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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第十一話 ルナ

森で偶然出会った、ルナと名乗る少女に私がご飯を分け与えた後、私達は彼女の事情を聴いた。

結論は結局はっきりとしなかったが、十中八九ノアの予想が当たっていると私は思った。



ルナは日ごろ友人達と森に入り、そこで魔物を狩っていたらしい。

狩りで得られた成果は、家族や同じ集落の者に配って食料の足しにしていたという。

ある時、人間に集落の位置がばれ襲われた。幸い犠牲は出なかったが、集落の場所を移さざるを得なかった。


新しい集落をつくり生活が安定してきたころ問題が起こった。

普段は近場の森で小型の魔物を狩っていたらしいのだが、ある日を境に魔物に数が減っていったという。


一瞬私のせいかと思い、ルナの住んでいた集落の場所を聞いてみた。

すると集落の方角は私の家やこれまでの道のりとは、全く異なっていた。


私とは、無関係な要因で魔物が減少していたことを知って、私が内心安心したのは秘密である。

魔物が減少してから、ルナ達の生活は少しずつ悪化していったという。

ルナはやせ細っていく家族を見かねて、魔物を狩りに森の深くに潜ったという。

三日間ほど狩りをし、結果多くの獲物を狩ることができたという。

多くの成果に家族や友人も喜ぶであろうと期待しながら集落へ戻った。



しかし、集落には誰一人として、いなかった。

家の壁はところどころ崩れ、地面には血の跡が残っていた。

明らかに争った跡であったが、不幸中の幸いというのか死体はなかったらしい。


最初、家族たちはどこかへ避難していると思い、残された匂いから家族たちの跡を辿っていたという。

しかしその匂いも途中で切れていて、後を追うことができなくなってしまった。

争った跡を見つけたせいか、心配でろくに準備もせずに森の中を必死に走り続けた。

そして今に至るという。




「みんなは生きてる……」


ルナは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


「生きてる。けど多分手遅れ……」

「手遅れってどういうことよ!」

「ルナの家族も友達も全員、生き物としては死んでる……」

「ど、どういうことよ!」


ノアの言葉にルナは、激昂する。

対してノアは、極めて無感情に事実のみを淡々と語る。


「もう生き物じゃなくなってる。生き物としての権利、尊厳、誇り全部を奪われてる……」

「そ、そんなこと……」

「ある」


ノアは、上着をいきなり脱ぎだした。


「ちょっと貴方いきなり何脱いでんの?」

「私の身体はね、今まで傷だらけだったの。首輪の跡もあったけど、アリスがキレイにしてくれたの……」


ノアは少し照れながら、ルナに綺麗になったという背を見せた。


「ノアは私と逢うまではね、屑どもの奴隷にされていたのよ」

「奴隷……」

「ルナの家族たちも奴隷にされてる。死人が出てないってことは、捕縛が目的。レベル30以上の人間達がいる。」

「そ、そんなレベル30以上……少なくとも中級の職業持ちってこと……」


二人が真剣に話す中、私は知らない単語が出てきたせいで会話に置いて行かれた。


「ノア。あの、レベルとか職業持ちってなに?」


私の質問にノアはぽかんとした表情をした。

ルナも同様に私が何を言っているのか、わからないといった様子をしている。


「アリス、本当に知らないの?知らないで戦っていたの?」

「は、はい」

「おバカ」

「ごめん」

「教える。ちゃんと聞いてね」



その後、私はなぜか地面の上に正座をさせられながら、ノアの話を聞く羽目になった。

ノアの説明は意外にも、大変わかりやいものであった。



私は、人間は脆弱な生きものであり、魔法も肉体も他種より劣っている存在だと思っていた。

だがその認識はどうも間違っていたらしい。


ノアの説明によると、人間は自分以外の他の生き物の命を奪うことで、自らを強化することができるという。

奪った命を奴らは、『経験値』と呼ぶ。

それを一定量集めることで『レベル』が上がり、魔力の量や体力などあらゆる面を強くするという。


残忍で狡猾な畜生どもらしい種族特性だと私は感じた。

ある程度の『レベル』を上げると、『職業』というものを手にするという。

『職業』というのは、『技能型』の『贈り物』の劣化版のようなもので、ある方面での力を比較的強くすることができるものらしい。

『職業』にもある程度強さの差が存在し、中でも中級と呼ばれる強さを持つのは、人間でも三割もいないという。

つまり、『レベル30以上の中級以上の職業持ち』というのは、人間の中でもかなり強い奴らであるという。



「説明ありがとう。参考までに聞きたいんだけど、あの雑魚はいくつくらいなの?」


『あの雑魚』というのは、私が昨日、一番に殺した奴のことだ。


「レベル13で下級の『戦士』っていう職業、単純に戦闘力を上げる職業」

「それじゃあ、ノアのいう奴らはアレより倍より少し強いってことかな」


私が聞くとノアは首をふるふると横に振った。


「そんな次元の話じゃない中級以上の職業持ちは化け物……」


ノアは何かを思い出したのか、顔色がどんどん悪くなっていった。

体は僅かに震えてすらいた。


「一人で私達獣人の集落を誰一人逃がさず、確実に制圧できるくらいの実力がある。私の時もそうだった」

「「……」」


ノアに体験したことは、どれほどのものであったのかわからない。

奴らの強さを身に染みて知っているからなのか、ノアの言葉は非常に重く感じた。


「私もアリスも人間から大切なものをたくさん奪われたの」

「えっ」


ルナは驚きと共に私に視線を向けた。

ノアは深く息を吸いこみ、ゆっくりと吐き出した。

気づけばノアの体の震えは止まり、顔色もよくなっていた。


「だけどもう奪わせない」

「そうだね」


ニコリと私はノアに微笑んだ。それは天使の微笑みのような可愛らしいものではない。

寧ろ悪魔のような禍々しいものであるような気さえするものであった。


「今度は私達の番だよ。全部全部全部全部奪う。慈悲なんてない。例外なんてありえない。奴らから私達は全てを奪うの」

「アリス、急に雰囲気変わってあの子引いてる……」

「……」


ルナは私になんとも言えないような顔を向けてくる。


「アリス……」

「私悪くないもん」


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