Ⅰ
それから少し時が経って、一学期ももう終わりに近づいてきた。俺達兄妹は声優として働きながらも、学生として生活を送っている。
まあ俺は夏海とは違って、そんな働いてるって程のことじゃないかもしれないけど。少なくともきっと、クラスメイトにもばれていない程度だと思うからさ。
「ねえ冬樹君、ラジオにゲスト出演してみない? 初ゲストだよ」
夏海の仕事に付き合ってスタジオに行っていた時、おっさんにそう声を掛けられた。確かに、ゲストというのは一回も聞いたことなかったような気がする。
この話を断る理由などなく、当然のように俺は大きく頷いた。
「撮影は週末、大丈夫かな? 別に予定とかないよね」
俺に予定なんて滅多にないし、予定なんてあっても相当なことじゃなけれこっちを優先する。
だって、ラジオだよ? 台詞を多少読むくらいしかやっていない俺が、ラジオに出演させて貰えるってんだよ? それにあの楽しそうな……、凄い楽しみだな。
そして迎える週末……。
「こんばんは、園田夏海です」
「こんばんは、双葉唯織です。今夜はワタシたちが、イケメンショコラティエの紹介をさせて貰います」
撮影が始まり曲が終わると、拍手を軽くしながら唯織さんが言ってくれる。
「宇宙一のイケメンショコラティエ、園田冬樹さんで~す。物凄くイケメンなんですけど、実は夏海の実のお兄ちゃんだったりしますよ。いいでしょ? 羨ましいでしょう」
放送されると言うのに、夏海はなんてことを言い出しているのだろうか。
「冬樹さんですね、今日は取材に応じて下さりありがとうございます」
「宜しくお願いします、ありがとうございます」
編集はされるが、そのまま放送されるのだろう。
噛んでも撮り直さないので、台詞を収録するときよりも、更に緊張しながら俺は挨拶をする。
台詞の収録だって、俺のミスによって他の人にも迷惑を掛けてしまうから、酷く緊張はするけどね。
「お兄ちゃん、リラックスして下さい。いつもラジオ聞いているでしょう? そんな感じの、ゆるゆるっとしたのりで大丈夫ですよ」
俺が緊張していることに気付いたのか、小さい声で夏海はそう言って来てくれる。夏海は優しい子だよね、とてもとても……。
「お兄ちゃんは『クラスが山田さんのハーレム状態だけど、どうしても山田さんを好きになれない俺の話』の、山田智樹役を演じていらっしゃるお方ですよ? それには夏海も出ていますので、見ていない人は絶対見て下さいね」
主役級のキャラをやったのなんてホントにそれくらいだし、『クラス~の話』が俺の代表作品となるのだろう。でもとても題名が長いので、俺自身ちゃんと言えるかどうか怪しいところだ。




