Ⅵ
「そうだ、素敵なお話があるんです」
冷房を付け三人とも座ったのを確認すると、夏海が笑顔で話し出した。素敵なお話? 何だろうな。
「お兄ちゃんが遂に、CDを出すかもしれないんですよ。それと、ファンクラブも作成しようと思うんです。グッズなんかも作っちゃおうかなっと、企画しています」
座った状態で、カーテンを閉め電気を点ける夏海。因みに夏海の言葉は、ただの希望でしかないことばかりだ。
そうすると、やっと横島さんはマントを取ってくれた。でもこの状態、かなり電気代が掛かるよね。
「本当ですかっ!? 全部買います。絶対買います、発売と同時に手に入れて見せます。どんな感じなんですか? 何それ凄いです、素敵なお話です」
喜ぶ横島さんは、最早故障中って感じだった。喜んでくれるのは嬉しいんだけど、そこまでだとちょっと怖いよね……。
いや、嬉しいんだよ? 嬉しいんだけど、ちょっと横島さんは度が過ぎてるっていうか。買ってくれるのは嬉しいんだけど、滅茶苦茶嬉しいんだけどさ。
「まだあまり決まっていません。だから、発売までは結構掛かるかもしれませんね。それで、意見を求めてみようと思うんです。お兄ちゃんってどんなイメージですか? 夏海は妖精とか天使だって思うんですけど……」
ああ、そういや言ってたね。恥ずかしいお話です。
「それは分かります。天使って言うよりは、妖精の方が似合うんじゃありませんか? 冬樹さんは、……はい。妖精ってイメージが強いと思いますよ」
あれ? 横島さんも納得なんだ……。俺ってそんなに妖精っぽいの? よく分からないのだけど。
「素敵な歌で森中を癒してくれそうです。可愛過ぎちゃったらどうしましょう」
え。何、俺って可愛いなの? 男なのに、基準は可愛いなの? そうだったんだ……。
てかやっぱり、俺って森に住んでるんだね。確かに妖精に森のイメージはあるけど、俺に森のイメージあるの? 俺に妖精のイメージはあるらしいけど。
「そうですよね! やっぱり分かってますよ。お兄ちゃんの歌で森の平和は保たれているんです」
そこまで俺の歌の影響力あるの? 相当癒してくれるんだろうな。
「はい、聴けば誰もが踊り出す感じです。戦争だって中断しちゃうくらいだと思いますよ? もう皆仲良しになれるんじゃありませんかね」
横島さんも夏海もあまりにハイテンションなので、最早俺が置いてけぼりだった。でもそんだけ期待されると、俺がやる気無くなってくるっていうか。
だって怖くない? 期待値高すぎるよね。絶対無理じゃね? みたいな気になってくる。




