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討伐部隊結成だった

たまには変わったものも出したい。

……オークキング率いるオークの群れが、サバンの街に接近してきた情報がギルドに伝わったその日の夕暮れ頃に、このオークの討伐のために、冒険者たちがあちこちからやってきて、臨時的な討伐部隊が結成された。



 その中には里宇(りう)も加わり、コンゴウとハクロも一緒である。


 ハクロの方はオークたちに狙われる可能性があるから待っていてほしかったけど……「里宇さんの従魔である私だけがそんなことできません!!」と言って、結局一緒に来たのである。






「おーっし!!集まったな野郎どもぉぉぉぉ!!」


 やって来た冒険者たちをぐるっと見渡し、叫んでいるのはここのギルドのギルドマスターであるヒャィフルさん。


 乱暴な言葉遣いに、大雑把のモヒカンでどう見ても迷走したチンピラのような見た目にしか思えないが、一応これでもなんとAランクの元冒険者であったそうだ。


 しかも、ギルド内で起こる喧嘩を収めに出たり、ギルドマスターとして冒険者を引退したような人なのに盗賊討伐の依頼があったら意気揚々に戦闘斧(バトルアックス)(骨の装飾がついているまがまがしいもの)を担いで率先して向かったり、困っている人がいたら助けに行ったりと、見た目と行動が正反対な人物であった。


 なんというか、任侠を大事にするようなやくざっぽい……でもまぁ、悪い人ではないようだからいいか、



「今回てめぇらが相手にしなければいけねーのは『オーク』及び『オークキング』だぁ!!実力を考えて戦闘が無理ならとっと帰ってこの街の防衛でもしていやがれ!!そして不安に震えるであろう女子供たちを慰めて不安を消し去ってやれやぁ!!」


 要約すると「無理なら無理でいい。街でモンスターに恐怖する者たちを心の方で守ってやれ」という事だろう。


 なんというか、ある意味徳の無いツンデレの様な感じである。


「オークキングはこのヒャィフル様が相手をして、手が空いているやつらはその他オーク共の殲滅!!そして万が一の最悪な可能性もあるから、そこも考えて動きやがれぇ!!」




「万が一の可能性って……」

「多分、もしかしたらいるかもしれない被害者たちですよね」

『(´・ω・)』


 万が一の最悪の可能性……相手はオークたちだが、オークの繁殖方法は他種族の女たち、人型のモンスターのメスなどがある。


 もしかしたら、今から向かう群れの中に、その被害者たちがとらわれている可能性があるのだ。


 それを考えると気が重くなるが……出来るだけさっさと片付けてあげないといけない。


 苦しみは、早く終わらせなければいけないのだから。







 月夜の明かりのみの中、里宇たちは群れのそばにまで接近した。


 この群れ討伐だが、一体でも逃がせば後々厄介なことになる可能性がある。


 生き残りがいれば、別の群れに行くか、それともそいつ自身が群れを作ってくる場合があるのだ。



 その可能性をつぶすためにも、取りのがしの無いように討伐部隊の冒険者たちがまずは群れを囲む。


 低ランクでも実力に自身のある者が参加しているが、その者たちのところには念のためにさらに冒険者たちがいって、出来るだけ平均的に強くなるようにしているのだ。



「というわけで、このヒャィフル様がてめぇらの平均を上げるために来たんだぜ!!」

「まさかギルドマスターがこっちに来るとは」

「というか、ギルドマスターはオークキングの討伐の方を狙うのでは?」

『ここに来たらこっちも多分狙われる( 一一)』



……なぜか、里宇たちのところにはギルドマスターのヒャィフルがやって来た。


「くっくっくっく、大丈夫なのはわかっているぜ。てめぇ自身、実はランク以上の実力があるだろう?特に、そのミミックにリッチ……そいつらを引き連れている時点で、てめぇ自身もB相当なんだぜ」

「え?」


 そのギルドマスターの言葉に、里宇は驚きの声を上げた。


 

「あのな、魔物使いってのはその従魔の実力に頼ってランクが高いと思われているが……その従魔をどれだけ自由に従えているのかって言うのもあるんだぜ。その中でも、高名な魔法使いが死後になったりするというリッチに、人間を喰うことができる……たとえ高いランクの物でも不意を突いて可能なミミックを従えて、そんなやつらを従魔にして、さらに自由に従えさせられるという事は、それだけそいつらから認められているという事だ。つまりだ、魔物使いとしての力量はまだまだあるし、才能あふれるやつだとこのヒャィフル様は勘定しているんだぜぇ!!」



 武器を構えて一斉に攻撃する用意をして、ギルドマスターはそう言った。




……なかなか人をよく見ているというか、見かけによらないというか、元Aランク冒険者であった実力というか……このギルドマスター、案外とんでもない化け物じみているのかもしれない。



「ま、ここに来たのはその将来性有望な奴のためと、その着やせしてはいるが、たわわに揺れ」

「『身体強化(エンチャント)』正拳付き!!」


どごっつ!!


「ぐぼぁっつ!?」



 そのセリフを聞き終わる前に、ハクロが魔法で強化したらしい拳を、ギルドマスターのみぞおちに叩き込んだ。




「……すまん、調子に乗ったぜ。というか、リッチって普通魔法のみだよな?その右こぶしは世界を狙えるぞ?」

「確かに魔法を主体としているのですが……セクハラには効果が高い物理攻撃もできるんですよ」


 伊達にAランク冒険者じゃなかったようで、ギルドマスターはこらえたようで、ハクロはどこか冷めた目で見ながらそう言ったのであった。



……何をやっているんだろうかこの人は。

『この討伐大丈夫かな?(-"-)』

この時、コンゴウはその様子を見てそう思ったと言う。

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