表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前とは婚約破棄する」って本当ですか!?ありがとうございます!今すぐここにサインして下さい!さぁ!  作者: 水垣するめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

1話

 入学式のパーティーが行われている。

 公爵令嬢の私、シャーロット・ブロンデは婚約者のマーク・プリスコット王子の後ろについて回っていた。

 私が望んでいる訳ではない、これが役目なのだ。


 パーティーとあって上機嫌なマーク王子は、次々と手に持っている皿に料理を盛っていく。

 私はそれを窘めた。


「王子、あまり食べすぎては……」

「あー、うるさいな! 別にいいだろうがこれくらい!」


 マークは私の注意を聞かずにお皿に料理を盛っていく。

 私は心の中でため息をついた。

 もちろん面には出していないが。


 パーティーで食べすぎないようにするのはこの国では常識のマナーなのだ。

 加えて今はパーティーが始まったばかり、これからたくさんの相手と話すのに口から料理の臭いをさせていては相手の気分が悪くなってしまう。


 案の定、次に話しに来た貴族の男子生徒はマーク王子が口から放つ料理の臭いに少し顔を歪ませていた。

 これは確実に心象が悪くなったことだろう。

 それからさらに貴族などが王子への挨拶にやってくる。

 皆同じく王子とだけあって、丁寧に挨拶をする。

 その謙った態度に、王子は気が大きくなったのだろう、声まで大きくなり始めた。


「ははは! そうだ! もっと俺に敬意を示せ!」


 ダメだ。気が大きくなりすぎて言ってはならないことまで言い始めた。

 私はすかさず注意する。


「王子、大きな声でそんなことを言うのはおやめください。品がないと思われてしまいます。それに、貴族を侮った発言をすれば──」


 王子に淡々と注意していると、王子は不機嫌な表情になっていく。

 そしてついにそれが爆発した。


「うるさい!」


 会場に響き渡る大声に、全員が何事だ、と振り向く。

 しかし王子は止まらない。


「さっきからネチネチ注意ばっかりしやがって! 王子だから王子だからって、俺のことは何かの道具だとでも思ってんのか!」

「それが王族というものです」

「っ! もういい! ──お前みたいなクソ女とは婚約破棄する!」


「え?」


 私は王子の思いもよらない言葉に呆然とした。

 王子は私を睨みつけ、踵を返す。


「二度と俺の前に現れるな!」

「ま、待って下さい!」


 私は王子を必死に引き止める。


「黙れ! 話しかけんな!」


 それでも私は王子を引き止める。

 さっきの発言を確認するために。


「婚約破棄してくれるって、本当ですか!?」


 私は歓喜した。

 今王子が「婚約破棄する」と言ったのだ。

 私が一番言ってほしい言葉だ。


「今婚約破棄してくれるって言ってくれましたよね? しましょうしましょう今すぐ!」

「は、はぁ?」


 詰め寄る私に王子は困惑気味のようだ。


「少し待って下さい! ……あった! マーク王子! これにサインしてください!」


 私は懐からいつかの日のために用意していた紙を取り出す。

 それはマーク王子との婚約を解消することが書かれている紙だった。

 そこには両者が同意したとしてサインする場所があり、そこにはすでに私の名前が書かれていた。


「なっ、何だこれ!」

「婚約解消の紙です! マーク王子、サインしてください! さぁ!」

「何でお前こんなの──」

「そんなのどうでもいいじゃありませんか! それよりも今婚約破棄してくれるって言ってくれましたよね!? なら早くここにサインしてください!」

「わ、分かった分かった! 今サインしてやるから!」


 私の押しに根負けしてマーク王子は私からペンを受け取りサラサラとそこにサインする。

 私はそれを王子から受け取ると天に掲げた。


(やった! やっと婚約破棄できた!)


 私が待ち望んでいた婚約破棄。

 それがこんな形で叶うとは思っていなかった。


 こうしてはいられない。

 早く実家に帰ってこれを父に報告しないと。

 私はさっきまでの笑顔を消し、うやうやしく王子へとスカートを摘んでお辞儀する。


「それではこの重要な書類を保管するために一度帰らせて頂きます。ごきげんよう」

「あ、ああ……」


 お辞儀を終えると私は気持ち早足で会場を出る。

 会場は既に静まり返り全員が私のことを見ていたが、私は気にすることなく歩く。

 そんなことが気にならないくらいに婚約破棄できたことが嬉しかったからだ。


 学園の入り口に既につけてあった私の家の馬車へと乗り込む。

 そしてすぐに実家へと着いた。

 本来なら学園では寮に入るが、学園から実家が近いとこうして実家から通える。これが王都住みの強みの一つだ。


 私は実家に着くとすぐに父の元へと向かった。


「お父様! ついにやりました!」

「ん? シャーロット、どうした?」

「私、ついにマーク王子と婚約破棄出来ました!」


 私がそう言うと父はとても喜んだ。


「おお! ついにか! やったなシャーロット!」

「はい!」

「これからは自由に生きていいからな。今までご苦労だったな」

「はい!」


 父が私を抱きしめる。

 私はとても幸せだった。

 今まで私を縛ってきた忌々しい枷からついに解放されたのた。


 これからは、自由に生きてみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ