ⅤーⅡ
「今日はもういいよ、帰ろっか」
夏海は不満そうな顔をしていたのだが、一応了承してくれたらしい。
「今日”は”です、それだったら夏海もいいですよ? はい、お会計済まして帰りましょう」
ニコニコと物凄い上機嫌で、夏海は商品を抱いてレジへと向かう。そして俺と夏海で、何と無くお金を出し合った。比率は分からないけど、会った小銭を出してみたみたいな感じ。
「やったー、それじゃあお兄ちゃん早く帰りましょう」
袋を強く抱き締めて、夏海はルンルン走り出す。俺の手を掴み笑顔で、店から出て行くと駅へ向かう。
そして夏海はずっと上機嫌で、家まで小走りで行き続けた。
「早く鍵開けて下さいよ、お兄ちゃんお兄ちゃん」
俺も夏海を追って小走りだったので少し疲れ気味だが、鍵を開けて家に入るとストレートで二階へ行く。
「夏海の部屋においでなさい」
可笑しな口調だったのだが、俺は言われた通り夏海の部屋に行く。
夏海の口調が変になることくらい、別に珍しい話でもないしな。多分そう言う役を今までやったことがあるのだろう、そう考えれば良い。
「まず曲を聴く前に、これ開けましょう。夏海もどんな台詞が入ってるか覚えてませんし、だってこれ結構古い奴ですよ」
古い奴って、夏海は何年前からやっているのだろう。だってまだ14歳だろ? そんなに何年もやっては、いない筈だろう……。
夏海は袋から取り出して小袋を開け、真ん中のボタンらしきものを押す。すると滅茶苦茶幼い可愛らしい少女の声が聴こえてきた。これはアニヲタじゃない俺としても、うおぉと叫びたくなってしまう。そんなレベルに可愛かった。
でも小鳥ちゃんとかよりはまだ、夏海感の残っている声だった。シスコンじゃないよ? ロリコンじゃないよ? でも可愛い、この可愛さは否定できない。
「あっ、思い出しました。どうですか? 可愛いと思ってくれましたかね」
夏海は俺に、キラキラ輝く瞳を向けて来た。あぁ、どうして妹がこんなにも輝いて見えるのだろう。
「うん、可愛かったと思うよ」
変態を押さえて俺は、普通にそう答えることが出来た。俺は変態じゃない、俺はシスコンじゃない、俺はロリコンじゃない。
「本当ですか! ありがとうございます、凄く嬉しいです」
本当に嬉しそうに笑って、夏海は俺の右手を両手で握った。
「そう言うのって、何種類か台詞入ってるんだろ? 全部流してみて」
「はい☆」
とても嬉しそうに、泣き出してしまいそうなくらい物凄く嬉しそうに笑うと、夏海はもう一度ボタンを押した。




