほうが良いとされるギルドの場所を詳細に、丁寧に教えてくれた。


 見た目が完全にチンピラなのに、あの戦闘力とこの面倒見の良さはギャップがあり過ぎるようにも思われるが……この破天荒な感じこそが慕われる秘訣にもなるのだろうか?




 とにもかくにも、ヒャィフルさんの言葉通りさっさとランクを上げる試験を受けるために、里宇たちはサバンの街から出発するのであった……

 



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEヒャィフル




 里宇たちがギルドから出ていった後、ヒャィフルは仕事に取り掛かりながら部下の一人に声をかけた。


「にしてもだぁ、あのリウってやつは異界人だよなぁ?」

「どうかしたんですかギルドマスター?彼に何か問題でもあるのですか?」



 里宇が異界人なのは、その雰囲気で誰にでもわかる事である。


 そんな中で、ヒャィフルはその姿を見て、そしてオークたちとの戦闘を見ながら考えていたことがあった。


「異界人ってやつら、昔から様々な問題や恩恵をもたらしたりするやつが多い。あのリウの場合前者になるか、後者になるかで考えたらどう考えても前者の可能性があるんだぜ」

「性格とかには問題なさそうでしたが……」

「性格はいい。けれどもそうではなくてなんというか、むしろなにかしらの問題に巻き込まれて、周囲をも引きずっていきそうでなぁ、そこが気になるんだぜ!!」


 問題行動を起こすような人物ではないのは、あのオークとの戦闘のさなかで見ていたヒャィフルにはよく理解できている。


 ただ。「起こす」のではなく「巻き込まれる・起こされる」という可能性が高そうだと思えたのである。


 将来的に、何か面倒ごとを起こしそうだと思って、ちょっとした厄介払い的な意味合いも含めて、ヒャィフルは他のギルドの方で試験を受けるようにと里宇に推すめたのだ。


 とはいっても、完全に嫌がってではない。


 里宇のためを思って、ここよりももっと成長して厄介事を自ら弾き飛ばせるようにと考えて、そうしたのだ。


 どことなく放っておけないような冒険者。実力も成長して高みに上り詰めそうだが、それまでになにかしらの出来事に多く出くわすであろう人物。


 それが、ヒャィフルが里宇に抱いた印象であった……

冒険者たちの事もきちんと考えるヒャィフル。

その判断は、果たしてあっているのか間違っているのか。

それは誰にもわからないのであった……

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