ⅡーⅦ
「本当ですかっ!? いえしかし、信者としてそのようなことをする訳にはいきません。神様は、皆に平等であるべきなのです。皆に幸せをくれるのが、夏海教ではないですか」
あっ、どうしよう。横島さん、この人は最早本物の宗教みたいな状態だ。
「でも……、家にはお邪魔させて戴きたいと思います。しかしこの家に入るときには、入場料を払ってもいいくらいですよ」
入場料って。本気で言ってそうな表情だけれど、誰が同級生の家に入場料を払って入るんだよ。
「いえ、夏海も本当に嬉しいです。……お兄ちゃんもそうですよね? 黙り込んじゃってますけど」
俺の存在に気付いてしまったらしく、夏海は遂に話し掛けてきやがった。
テンションについて行けなくて、少し距離を取ってお茶を飲みながら眺めていたというのに……。
「……あ、うん。凄い嬉しいよ。学校で声掛けて来て、俺の大ファンとも言ってくれたんだ」
でもどうなんだろうね。俺の大ファンと言うよりは、かなりの夏海教信者に見えるんだけど。夏海の序でに俺のファン、みたいな感じっぽくない? なんかさ。
「おぉ! やっぱり? お兄ちゃんのカッコ良さが分かるんですね! さすがは人を超えし存在、夏海教の信者さんです!!」
え? 夏海教の信者って、人を超えるんだ……。それがビックリなんだけど。
「夏海さんにも認めて戴けて、あたし……あたし……感激です」
横島さんと夏海は、二人で抱き合ってなぜかくるくると回っていた。
「二人とも楽しそうなんだけどさ、……ちょっと落ち着かない? 危ないからさ」
出来る限り止めたくなかったのだが、あまり広くないので暴れるのはよくないよ。どこかにぶつけてけがでもしたら大変だし、机の上にあるものが落ちちゃうし……。
「あっ、ごめんなさい。…………お兄ちゃんお兄ちゃん、素直な夏海を褒めて下さい」
すぐにやめて謝ったから偉い。そう思ったところで、夏海は自分で素直とか言っちゃうから。
「暴れちゃってすいません、非常識ですよね。死んで償います」
わぁあ、こっちはこっちでめんどくさいな。横島さんは『死』なんて言葉を簡単に使って、切腹ポーズをして遊んでいる。
「死んじゃダメですよ。夏海教では、そんな言葉禁止です」
それを本気の表情で止めて、夏海は横島さんの右手を両手で握り微笑む。
「……夏海、偉いね」
だから俺はどうしていいものか分からず、呟くような小さな声で夏海ことを褒めてあげたのであった。
夏海には聞こえないような、小さな声で……。




