Ⅰ
「お兄ちゃん、最高ですっ! そのカッコいい声で、もっともっと夏海に話し掛けて下さい」
五月蝿いな。カッコいいと言われて嫌な気はしないけど、妹にそこまで言われても素直に喜べないね。
「静かにしてくれる? まず座ってよ」
しかし俺はめげずに、騒ぐ夏海への注意を続けた。
「もっと喋って下さい。お兄ちゃん、大好きですよ」
どうしたんだろう。普段だって、ここまでの騒ぎっぷりじゃないと思うんだがな。
「はぁあ、そろそろ疲れました。座りますね」
騒ぎ続けていた夏海だが、突然大人しくなって座ってしまった。
少し様子が可笑しいが、どうしたんだろう。ちょっと心配になるレベルだな。
「ねえお兄ちゃん、相談してもいいですか?」
丁度次回予告まで聞き終えたところで、夏海は小さく俺にそう言ってきた。
相談? でもまあ妹の相談、兄だったら聞いてあげるべきだよな。
「どうかしたのか? 俯くなんてらしくない」
少しの間、夏海は何も言わなかった。
しかしそのまま静かに待っていると、覚悟が出来たとかなのか夏海は口を開いた。
「夏海の勘違いかもしれないんですが、夏海の思い違いかもしれないんですが。…………最近、誰かに着けられてるような気がするんです。周り見ても誰もいないのに、後ろから気配みたいなのを感じて」
それって、ストーカーってことか? そんなことで夏海を怖がらせる奴がいるなら、俺が許す訳に行かないな。
「いやっ、本当に誰もいないのかもしれませんよ? 夏海が怖がり過ぎて、変なものを感じちゃってるだけかも知れませんよ? でも、なんか怖いんです」
夏海の瞳は本当に怯えているようだったから、このままにしておく訳にはいかないと思う。
「じゃあまず、出来る限り一人では歩かないようにすること。それと、他の誰かには相談したのか? 警察じゃないにしても、唯織さんとかアリスちゃんとか」
確信がないんだったら、警察よりも身近な大人の方が頼りになる。まあ、二人が大人かどうかはともかくさ。
「いえ、お兄ちゃんにしか言ってません。余計な心配は、掛けたくないんです。でも大好きなお兄ちゃんだから、お兄ちゃんには心配して欲しいな~なんて」
俺を頼ってくれた、夏海のその気持ちは勿論とても嬉しい。
「一人でずっと怖がっていたのか? その気配は、いつから感じるようになったのさ」
俺のことを信頼してくれてはいるけど、夏海は自分で頑張っちゃうタイプだからさ。
もっと他人を頼って、迷惑を掛けたりしたっていいのに。




