表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

なろラジ7参加作品

いくら木枯らしが啼いたとしても。私はもう、戻らない。

 廃墟を駆け抜ける木枯らしが、まるで竜の咆哮のように響く。

 

「かつて栄えた竜族の都がこんなに無残に……。風の音が()き声に聞こえる……」

 女が呟いた。


「でも、都を滅ぼしたのは竜皇。その原因を作ったのも彼だから」


 応じる声がきっぱりと言う。

「気に病む必要はないよ。ミア」


 ミアと呼ばれた女が、(かたわ)らに立つ男を見た。

 遠い過去を想い巡らせながら──。



 ◇



「ミアはどこだ!」


 竜皇の怒声に、駆けつけた側近が平伏した。


「恐れながら。ミア妃は三か月も前に後宮を辞しておられます」

「何?」


 鋭い眼光が、側近を(つらぬ)く。


「ミアは我が(つがい)ぞ。なぜ引き留めなかった」

「へ、陛下にご報告いたしましたところ、"捨て置け"と言う事でしたので」

「ちっ」


 言われてみれば覚えがある。

 三か月前は他の妃に強請(ねだ)られ、百夜連続の宴を催していた。


 地味なミアの戯言(たわごと)になど付き合ってられん、と放置を命じた気がする。


「ですがミア妃は(ニセ)(つがい)ではございませんでしたか? "彼女は違う"と陛下は何度も否定されておいででしたが……」


アレ(・・)こそが! 我が(つがい)であった! 我が身の変化が、それを告げている」


 竜皇が着衣を(まく)ると、腕にはびっしりと(ウロコ)が光っていた。


(つがい)が離れれば、竜返りが抑えられなくなる。ここ最近気が乱れると思ったら、ミアの職務放棄とは生意気な!」


 竜皇は吐き捨てる。


 ミアは貴族家の生まれであったが、目立たぬ娘だった。

 規定により(つがい)候補として幼いうちから後宮入りし、妃の一人(ひとり)として暮らしていた。


 そんなミアも成年となり。

 "私が竜皇の(つがい)です"と名乗り出たが、竜皇は「自分の気を引きたいための嘘」と断じた。


 彼女を認めれば他の妃を廃し、(つがい)との子作りを強いられるのが慣例。

 どんな花も手折り放題なのに、冴えない草を唯一妃として残す理由はない。


 だがミアの(そば)は確かに落ち着くので、たまに顔を見せてやれば良いと、彼はそう思っていた。


「すぐに呼び戻せ。我が身が竜に変じれば、理性を失い都が滅ぶぞ」


 竜皇の命令で側近が走った。


「なに。(つがい)とは輪廻を超えた結びつき。仮に転生したとても、我が手に戻る存在よ」


 しかしミアは行方を(くら)ませ、竜皇は魂の(つがい)を探し出すことが出来なかった。



 ◇



(つがい)の絆を断ち切る為に竜族ではなくなると聞いたから、私は人間になるのだと思っていたわ」

「ははっ。人間(ひと)では、輪廻の輪から抜けられないから、神にしたんだよ」


 孤独に泣き、日々、(ほこら)に祈りを捧げたミアが神界に引き上げられたことは、誰も知らなかった。




 お読みいただき有り難うございました!


 以前X(旧Twitter)で、"アンチ番"のお題をいただき、構想のまま置いていたのですが、なろラジで使えるのでは?と書き起こしてみました!(*´∀`*ゞ)


 ミアはここに至るまで、竜皇だけでなく、他の妃から冷笑され、宦官たちから冷遇され、実家からも「早く皇子を孕め、役立たずめが!」と罵倒されて、それはもう切なく過ごしていた設定です。

 竜皇の心が自分に向いてくれますようにと祈っていましたが、ある日とうとう(つがい)の心を得るのを諦め、「ここから逃げ去りたい」と祈りました。


 祠に祀られている始祖竜はそれを叶え、ミアを自分がいる神界に渡らせたことで、竜皇は(つがい)を失う結果となります。

(始祖竜は始祖竜で、傲慢な子孫を嘆いていた&ミアを気に入っていた。本当はここで恋愛書きたかったけど、文字数足りずファンタジージャンルです)


 1000文字少ないよね? 泣く( ;∀;)

 というわけで、なろラジ4作めはキーワード「木枯らし」でした。


 お話をお気に召していただけましたら、下の☆を★に変えて応援いただけるとすっごく嬉しいです!!ヾ(*´∀`*)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人それを「自業自得」という。
木枯らし、子枯らし、未来なし。
都が滅んだ後ちゃんと竜皇も自滅か討伐かされたのかな? 番に気付けなかった時点で竜としての本能が薄そうだから、竜になってもなんか弱そう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ