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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第四十二話 復活

目を覚ますと辺りは明るくなり始め、日が昇ってきていた。

身体は蘇ったばかりであるためか、やや気だるく感じられた。


だが、そんなことは今の私は気にも留めなかった。

私の手を握りしめ、胸に抱える様に抱きしめるように寝ている二人の少女が目に入ったからだ。

二人はおそらく一晩中泣いていたのだろか、目は赤く腫れ涙を拭ったであろうか袖口は今なお湿っていた。


「こんなに泣かせてごめんね」


私はそうつぶやくと先ほどまでと同じようにゆっくりと瞼を閉じた。

せめて二人が起きるまでは、彼女達の手を握っていようと思ったのだ。

もちろん二人にはきちんと謝るつもりでいる。

けれど私のために涙を流し、疲れ切って寝てしまった二人を起こすのは忍びないとも思った。

だから私は、彼女達が起きるまではこのまま二人の温もりを感じていようと思った。


それからしばらく経ち、太陽が頭の上に来る頃になって二人はようやく目を覚ました。

寝ぼけまなこで未だに夢と現実の区別が曖昧であった二人に私は穏やかに朝の挨拶をした。


「おはようノア、ルナ」

「おはよう……アリシュ?」

「おはよ……あ、アリス!嘘!貴方昨日死んで——」

「うん。だからさっき蘇ったの。ほら、私は吸血鬼だから……えへへ——」


私は出来るだけいつも通りに二人に話した。

私の様子を見た二人は、体をプルプルと震わせていた。

きっと二人は怒っているのだろう。

昨晩死んだやつのために疲れ切って寝るまで涙を流したのにそいつが起きてみたら何食わぬ顔で挨拶をするのだから。

私は二人に怒鳴られる前に頭を下げ謝った。


「二人ともごめんなさい。二人に心配かけてごめんなさい。あとはあとは……もう色々ごめんなさい」


私は二人の怒声を恐れていたのだが、その様子がなくおずおずと下げた頭をあげ様子をみた。

そこには、顔を俯かせ震える二人がいた。


「……バカみたい」

「みたいじゃないわよ、アリスが吸血鬼だってことは知っていたことだし」

「涙返して欲しい」

「とんだ茶番ね」

「二人ともごめんなさい」


涙ぐんだ二人の声に私は言い知れぬ罪悪感が込み上げてくる。

私はもう一度二人に心を込め誠心誠意謝った。


「ごめんなさい」


二人は大きく空気を吸い込みゆっくり自分自身を落ち着かせる様に吐き出した。


「はぁー。蘇るなら一言欲しかった」

「そうね。そうすればもう少しマシだったわね」

「あの時は、そんな余裕がなくて……」

「言い訳するな」

「だって死ぬ直前だったんだもん。というかここは涙の再会の場面じゃないの」

「いいえ。ここからはお説教の場面よ。それじゃまずは正座して——」


その後、蘇ったあとの感動の再会は何故か私へのお説教となった。

昨晩のことに始まり一人で戦ったこと、果ては普段の生活まで話は発展していった。


「反省した?」

「……はい」

「それじゃあ私達と約束しなさい」

「えっ?」

「もうこれ以上独りで戦わないで」

「独りでやろうとしないで私達を頼りなさい」

「……わかった」


二人は私の応えに満足すると、未だに正座をさせられている私に抱き着いてきた。

先程まで抑えていた感情が溢れるように二人は涙を流した。


「もう会えないと思ってた」

「勝手に死ぬんじゃないわよ」

「うん。ごめんね」


私は二人を優しく抱きしめた。

二人の温もりはいつもよりも暖かく感じられたのは、きっと勘違いではないのであろう。

冷たいはずの涙ですら暖かく、心地よく感じてしまう。

これが仲間というものなのだろうか、友達というものなのだろうか。

私が命を捨て守ったものは、こんなにも愛おしいものであったのか。

未だに泣きつく二人に自然と笑みが零れる。

約束をした手前言えることではないのだが、私はきっと約束を破ってしまうだろうと思ったのだ。

私を想ってくれるこんなにも愛おしい仲間たちが再び命の危機に瀕したら、私は再び命を捨ててしまうだろう。


絶望王にも言われたが、私が傷つくことで二人も傷ついてしまうけれど仲間を失うくらいなら私は喜んで命を差し出そう。

身勝手でわがままなことではあるが仕方がない。

私は不老にして不死の『吸血鬼』悠久の時を生き、幾千の死を超える存在なのだ。

私の命一つ程度で仲間の命が守れるなら安いものだろう。


二人の細い髪を丁寧になでた。

落ち着きを取り戻した二人だが、一向に離れる気配がない。


「二人ともいつまで抱き着いてるのかな」

「もう少しだけ」

「別にいいじゃない……あと少しだけよ」

「はぁ~あと少しだけね」


私は二人が満足するまでこのままの姿勢でいることにした。

すると突然、視界に未来の映像が映し出された。

玻璃ノ未来(ラプラス)』によって映し出された未来には、隣で横たわる女性が目を覚ます未来であった。

いきなりのことで驚いていると頭の中から幼い少年の声が聞こえた。


『お嬢様、もうすぐ起きるよ』

『ラ、ラプラスなの?』

『うん。そうだけど早くしないと誤解されるよ』


いきなりの能力の発動で驚いていたのだが、それ以上に聞き捨てならない発言があった。


『誤解されるって、もしかして今の状況とかって悪魔みんなにも見ているのかな』

『……気にしないでいいと思うよ』


ラプラスの言葉を聞くと私は文字通り声にもならない悲鳴をあげた。


『そうですよ。お嬢様、我々など気にしなくてはよいのですよ』

『お嬢様、僕は見ないようにするから……ね』

『ええぇ私達は何も言いませんよ』


脳内で悪魔達が私にフォローを入れてくるのだが、それが余計私の羞恥を呷る。

私は顔を赤く染めながら、二人をやんわりと引きはがしていく。


「はい、終わり」

「えー」

「短いわよ」


二人は不満そうではあったが、私は急いで立ち上がると赤くなった顔を隠す様にそっぽを向いた。

それを二人は何を勘違いしたのか、私の様子を照れ隠しかと思ったのかニヤニヤしだした。

私は二人を放置し、例の炎髪の鬼人の女性のもとに向かった。


『全員聞きなさい。私にそういう趣味なんてないからね!勘違いしないでね!』

『わかった』

『わかっております』

『はい』

『了解いたしました』


向かう途中に悪魔達には釘を刺そうとしたのだが、心なしか優しい言葉を掛けられ余計に恥ずかしくなっていく。まるで私がそういう趣味を持っていてそれを必死に隠そうとしているみたいな。

これ以上悪魔達の相手をしていると私の精神が羞恥で崩壊しそうであったためにこれ以上は話すことをやめた。


鬼人の女性が寝ていた場所はあまり離れたところではなく、すぐに着いた。

私が着くとほぼ同時に彼女は目を覚ました。



ここまで読んでいただきありがとうございました。

個人的にはこれで一区切りといった感じです。

次回から少し投稿頻度を落とします。


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