地道に積み重ねてみました
ほのぼのと進めていく予定
……ギルドでの冒険者登録にて、里宇は従えている従魔の事を考えて、スキップ申請を受け付けから勧められたのだが、丁重に断って緑色のギルドカードである最低ランクのFから冒険者を始めることにした。
「3番テーブルにこの料理を運んでくれー」
「こちら注文二つ入りましたー!!」
「お会計はこちらになります」
「……なるほど、雑用系が多いゆえにむしろ稼ぎやすいからですか」
「ああ、低ランクでも稼げると言えば稼げるからな」
現在、サバンの街にて里宇たちはギルドの低ランクの依頼から、街中の食堂のお手伝いを受けていた。
半ばバイトみたいな扱いだが、バイトよりも実は稼げる。
いくつかの依頼も掛け持ちして、一生懸命働いていた。
Fランクは冒険者の中でも最もランクが低く、スキップ申請がある分このランクにとどまる冒険者たちは少ない。
冒険者たちは自分のランクと同じだけの依頼、もしくはその一つ上のランクの依頼を狙うのでその下の方に残っている依頼には目をほとんど付けていないのだ。
その為、基本的に雑用が多いFランクの依頼が圧倒的に余ることになり、その上のランクの依頼の方が数が少なくなって争奪戦へとなりがちになる。
そこを、里宇は狙ったのだ。
ランクが低いとはいえ、雑用が基本的なので比較的短時間で終わりやすいものが多く、数が多いのでその分より効率的に報酬をもらって稼ぎやすい。
……でも、スキップ申請をすればDランクになれた可能性がある。
高いランクの冒険者でも、受けようと思えば低いランクの依頼を受注することは可能だ。
けれども、あえて里宇はスキップ申請をしなかった。
その理由は簡単。
「まだまだ俺はこの世界に来て日が浅いし、下手に調子に乗って死にたくはないからな」
「経験の積み重ねもあるんですね」
里宇の言葉に、ハクロはなるほどとうなずく。
異世界転移で異界人としてこの世界に来た里宇であり、まだこの世界について知らないことが多い。
常識、文字、言葉、文化、技術、歴史……それらをゆっくりと学ぶためにあえて低いランクにいて、経験を積み重ねるのである。
ハクロたちがいるからと言って怠慢になってはいけない。
きちんとしかるべき下地があってこそ、ようやくランクを上にあげるのである。
……あと単純に、変に目立ちたくはないからというのもある。異界人という事で怪しまれたりすることがあるようだし、出来るだけ周囲の信頼も積み重ねたいからな。
「ところでコンゴウは?」
「あっちで器用に注文を取っていますよ」
ふと、今やっている食堂でのお手伝いの最中だっと里宇は思い出し、ハクロにコンゴウの場所を尋ねた。
ほら、とハクロが指さした先では、何処でどうやって注文を書いているのか、ミミックのコンゴウがお客の注文のメモを取っていた。
すらすらとメモに字が書かれるが、手もないのに本当にどうやって書けているのか……モンスターって不思議である。
『メニューの3番、6番の注文('ω')ノ』
「そしてなぜ最後に顔文字を書くのだろうか」
「里宇さんが教えたらなんか気に入ったようですね」
なお、この世界の文字は異界人が広めた可能性があるのか、日本語に似ているので少々字が違うのだがあまり不自由はしない。
その為、簡単な文字をコンゴウに教えてみたのだが……結構早く字を書けるようになって、よりコミュニケーションを取りやすくなった。
ちなみに、ミミックが文字をかけるという事は良く知られていない事らしく、ギルドでメモをしていたコンゴウに驚愕する人が多く出たのは言うまでもない。
しかし本当にどうやっているんだ?某猫ロボが物を持つ方法と似ているのだろうか……?永遠の謎である。
異世界にて、一番不思議だと思えるのはコンゴウの物の持ち方であった。
ちなみに、食堂でのバイトのような依頼だが、制服とかは付けずに名札だけを付けてわかるようにしているのである。
しかし……本当にコンゴウはどうやって物の持ち運びをしたり字を書いているのだろうか。




