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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第十二話 二人目

「アリスは少しサイコなの気にしないで」

「誰がサイコよ、少しその気分が昂っちゃただけだよ」

「ふ、ふーん別にあんたにビビってなんかいないんでからね」

「足震えてる。アリスあんまりルナをいじめないで可哀そう」

「こ、これはさっきまで氷漬けにされたせいで、別に怖いとかじゃないから……」

「なんで私が悪者みたいに扱われらきゃいけないのよ。私だって、私だって。ぐすっん」


私はルナの怯えた様子を見て、なぜか胸がぎゅっと締め付けられるような感覚と涙が込み上げてきた。

出会って早々に、鎖で縛って氷漬けにしたのは、悪いと思う。

でも私だって一応女の子だし、同年代の女の子から怯えた目で見られ、ましては震え上がらせるなんて。

ルナが人間だったならばどう思われようと、所詮は塵芥の戯言と言い捨てたであろう。

しかし彼女は人間ではなく、獣人であり、同じ少女であった。


「ア、アリスごめん。言い過ぎた」

「急に泣かないでよ。本当に寒くて震えていたのよ。あなたに怯えていたわけじゃないから」

「ほんと?私怖くない?」

「寧ろ今のあなたを見て安心したわよ。あなたも私と変わらない。同じ女の子なんだなぁと思ったわ」

「同じ女の子……そう、私だって二人と同じ普通の女の子なんだよ」

『『普通じゃない(かな)』』



私は一人、ルナの言葉を反芻し、それを二人は何とも言えない表情をしていた。


「ねぇノアだっけ?あの子いつもあんな感じなの?」

「わからない。私はアリスと昨日初めて逢ったの」

「昨日!それじゃほとんどあの子こと知らないってことじゃない」

「うん。私はアリスのことをほんの一部しか知らない」

「それじゃあなんで一緒にいるのよ。もしかして奴隷から解放する代わりについてこいとか、弱みでも……」

「違う。私がついていきたいって言ったの。私は私のためにアリスと行くことにしたの」

「あなたのためって、そもそもあなた達こそ、ここで何をやっているのよ」

「私はアリスから戦い方と力の使い方を教えてもらって強くなる」

「それじゃああの子は?」

「アリスは……世界征服?」

「違うわ!なんで私のことを放置して!勝手に私の目的を捏造しないでよ」

「世界征服じゃないの?」

「全然違うから!私の目的は全ての人間を淘汰して、奴らの存在をこの世界から消すことよ」

「そんなの不可能よ。絶対に殺される……今からで遅くないわ。そんなことやめて……」


ルナは私達を心配しているのか必死に説得しようとしてくる。

私はできるだけ優しくルナに笑顔を向ける。

心配いらない。すべて理解しているよと。


「あなた達、正気じゃないわ……」

「こんな狂った世界で正気に生きられるわけないじゃない」

「私達は私達の世界を取り戻すだけ……死にたくないけど……生きたまま死にたくないの」

「ルナ、あなたはどうなの?」

「ど、どうなのって言われても……」

「薄々気が付いているんでしょ。自分の家族が人間に奴隷になってしまっているって」

「そ、そんなこと……」

「ないって言えるの?なら、あなたはなんでこんなところにいるの?なぜ故郷で待っていなかったの?」

「それは……」

「ルナ、大丈夫。ルナのやりたいことを教えて」


私は虎の瞳の様に染まった目がルナを問い詰め、ノアが優しくルナに問いかける。

先程までの優柔不断な様子が徐々に研ぎ澄まされていく。


「私は、私は家族を取り戻したい……そのために私はここまで来たんだ」


キリっと鋭い眼をした少女がそこにはいた。


「あなたには覚悟はある?理不尽な暴力に抗う覚悟が、命をとしてあなたの世界を取り戻す覚悟がある?」

「あるわ」

「そう。ならルナ、私達と一緒に来る?理想の世界へ続く茨の道を、血に濡れた修羅の道を歩む覚悟がある?」

「愚問ね。あなた達がいなくても私は、あなたの言う茨の道を行くわ。でも、どうしても私が欲しいっていうなら仕方なくこの私、黒猫族一の月光魔法の使い手であるルナ様が一緒に行ってあげるわ」


急に態度の変わったルナに私は少しイラっときた。


「やっぱりいいや」


私はルナに今日何度目かわからないが、背を向けて立ち去ろうとした。

ノアも私の服を引っ張って引き留めようはせず、ルナを残念な奴だというような顔をしていた。


「う、うそ。私も連れて行ってお願い一人じゃ無理だから。何でもやるから連れて行って」

「わかった、わかったから。連れていくから、服引っ張るな!もう二人してどんだけ引っ張るの」

「連れて行ってくれるのね」

「よかったね、ルナ」

「……うん」


獣人二人は仲良く笑いあっているが、ルナは肝心なことを忘れている。

一度口に出した言葉は取り消せない。

ルナは理解しているのかな、言葉には全て責任が伴うということを……。



私は笑顔でルナの両肩をガシっと捕まえた。


「えっ急に何よ?」

「ルナ。あなた、さっき何でもするって言ったよね」

「そ、そんなこと……」

「言ったよね」


私は掴んでいる手に力を入れた。


「はい。言いました」

「そうだよね。それじゃさっそく言うこと聞いてね」

「わ、私に一体何をさせるつもりなの」


ルナは戦々恐々とした様子をしている。


「はぁー。そこまで警戒しないでよ。大丈夫よ。少し目をつむってもらえればいいだけだから」

「べ、別に警戒なんてしてないわよ。目をつむればいいのね。わかったわ」


ルナはそう言うと目をギュっとつむった。


「ふふ。それじゃぁいたただきます」


私は瞳を緋色に染め、鋭く伸びた八重歯をルナの首元に突き立てた。


「イッ、ちょっとなにこれ。やめ……」

「やめないよ。ふふ、なんでもするんでしょ。心配しないですぐに気持ちよくなるから」

「やぁん。はぁはぁや、やめれぇ。あぁん」


ルナの呼吸が徐々に荒くなっていき、時折甘い声を漏らす。


「あ、アリス。こんなところでエッチなことはよくない」


私に苦言を言いつつも、ノアはこちらの様子を横目でちらちらと窺っている。


「別にエッチなことじゃないよ。これは吸血鬼の食事よ。誰かさんたちがいっぱい食べたから私の分が少なくなっちゃったの」


私の言い分にノアは何か言いたそうにしたが結局何も言わずにそっぽを向いた。

無論、今やっている吸血行為は食事ではないし、食料だってたっぷりと収納されている。

しかし、ノアもおそらく聞いているだろうルナにもそんなことはわからない。

まぁ近いうちにばれるであろうが、それよりも私はルナの血を吸うこと優先する。

ノアの血とはまた違う味わいがあり、血の香りが吸血鬼としての私の本能を刺激する。

血を吸う度に流れる快楽にルナは甘い声を漏らし、尻尾はルナの感情を表しているのか激しく振っている。

吸血しながら私は千切れんばかり振っている尻尾を手でつかんだ。


「あぁぁぁぁぁん」


尻尾をつかんだ瞬間ルナは甘い悲鳴を上げながら身体にピンっと跳ねると地面にへたり込んでしまった。


「あ、あちゃぁ。やり過ぎちゃったかな」


私は緋色に染まった瞳を元の銀色に戻し、今なお呼吸の荒いルナ見た。


「さ、さい、最低。エッチ。変態。この変態吸血鬼!」

「アリスは変態吸血鬼」


ルナは眼を涙で滲ませ、烈火の如く私に罵声を飛ばしてくる。

ノアもルナ同様に私を『変態吸血鬼』と罵る。


「な、なんでさっきも言ったじゃん。ただの食事。栄養補給だって。それに気持ちよかったでしょ」

「気持ちのいいなんてそんな生易しいものじゃない」

「そ、そうよ。それに……し、しっぽつかんで……」

「え?なに聞こえないよ」

「尻尾よ尻尾!なんで急に掴んだのよ!お、同じ女の子同士だからって……」

「尻尾?あぁもしかして尻尾弱いの?」

「アリス獣人の尻尾はその……敏感なの。だからアリスは変態」

「……」


ノアの説明でやっと私は理解した。

様は獣人にとって尻尾は、敏感な部分でそこを私が握ったせいで、ルナが今なお地面にへたり込むほどになったという。


「吸血しているところに尻尾を握るとかアリス鬼畜」


ノアは私を蔑むような眼を向け、ルナに関してはもはや殺気さえ感じる。


「勘弁してよ……」


その後、私の必死の弁明の末、獣人コンビから許しをもらえたが、私の手持ちの食料の多くが消えた。

当然、変成魔法がある私には何も損がないのは黙っていた。




食事の後、これまでのことやこれからのことについて私達は話し合った。

当然、私は自分の過去についても語った。

他にも互いに得意なことや苦手なこと。使える魔法や知っている知識など様々なことを話し合った。


「ノアは結晶魔法が使えて得意な武器が弓で、ルナが月光魔法が使えて得意武器が短剣か……」

「アリスは何でもできるのよね……」

「前衛がルナで後衛が私。アリスが遊撃」

「それより私が前衛のがいいかな。月光魔法って精神干渉とか幻覚系統の魔法が多いし」

「そうね。基本的な役割はそれでいいと思うわ」

「わかった」

「それじゃあ、明日から戦い方と魔法の練習をしつつ狩りをしよう」

「わかったわ」

「うん。ねぇアリス。ご飯食べたい」

「私もお腹が減ったわ」

「そう」


私は収納魔法から自分の分だけ食べ物を取り出した。


「私達の分は……」

「えっ?私を変態鬼畜呼ばわりした子にあげると思う?今日はご飯抜きでーす。残念でしたー」




ノアとルナのその日の晩ご飯は抜きになった。

二人はご飯抜きと私が告げたとき、まるでこの世の終わりの様な顔をしていたが、私をコケにしたことの罪は重いのだ。

私はご飯を二人の目の前でおいしそうに食べ、そのまま眠りについた。



ご飯を抜かれた二人は森で食料を探すも全く見つからず、結局その日は晩ご飯抜きで過ごしたのであった。


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