ⅡーⅢ
「はいはい、黙りなさい」
あまりにも邦朗がアホだったので、先生が黙らせてくれる。
「冬樹! 今度こそ邪魔も入らず、お前を成敗することが出来るな。覚悟しろっ」
放課後帰ろうとしていると、ウザったるいことに邦朗はそんなことを言って来るのであった。
そして俺が邦朗を払っているところを、少し遠くから横島さん? が眺めているのが見えた。さっさと帰ろう。
「ちょっと待って、一回落ち着こうか。まず、お前部活行ったら? 急がなくていいのかよ」
俺とは違って、別にこいつは帰宅部なんかじゃない。リア充目指してサッカー部、になりたかったようだが将棋部に入っている。
「あ? 大丈夫。だってさ、うちの部活三年いないんだぜ? 後輩に文句なんて言われないから、俺達二年生の天下って感じだもん」
この野郎、腹立つ奴だな。先輩がいないからって、部活に遅れて良い事にはならないだろうよ。
「うぅ、冬樹さぁん」
遠くから眺めていると思っていた少女は、いつの間にか俺の背後にいて何だか小さな声で呟いているのであった。ビックリしたぁ、怖いわ……! ちょっと待って、メッチャ怖っ。
「横島さん、こんな奴のどこがそんなにいいんですか? あなたの名前も知らないような奴ですよ」
そしてそこにいることに邦朗も気付いてしまったらしく、果てしなく余計なことを言うのであった。
邦朗がモテない理由、これじゃなかろうか。この俺でも分かる。どうしてわざわざ、傷付かせてしまうようなことを言うのだろうか。
「ゆっきーをバカにしないで下さいっ! ……あぁ、大きな声出しちゃってごめんなさい」
え? そっちか。名前も覚えて貰っていない、それは相手が誰であろうと何気傷付くポイントだと思ったんだけど……。本当に俺のファンでいてくれる人なんだ、俺のことをこんな奴と言ったことに叫んでくれた。
「ゆ、ゆっきーって。ふ、冬樹……貴様ぁ……。俺と貴様の間には、それほどまでの差が……? お前は俺のことを待ってはくれず、どんどんリア充ルートを進んでいくんだな」
冬樹さんならともかくゆっきーと実に馴れ馴れしく呼んでいたことが、こいつにとっては余程ショックだったのだろう。
「あ、そう言えば名乗ってもいませんね。あたし、横島奏って言います。あたしの名前、冬樹さんに憶えて戴ければ幸いです」
彼女にとっては、こんな俺が憧れの存在。本当に、本当にそう思ってくれてるんだったら。それだったら、確かに名前を覚えて貰うと言うのは嬉しい事なのだろう。その気持ちは俺も分かる、ファンは大事にしないとなんないよね。




