ⅥーⅡ
「どうでしたか? 凄かったでしょう」
ニコニコニヤニヤの笑顔のまま、夏海は俺に妙にくっ付いてそう言って来る。
「まあ……、凄かったけど……。取り敢えず、ちょっと離れよっか」
俺もニコニコとした笑顔を返し、取り敢えず夏海を引き離す。
「お兄ちゃんの意地悪ぅ、まあ仕方がありませんね。夏海が恋しくなったときには、いつでも言って下さいよ」
でもこれで素直に離れて行ってくれるから、だからこそ素直な夏海だからこそいいんだよな。
「てかさっき流れた恋チョコ? さ、生で聞かせて貰ったのとちょっと違うよね」
恐らくラジオのOPとして流されたのは、歌って貰ったときの程バリバリ可愛い系な歌じゃなかった。
いやまあ、歌は同じなんだけどさ……。歌い方が違うって言うか、声が違うって言うか。
「まあ、CDとは違う特別版で歌ってあげましたからね。だって、折角お兄ちゃんに生で聞かせるんですよ? CDやライブと同じ歌い方じゃ嫌じゃないですか」
その気持ちはよく分からないのだが、特別版を歌ってくれていたらしい。
「だけどCDなんて、聞かせていましたよね? 夏海、ずっと流してたと思うんですけど……」
確かに夏海はずっとCDを流していてくれたけど、夏海が流してくれるCDはショコラティエじゃなくて夏海のCDであることが多かった。
「そうだっけ? そうかな……」
「あっ、夏海を聞いて欲しいと思って夏海を流していましたもんね。確かにショコラティエも流しましたが、新曲とか夏海のお気に入り曲だけですし」
俺の思っていたことが、夏海にも伝わってくれたらしい。
「てか、イケメン? なぜに男」
だから俺はそれよりも、ずっと気になっていたことを遂に夏海に問い掛けた。
「お兄ちゃん、ショコラティエって知ってますか? ショコラティエはそもそも男性ですよ。気になるショコラティエールのコーナーあったでしょう? 女性の場合はショコラティエールです」
へえ、そうなのか。だとしたらどうして女の子二人で、ショコラティエというユニット名に? それが可笑しいじゃん。
「夏海といおが男キャラ声を出来る限り出して、待ち時間にBLして遊んでたんですよ。そしたらそれを聞いて何を思ったか、夏海といおでショコラティエだとか言い出されちゃいましたよ」
BLして遊んでたって、どうゆうこと? 初めて聞くよ、そんな言葉。
「そうなんだ。でも歌とか全部、男っぽい声で歌ってる? そんなことないよね」
普通の可愛らしい声で歌ってる歌とかも、別にあったよね……? 少なくとも、俺がCDで聞かせて貰った歌にあったと思う。
「それは多分、ショコラティエールで歌ってるやつです。見てくれれば分かると思いますよ? ほら」
そう言って夏海は、俺にショコラティエのCDを見せてきた。
それの表紙には、ショコラティエールとも書かれていた。他のCDと比べて貰ったのだが、それにはショコラティエとしか書かれていない。




