第70話 ジュンの能力
ジュンの言う〈配下にする儀〉は存在しない。
正式めいた儀式は無い。
言い方の問題であり、対象を縛るという意味としては合っている。
とりわけ今回は一度裏切られたのだから、キツく締める必要性はあるのだが、これは裏切り行為を断固阻止するものでは無い。
そもそも、裏切り行為を不可としないのが、ジュンの信条だ。
1度目は許し、2度目は教育し、3度目は罰を与えるとまで考えている。4度目はさすがに価値無しとして見限り、処分を行う予定ではあるが、守護者が反旗を翻すなど早々あるはずがない。
可能性ある者は1人いるが、能力発動の制限はかけており問題もない。また今回のように、対象が守護者で無い場合もその信条は適用される。
友好国の裏切りは1度目。
ヤンたちを許すのも、そのためだ。
今後同じことがあったとしても、すぐに処罰はされない。
過ちは赦されるのだ。
これは他と比べて、とても恵まれている措置だと言える。
(まぁ、甘すぎると言われても仕方ないけどね)
他人がどう思うかは別問題だが、ジュンは気にしない。
それに、ジルタフは軍門に下る。それも心から受け入れる。甘い信条で人材確保ができるなら、それに越したことはない。
(さてさて、そろそろ始めましょうか──炎で血が固まってるとは言っても重傷なのは変わりないものね。でも、はぁ……これって、難しいわ。寡黙設定だとかなり無理があるんですけどぉ!!どう説明すべきか迷うわ……)
配下にするには、守護者のように魂魄を入れる必要がある。
改造手術みたいなことを行い、身体を治療させる(半自動治癒を使用させる)。
魂魄の意味や価値、その使い方を教える。要するに、ジュンの能力を一から説明しなければならないということ。
脳内に直接植え付けることも可能ではあるが、どちらにしろ見せたくない力を使う必要はある。
つまり多少なりと説明は必要で、寡黙設定の男に、お喋りを解禁させないといけない。
設定を無視するのは、これまでの努力を無に帰すようなもので、中々踏み込めないが、今でさえも怪しいくらいなのだ。これ以上、話をしたらダメな気がするのは当然。
(あぁ~もう、ホントどうしよう!ええっと、取り敢えずは全員に伝えた方がいいから、念話を使って……それと今回だけ喋る感じにして、男共には聞かせないようにして……あとはっと……)
ジュンの能力を知る者はいない、守護者は誰も知らない。能力の一端と言うべき、魂に関するものという知識のみ。
ヤンたちに説明するなら、守護者にも伝える必要がある。
紅蓮の下につく者達だけを贔屓するような真似はできない。また別の問題や裏切りが起こってしまう可能性が出てくる。
(じゃあ、念話の前に、男共から対処しましょうか)
1つ咳払いしたあとに、ニシミヤライトとジルタフ国王の名を呼ぶ。
「お前たちは目を瞑れ、耳は……そのままでいい」
「わ……わかった、従うとも」
「何か、されるのですか?」
「ああ」
(早く了承しなさいよコラァ。王を見習いなさい!)
「そうですか。見せては……くれないのですか?」
「ああ」
「承知しました。瞑りましょう」
(ふぅやっとね、これで次の段階に進めるわ)
「ヤンにミズキ」
「なんだい?」
ミズキは返事しない。口を開けないほどに重傷なのだから当たり前。ジュンも、それは理解の上、咎めることはしない。
「俺の前へ」
「……」
「これから行うは荒療治だ」
ミズキを抱えるヤンの周りを黒色が覆う。そして───
「ガハッ……ッ!」
「目を開けるな」
これは王に対して言った言葉。娘の悲鳴くらい耐えろという意味だ。
ヤンは血を吐き、ミズキは無意識下ながら身体をビクつかせている。2人の身体を貫いたのは触手だ。
「はぁ……はぁ…」
「時期に慣れる」
触手を初めて見る紅蓮はというと、驚きもせず眺めている。寧ろ、ジュンの触手に感嘆しているまである。
(さて──っと……)
『あー、全員聞こえるか?』
念話を飛ばすジュン。各地域に散らばっている守護者全員に。加えて、ヤンとミズキも念話が通じるようになる。
『状況は説明しない。質問は数個に絞る。俺が、お喋りを嫌うのは知ってるはずだ。手短にいく。いつもより多少の胸襟を開くのも今回だけだ。では、俺の能力を説明する』
守護者の殆どが呆気にとられたのは言うまでもない。
急すぎすし、展開は追いつかない。しかし、誰も反対はしない。それこそが守護者。
『俺の能力は、“あらゆる魂を吸収し、エネルギーに変換する”というものだ。略称はあるが、今は控えておく。この変換というのが肝だ。お前たちを創造できたのはこれのおかげ。個性ある姿に、性格に、能力に、できたのはな。この理屈でいけば自身も強化したりできるのではと思うかもしれんが、それはできない』
『ジュン様は既に完成されているということですね!』
『!?……はは、ど…どうだろうか…。ま、まぁそんなわけで、世理の所に度々訪問していたわけだ』
『なるほど、合点がいきました』
(私が女体化できないのって………いや、そんなこと無い。可能性はまだ全然あるわ!)
『……うむ。話を戻すが、あらゆる魂とは人間の魂には限定されない。この世の死んだ魂は全て俺に吸収される。自動的に、近くにいなくてもだ。勿論、この地に来た時から換算されるから過去の魂は受付られないがな。つまり今も尚、刻一刻とエネルギーは増え続けている』
『凄いです!』
『ジュンさま最強!』
『流石はオレの主だ』
『世辞はまぁ良い。続けるが、魂は吸収前後で綻びている物が多い。器となる依代が無いのだから当然だ。更に、物理的とは言えないが、吸収時には媒介である捕食者が喰っているのもある。変換の過程で、その複数の魂を凝縮結合するなどして綺麗にした物を使うことで、新たな生命を創り出せるということだ。加えて言うが、これは魂魄とは別物だ。魂魄は1つの魂になり得なかった魂の欠片、結晶レベルの物だ。それは単なるエネルギーとして使ってもらっている、ということだ』
『なるほど、そういうことでしたか』
『それでは、今私の目の前に映る光景がその媒介とやらですか?』
『その通りだ紅蓮。だが後ほど、見た記憶は消すとしよう』
『何故でしょうか?こんなにもかっこょ──』
『言わせるな紅蓮、無駄な争いは避けるべきだ』
(今、格好いいて言おうとした?あの紅蓮が!?)
『うっ……、はい申し訳ありません』
『分かれば良い』
(格好良くは無いわよねぇ。気持ち悪いが勝るわよねぇ?だってムシャムシャと何でも食べるのよコイツ。好き嫌いだって無いんじゃないかしら?)
『また話が逸れてしまったが、要するに俺の能力は人を創るのに長けているということだ。本人のエネルギーも永久機関のようなものだがな。さて、何故この話をする必要があったか──だが……ヤン、それにミズキ、今からお前たちを創り変える』
『!?』
『なに、心配することはない。記憶そのまま、身体も変えない、能力もだ。魂魄を埋め込む改造手術を行うだけだ』
『それは受け入れるしかないのかい……いや、ですか?』
『そうだ。お前たちの身体を完全に元通りにするためにな。俺の“自動治癒”で他人は治せない。それは他の守護者も一緒。俺は他人しか強くできないからな』
『つまり今後は、あたしらもその、おーときゅあってのが使えるってこと……ですか?』
『ああ』
『人外だ……すね』
『受け入れろ』
『分かりましたよ。どの道、あたしらには突き進むしか道はないんだ。紅蓮……様の配下になるなら尚更今より強くなくっちゃね』
『良い心構えだ』
(さて、ちゃっちゃっと行くわよ。次いでに一部記憶消去もするから、紅蓮も甘噛みさせないとねぇ。守護者創造と言うより改造守護者だけど、まぁなんとかなるでしょ。じゃ──)
『守護者創造』
技を唱えたことで、黒の捕食者たちがヤンとミズキ、それに紅蓮を包み込む。改造手術はほんの一瞬の早業。
されど、停止した時の中で熟考を重ねたかのような精密さを誇る。何事もなかったかのように、2人は元通り。魂魄消費も今回はオマケ。
「さて、凱旋といこう」
守護者との念話をやめ、この地ですべきことは全て終わる。
これで本当に一件落着。周辺国家の征服は完了し、暫くは安寧が訪れる。デートスポットや女体化方法もじっくりと探せるというもの。
だがしかし、これで終わりではない。
大いなる敵は、確実にジュンたちを認識し、意識し始めている。つまりは、次なる戦いも近いということ。
ただ、ジュンを含め組織【S】の者達は誰も、その事に気づいていなかった。
作品を読んでいただきありがとうございます。
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これにて、第四章が終わりましたので、主要登場人物紹介の『?』部分を更新しています。全てではありません。




