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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第二十九話 夜襲

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私達がこの街に来て数日が経った。

最近は、夜に活動することが増え、すっかり昼夜が逆転してしまった。


未だに拠点は酒場の地下であるが、内装は着た時に比べ随分と変わっていた。

古びた椅子や机は真新しいものに作り変えられ、床には綺麗な絨毯が引かれている。

高級品らしいクッションもなぜか猫や狼の形のクッションに変わり、女の子らしい部屋になっていた。

それもこれも、昼間の外出を禁じられ少女たちの溜まったストレスがぶつけられた結果である。


部屋の中央に映し出されたこの街の地図は、中心部は未だに赤い点で埋め尽くされているが、城壁付近は全て青い点で埋め尽くされていた。

囲郭都市ユーノのスラム街は完全にアリス達の手に落ちたのだ。

また、魔物達の働きによって貴族の屋敷以外の全てが地図に描かれたことで、彼らも人間を殺し殺された人間が感染し別の人間を殺していった。

青い点が増える速度は日に日に早くなり、アリス達の計画は着々と進んで行った。


「今夜はまず、ここにいる衛兵達をやるよ」

「どうする?また、姿を消して不意討ち?」

「それが確実だと思うわ」

「そうね。それじゃ二人とも準備をして。掃除の時間よ」


私達は姿を消し、屋根伝いに街の中を移動する。

姿を消して移動しているが、念には念を入れ、私達はローブを身にまとい行動している。

夜中であるため出歩く人は、ほとんどいないが、いないわけではない。

私達は、移動している途中で見つけた人間を屋根の上から弓矢や魔法で射抜いていく。

ほとんどの者は、攻撃に気づかず、そのまま頭を射抜かれ死んでいく。

攻撃に反応しても僅かに矢に掠れば、矢に塗られた毒で死んでいく。

だが、姿の見えない相手からの夜間の遠距離攻撃である、今までにこの攻撃を退けられたことはない。


「楽勝」


弓を放ったノアが頭を射抜かれ地面に横たわる人間を見下ろしながら言った。

その後も目的地に向かいながら人間を殺していく。


今夜の目的は、この街の戦力の一つ衛兵の駐屯地である。

衛兵の駐屯地と言っても要は衛兵が常にいる場所であり、街の衛兵たちの拠点の一つである。

この街には、そういった拠点が三か所あるが、すでに二つとも昨晩までに潰しており、ここが最後の拠点である。

私達は、深夜この街にいる中でレベルの高いと思われる人間達を優生的に殺してきた。

レベルに低いものや年老いた人間は小型の魔物達でも容易に殺すことができるからだ。

だが、ある程度のレベルの人間には、小型の魔物達では対処が難しいと私達は考え、戦える人間達を隷属し戦えない人間を襲わせた方が、効率が良いという結論に至った。

私達は目的地まで着くと改めて自分の武器の確認を行った。


「それじゃ行ってくるね。二人とも援護よろしくね」

「はーい」

「任せて」


私は屋根から飛び降りると衛兵の駐屯地に正面から入っていった。

駐屯地の中には、十五人ほどの男たちがいた。

全員金属の鎧と剣を帯刀しており、『虎目ノ計測(アザゼル)』で視るとレベルも街の人間より高かった。

その中でも最も高い筋骨隆々の男のレベルは二十二であった。

私はまず一番レベルの高い男を殺そうと背後に周り、首を刀で切り落とそうとした。

その時、急に男が剣を抜き後ろに斬りかかってきた。


「隊長、急にどうしたんですか」

「いや、急に殺気らしいものを感じたんだが……気のせいか」

「いや、気のせいじゃないよ。私じゃなかったら死んでたかも。まぁ死ぬのは貴方だけどね」

「ぐはっ」


水晶の様に瞳を染めた私は、隊長と呼ばれていた男の首元から刀を引き抜いた。

首に刀で斬られた男は鮮血をまき散らしながら、床に倒れた。

私の持つ『玻璃ノ未来(ラプラス)』は、私自身が発動していなくても、私の危険に反応し、未来を見せる。

一瞬早く未来を視たことで、私は男の攻撃を避け、致命傷を与えることができたのだ。


「き、貴様ぁぁ——」

「まだ、生きてるのか。流石はレベル二十二でも、もう死んでよ」


私は再び刀を首に突き立て首を切断した。

ゴロリと転がった男の首でようやく事態の深刻さ理解したのか衛兵たちは剣を抜いて私に襲いかかってきた。

私は男の死体を蹴飛ばし、衛兵たちにぶつけ距離を取った。


「て、敵襲。てきしゅ……あれ……な……んで」

「敵は一人じゃない、まずは一人」

「こっちにもいるぞ!敵は二人だ。誰かこっちに——」

「いいえ。三人よ」


奥で戦っている私に気を取られている衛兵たちを、ノアとルナが殺していく。

衛兵たちは山賊達と違いきちんとした訓練を受けており、剣を振うのに迷いがない。

しかし、それゆえに動きが読みやすく、対処がしやすい。

三か月前ならまだしも、今のノアやルナでもある程度のレベルの高い人間相手でも対処はできる。

相手が動きの読みやすいものなら尚更二人にとっては、格好の獲物である。

戦闘は長くは続かなかった。

金属の鎧は強固ではあるが、重く動きを阻害する、そして彼らはよく訓練されていたことがあだとなった。

彼らの攻撃は未来を視る私に当然のこと、軽装の獣人二人にも掠りすらしなかった。


「無傷でこの成果は上々ね」

「アリス少し油断した。最初の奴は危なかった」

「私もびっくりしたよ。姿を消してるのに攻撃されるとは、予想外だったよ。」

「でもこれで、この街は時間の問題ね。あとは貴族に儀式魔法ぶっこめて終わりよ」

「そうね」

「うん。それじゃあ、もうひと狩り」

「そうね。さっきので私少し高ぶって眠れる気がしないわ」

「それじゃ日が昇るまで行こうか——」


アリス達は夜の寝静まった街の中、人間達を襲っていった。

酒に酔い千鳥足で家に向かう者は街の路上で斬り捨て、家の寝室で静かに眠っている者は、家の中に押し入り首を落としていった。


人間達を殺しているのは、アリス達だけではない。

隷属化された魔物や人間達も、闇に紛れ、人に紛れ、人間達を殺していく。

友人や親、子供の振りをして、人間達の隙を伺いながら喉を切り裂き、腸を抉る。

死んでいった人間達は、皆等しく感染し、死を恐れない不死身の兵士となる。

不死身の兵士達は、人に紛れ、人の目を避け、昼夜問わず数を増やし、街を侵食していった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

ブクマ、評価をしていただければ幸いです。

感想の方もできる限り返信をしていくつもりです。

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