VSオークエンペラー
ちょびっとグロあるのかな?
「ブモゥァァァァァァァァァァ!!」
猛烈な咆哮をあげ、目の前のオークエンペラーは動き出した。
狙うは高ランクで脅威となるヒャィフルか、この場にいる中でも最高の防御力を誇るミミックのコンゴウか、それともこの中で身体的に弱そうな里宇か。
……その結果はどれも違った。
オークエンペラーは、後衛として魔法を放っていたリッチのハクロに狙いを定めたのである。
理由は単純明快、女だから。
種族は違えど、オークはモンスターの中でも様々な種族と交配が可能である。
そして、今オークたちの群れは崩壊してきており、このままでは一族全部が根絶やしにされるのだと考えたのだろう。
そこで、自分だけでも生き残り、なおかつ再び群れを復活にするためにもその相手としてハクロを選んだようである。
魔法耐性には自信があるようで、怖気もせずに真っ直ぐにハクロへとオークエンペラーは駆けだす。
この場で戦闘をして、王としての矜持で最後まで抵抗するよりも、今は生き残って逃げたほうが先決だとも考えたのだろう。
その手土産というか、群れの復活のために相手としてハクロを抱えて逃亡する算段だったのだろう。
その計算はある意味正しいとも言えた。
激しく抵抗するよりも、逃亡に力を注いだ方が生存確率は高い。
だが……相手が悪かったとしか言えなかった。
オークエンペラーはランクA冒険者相当の実力は確かに持っていると推定はできる。
けれども、それはあくまで平均的なレベルであり、通常の状態であれの話だ。
群れの強襲によって統率が乱れ、慌てふためいており、さらに実はこのオークエンペラーはつい数日前にこの姿に進化したばかりの者であった。
その為、急激な自身の強さの変化にまだ慣れてはおらず、100%の強さを出せないでいたのだ。
そのランクはBよりもちょっと上だったのだろうが……いかんせん、今手の届こうとしていたリッチはそれを超えてはいた。
「来ないでくださいよ!!『ファイヤランス』!!」
ハクロが唱えた魔法によって炎の槍が形成されるが、その槍は通常の物とは違っていた。
今までは加減していたのだが、里宇と過ごしているうちに知識を蓄えてより効率的に熱量が高まった、白き炎を纏った魔法であり、その熱量は超高温と達していた。
加えて、ハクロ自身自覚がないが、リッチというモンスターは魔法に長けた者であり、生前の時に比べて格段に魔法の扱いも優れて、その込める力も多くなっていたのだ。
オークエンペラーの接近の不気味さゆえに、頭に当たらなかったが……その高温の炎の槍は、どてっぱらを貫通した。
高温故にすぐさま皮膚が解け、肉が解け、そして焼かれて固まる。
最初、何が起きたのかわからなかったが、オークエンペラーはすぐに目の前にいる存在が自分の腹に大穴を開けたのだと理解して、恐怖に一瞬おびえた。
……その隙を、里宇たちは逃さなかった。
魔法によって恐怖を覚えさせ、一瞬生まれるであろうその隙に攻撃を仕掛けるという単純明快な作戦を立てていたのである。
そして、今まさにその合図ともなろう隙が見えて、一斉に攻撃を仕掛けた。
里宇の場合は攻撃力が不足しているので、柔らかい目玉に素早くナイフを突き刺し、
ヒャィフルの場合は、元Aランク冒険者でもあったのでその力を活かして戦闘斧を振りかぶってその胴体を切り裂き、
そして、トドメにミミックのコンゴウが飛び上がり、自身の重量とその硬さを活かして脳天に角を当てて衝撃を直接頭の中に伝えた。
その連携攻撃によって失明し、内臓がこぼれ、衝撃が貫通して頭の中が悲惨なことになったオークエンペラーは、そのまま事を切らすのであった……。
次回からは基本ほのぼのに戻す予定




