第三十七話 未来日記side勇者
久しぶりの勇者サイドの話です。
時はアリス達が屋敷へ襲撃する前日にさかのぼる。
場所は、ソルアイオーン王国の王城内にある訓練場。
私『天野 聖』は、相変わらず魔物を狩りに王城の外に出ておりその場に居合わせなかったのだが、そこで事件は起きたらしい。
事件の当事者は『沢田 未来』という女子生徒であった。
別に彼女がなにかしたというわけではない、ただ彼女の『贈り物』が発動したのだ。
彼女の『贈り物』は『未来日記』という特殊型の『贈り物』である。
能力は、未来の出来事が自身の持つ日記帳に描かれるというものであるのだが、その書かれた内容が問題であった。
彼女の能力は、決まって魔物の異常発生や災害など多くの人間に被害でることや新しい遺跡の発見や水脈の発見など利益になることの両方を予知し、その全てが実現してきた実績がある。
そのため、彼女の能力の信頼は厚かった。
だが、それゆえに彼女の今回予知した内容は看過できるものではなかった。
彼女の日記には、このように書かれていた。
『国の端にある城塞都市ユーノは————によって、炎に包まれ、子爵に襲いかかった————はさらに—————によって城塞都市ユーノは滅びた』
自分の日記を見た沢田は、急いでバーナードの元に走っていったという。
これまで、沢田の日記はいつどこで何が何をしてどうなったかのかが詳細に書かれていたのだが、今回は必要最低限しか書かれておらず、さらに重要なところは塗りつぶされていて読むことができなかったらしい。
日記を見たバーナードはすぐに国王の元に行き、予知の内容を話した。
国王は話を聞くとすぐに行動に移した。
周りにいた文官に通信用の魔道具を持ってこさせユーノを治めるドレファス子爵に連絡を取った。
だが、それだけではことは終わらずこうして私達は訓練場に集合させられていた。
バーナードと彼の率いる聖騎士団と数名の魔法師達が、緊張した面持ちでいた。
全員がいることを確認するとバーナードは、全員に聞こえるように声を張った。
「勇者達よ、すでに事情は大方理解しているとは思うが、わが国の城塞都市ユーノが危機にさらされようとしている。今回も君達の力を貸してくれないか。」
「バーナードさん任せてください」
「俺らは勇者なんだからな、はははは」
クラスの面々は、勇者としての努めに誇りを感じているのか口々に参加を表明していく。
これは、今回に始まったことではない。
沢田の未来予知や国からの要請は、一応王国は約束を守り志願制としており、拒否するものは参加しないこともできる。
勇者であっても何も戦い向けの能力をもっている者たちばかりでもない。
そのため毎回不参加なものもいないわけではない。
例えば沢田未来も未来予知という能力故に戦闘には、ほとんど参加することはない。
他にも生産系の『贈り物』を持った勇者たちは、戦闘訓練から生産方面にすでに方向を変更しており、担任が科学の先生であったことも合わさり、地球の兵器の再現なんかもやっているらしい。
かく言う私も、魔物が相手の依頼なら極力引き受けているが、他種族が絡む依頼は全て不参加であった。
「今回は、未来の予知に一部不明な個所があり。いつ起こるかすらわからない。もしかしたら今日かもしれないそのため一刻も早く向かう必要があるが、街を炎に包むということは、おそらくドラゴンやそれに準ずる魔物の可能性が高いと思われる。都市の結界を突破する魔物だ。君達も一応気を付けてくれ」
「バーナードさん。たとえドラゴンだろうと俺達に勝てる奴なんていませんよ。安心してください」
結城は自身満々な表情でバーナードに言った。
正直私も彼の負ける姿は、想像がつかない。
それどころか、クラスの戦闘組が負ける姿すら想像がつかないほど、この三か月でみんなは私も含め変わった。
レベルはすでに50を超えこの世界でいう英雄の領域に踏み入った。
だが、レベル1の時点で規格外の強さを持っていた私達は、すでに英雄ですら超えいわば神話のレベルに到達していると言われた。
今回の魔物が相手らしいのだが、いつもの様に私はラグに相談することにした。
「ラグ、私はどうすればいいかな」
『今回は絶対に参加してください。そして、自分の身だけを守ってください』
「えっ、どうして?」
『『贈り物』『未来日記』に僅かですが天使と酷似した干渉の残滓がございます。おそらく『禁眼』による干渉かと思います。彼女に接触する良い機会かと思います』
「なるほど?……まぁわかったわ」
私はよく彼女の意図を理解することができなかった。
しかし、私はラグの提案を受け入れることにした。
彼女が私を裏切ることは絶対になかったからだ。
出発には、それなりの時間がかかる。
武器などの装備の支度を整えるのはそれなりに時間がかかるのだ。
それが、一人二人などの冒険者なら話は違うのだろうが王国の騎士団が動くとなれば話が違ってくる。
武器の手配から装備の配給など様々な書類の取り決めなどもしなくてはいけないのだ。
他にも準備に時間がかかる理由は移動手段だ。
王国から流石に国の端にある城塞都市ユーノまでは距離があり過ぎる。
だが、転移魔法を使えば、一瞬で目的地に行くことができる。
勇者の中にも転移魔法を使えるものはいるが、その性質上、超長距離の移動には目的地を一度訪れる必要がある。
そのため行きは、王国の魔法師に連れて行ってもらう必要があるのだが。
王国の魔法師と言えど、超長距離を移動するのには、きちんとした魔法陣を組み、それなりの魔力がひつようになるのだ。
そのため魔法の準備が整うまでは、待機であった。
私も自分の武器やら防具やらを整えるために国の武器庫に向かった。
私の戦闘スタイルは基本的にはソロで魔法を行使して戦うもので、極力『咎眼』は使わないようにしている。
『咎眼』を使わない理由としては、純粋に天使(彼女)達は強すぎるのだ。
天使の力は常軌を逸していため、私自身の強さとは言えない。
彼女達との約束を果たすためには私自身強くならないと意味がないと思い、私は出来るだけ天使達の能力を使わない様にレベルを上げてきた。
まぁ他にも使わない理由はあるのだが、今の私は魔法チート能力者としてクラスメイトには思われている。
したがって今の私の武器は、この枝の様な杖だ。
魔法の使用の補助をする効果があるらしいのだが、正直私にはいらないように思える。
しかし勇者も使う国の武器というのは、指揮を高めるのにはいいらしく自分の武器を持たない勇者達はこうして国の武器庫から自分の使う武器を借りる仕組みになっている。
私が杖を借りに武器庫を訪れると丁度クラスメイトの金森 響と出会った。
彼は大きな木箱を武器庫に運んでいる最中であった。
私は別に彼とは接点などはないために気づかれる前に立ち去ろうとしたのだが、あちらはこちらに気づいてしまったのでそれは出来なかった。
「あれ、天野さんじゃん。もしかして武器を借りにきたの?」
「そうだよ。金森君って確か生産系だよね。その木箱は……」
「これは.45AC弾って言っても分かんないか。まぁ拳銃の弾丸だよ」
「弾丸?これ全部が?というか、この世界にそんなあるの?」
「ははは、俺の『創造』がこんなの楽勝だよ。まぁ見てて」
金森はそう言うと目を瞑り両手を合わせて自分の力を使った。
合わせた両手をゆっくりと離していくとそこには、漫画やドラマに出てきそうな拳銃が現れた。
金森は手慣れた手つきでクルクルと回すと拳銃を私に差し出してきた。
「はい、護身用に天野さんにあげるよ。使い方はわかるよね、まぁわかんなかったら教えるけど」
「たぶん大丈夫。それより金森君ってなんでも作れるの?」
「なんでもは無理かな。生き物とは作れないし、戦車とか人工衛星とか質量の大きなものはまだ作れないんだよね。でも地球の物は結構再現できたよ。矢柳さんの『複製』とかもあって量産もできてるしね」
金森は得意げに私に生産系の勇者がしている色々なことを語った。
地球の武器の生産と量産や魔法薬、魔法武器の開発など色々教えてくれた。
私は顔に笑顔を貼り付けその話を聞いていた。
「あ、そう言えば俺も今回は参加するんだよ。なんか相手はドラゴンらしいし俺の新兵器を試したいんだよ」
「新兵器?」
「そう、まぁそこは後でのお楽しみさ」
「そ、そうなんだ」
「それじゃあ、俺は行くからバイバイ天野さん」
「うん。バイバイ」
金森が去った後、私はすぐにラグに相談した。
「ラグこれってヤバイと思うんだけど」
『はい。事態は深刻です。ご主人様の世界の兵器がこの世界に普及していけば多くの死者が出ます。それは私達の望むところではありません』
「早く手を打たないとダメだね」
私は手に持った拳銃を見つめながら呟いた。
そして出発するときは、訪れた。
だがもう日は暮れ、すっかり夜になってしまっていた。
訓練場に集まったのは、私を含め24人の勇者で、結城などを筆頭に集まっていた。
「やぁヒジリン。私はこれでドラゴンスレイヤーにジョブチェンジするんだよ」
「アユミ。まだドラゴンがでるって決まったわけじゃないのよ」
いつの間にか、私のそばには神崎や北条がいた。
普段から私の周りには、人が集まってしまうがこういった遠征時は、それが顕著であった。
私は普段と同じ様に、適当に流していた。
「今回参加に応じてくれた勇者達よ。感謝する。ではこれから城塞都市ユーノに向かう。では頼む」
バーナードはそういうと、魔法師達は転移魔法を発動させた。
さて、いよいよ【禁眼】と対面だ
クリスマスイブですね。悲しいくらい何も予定がないですね。
そんなことはどーでもいいのです。
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